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ハーレム目指して何が悪い  作者: かいむ
第3章 勇者と魔王
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第47話 どこかの村で

 明るい光に目覚めさせられる。目を開けると見たことがない部屋で、隣にはセフィアが寝ていた。


「えっ……」


 俺は一瞬自分の状態を理解できなかった。


 え~と……俺は何で見たこともない部屋でセフィアと同じベッドで寝ているんだ!? れ、れれれ冷静になれ、そんな馬鹿な事はありえない。


 何があったか思い出すんだ! 俺は必死に記憶の紐を手繰り寄せる。


 すると、ミルシアたちとはぐれて、森を夜通しさ迷っていた事を思い出した。


「あ~、そうかあのまま気を失ったのか――で、ここは何処? 何でセフィアが一緒に寝てるんだ?」


 思い出したのはいいけど、今の状況は謎だ。俺は周りの様子を見ようと体を起こした。


「……う~ん」


 俺が動いた事でセフィアが声を出して、目を開く。


「「…………」」


 無言で見つめ合う俺とセフィア。


 いや、違うんだ。これは俺じゃない、俺も何なのか分からないんだ。いや~、困った困った。ここは何処だろうな~。


「……起きた」


 俺が必死に心の中で言い訳していたら、胸に軽く衝撃を感じた。


「――!?」


 セフィアは俺の胸にタックルをかましてきた。


「……よかった」


 俺の胸に顔を押し付けながら、ポツリともらす。その体は微かに震えていた。


「ど、どうしたんだ?」


 セフィアは俺の質問に答えずに、泣いていた。


 一体何なんだ? 意味が分からない、全くもって今の状況が理解できない。


 仕方なく周りを見ると、何処かの家の部屋のような感じだった。小さな部屋に、俺が寝ていたベッドに家具が少しある。


 牢に入れられてない事から考えるに、どうやら神官たちに捕まった訳じゃないみたいだ。ひとまず安心する。


 するとセフィアは収まったのか、顔を上げる。


「で、一体どうしたんだ?」


 俺は改めて聞く。


「……それは――」


 ぐぅ~。


 セフィアが話そうとした時、俺の腹が鳴った。


「「………ぷ、アハハハハハハッ」」


 二人で顔を見合わせ、耐え切れずに笑い出す。


 自分でも驚く程に腹が減っていた。お腹と背中が引っ付くぐらいの空腹感だ。森をさ迷っていた時は何も食べる物がなかったからな。


「「アハハハハハハハハハハハハッ」」


 その時初めてセフィアの笑顔を見た気がした。思えば、セフィアは常にムスッとしていたからな。






「………………」


 呆れたようなセフィアの視線が突き刺さる。


 だが、俺は気にせずに目の前の料理を口に運び続ける。


「うめぇ! うますぎる!」


 異様に腹が減っていた俺は、料理を前にして本能の赴くままに食べ続けていた。ゆうに五、六人分はたべた所で、やっと腹が満たされてきた。


「こんなに、旨そうに食ってくれたら、食べさしたかいがあるってもんだ」


 すると、キッチンから声が聞こえてきた。そこにはツルツル頭の厳つい見た目のオッサンがいた。


 彼――ハッサさんが倒れていた俺たちを見つけて、保護してくれたそうだ。見た目と違いいい人みたいだ。


 セフィアはその後すぐに起きたらしい。で、俺は次の日の――つまり今日の朝まで寝続けていたという訳だ。俺は魔力の枯渇と疲労のダブルパンチで気を失ったみたいだ。身体強化を夜通し使っていたからな、流石に魔力量が多いと言っても、魔力が尽きたみたいだ。


 セフィアは魔力が枯渇して気を失っていた時も、朦朧としながらも意識は微かにあったらしい。だから、俺が無理をしていた事を知っていて、起きた時の態度に繋がる訳だ。


 そのおかげでセフィアが少し心を開いてくれる様になったから、無理したのも悪くなかったかな~と。


 まあ、なんだ。二人とも無事でよかった。後はミルシアたちと合流できれば言うこと無しだな。


「助けて頂いた上に、ご馳走にまでなってすみません」


「……貴方は食べ過ぎだと思いますけど……」


 こんな風に、セフィアは普通にしゃべってくれる様になった。食べ過ぎは仕方がない、なんせ丸二日何も食べてなかったんだから腹も減るわな。


「気にすんな、困った時はお互い様と言うだろ」


 ハッサさんは大袈裟に手を振りながら、笑っている。いい人だ……聖地では心が汚い人ばかり見ていたから心が洗われる気分だ。


「本当にありがとうございます」


 俺は頭を下げる。ハッサさんが助けてくれなかったら、多分魔物の餌食になっていただろうからな。


「いやいや、そんな事よりお前ら冒険者か?」


 ハッサさんは探るように聞いてきた。まずい、何か怪しまれてるか? もしかして、勇者と逃げ出した巫女だと気付かれたか。


「ええ、そうですよ」


 内心の焦りを出さない様に努めて冷静を装う。


「何であんな所に倒れてたんだ?」


「いや、仲間と旅をしていたんですけど、はぐれてしまって森をさ迷っている内に力尽きてあの場所に」


「ふ~ん、それは大変だな。ここは辺境の村だから冒険者も滅多に寄り付かないから、どうしたのかと」


「辺境の村って、詳しくこの村の場所を教えてもらえませんか?」


 あまり変な所じゃなければいいんだけど……。


「ああいいぞ。ここは――」




 ハッサさんから聞いた所によると、元々行こうとしていた町の北にある森の中にある村みたいだ。


「じゃあ、南に行けば町があるんですね?」


 何もなければそこにミルシアたちは集まって来るはずだった。でも追っ手が来たから野宿とか言ってたんだ。どうしよう?


「道はややこしいから送ってやろうか?」


「本当ですか? 良ければ頼みます」


 とりあえず町に向かう事にしよう。なるべく早くミルシアたちと合流したいからな。案内してくれるならありがたい。


「ああ、なら一つ頼みたい事がある。お前ら冒険者だろう」


 ハッサさんはそう言ってニヤリと笑う。


 はっ、嵌められた。結局合流するのは遅くなりそうだった。


 俺はハッサさんから頼み事を聞き、恩もあるし頼み事を受ける事にした。

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