第43話 今後
「うわっ!」
急に視界が白に埋め尽くされた事に驚く。一体何が起きたんだ?
追いつかれそうになったから覚悟を決め、聖剣を使おうと思ったが、まだ使ってないぞ。
少しすると白が歪み出し、景色がモザイク状に現れ始める。
「何だ? 何が起きたんだ?」
そこはさっきまでとは違い、何の変哲もない道だった。当然神官たちも見当たらない。馬車は何事も無かったかの様に走り続けていた。
「助かったのか?」
「助かったみたいです。彼女のおかげで」
彼女? 後ろを振り向くと、ミルシアに抱かれる様に俺が助けた少女が倒れていた。息が荒く頬が赤かった。気を失っているみたいだ。
「この娘が?」
「ええ、転移の魔法を使ったみたいです」
「この馬車全てを転移させるなんて、流石は勇者を召喚しただけあるわね。魔力は尽きたみたいだけれど」
転移? ああ、俺を異世界から召喚したくらいだから、場所を移動させるくらい出来るのだろう。
「大丈夫なのか?」
「はい、一時的に魔力が欠乏しているだけです。明日には回復しているでしょう」
助けるつもりが最後は助けられたのか? 何にせよ助かってよかった。
「で、ここは何処なんだ?」
「分からないです」
「そうね、地図はあるからここの場所さえ分かれば、何処に向かえばいいか分かるのだけど……」
この場所か、この少女に聞くか――。
「とりあえず、町を探してみよう。それでここが何処かは分かるから」
「そうですね。彼女には聞けそうにありませんから」
俺たちは町を探す事になり、周りに注意しながら馬車を走らせた。
しばらくすると、道に人が増えてきて町が近い事を知らせていた。
「姫様、町が近い様です」
ハッシュベルが馬を操りながら知らせてくる。
「言われなくても分かってるよ」
「お前には言ってない!」
俺が答えた事に怒っていた。一々うるさいやつだな。
「どうするの? もしかしたらもうアタシたちに追っ手が掛かってるかもしれないわよ」
「ん~、まあ、大丈夫じゃないか。なるようにしかならないだろ」
エルメナの心配そうな声に俺は気楽に答えた。
「そうですね。聖地みたいに神官が沢山いる事もないでしょうし、最悪逃げる事は出来るでしょう」
ミルシアも肯定してくれた。
「そうなの! この子も休ませなきゃならないの」
スンは、自分とそう変わらない小さな少女のそばで言う。
「だな、町に入ろう」
馬車はゆっくりと町に向かっていた。
そこはそれなりに規模が大きな町だった。と言っても、王都や聖地よりは全然小さかったが、人はある程度居て宿や店もあった。
運が良い事に――少女が狙ってかもしれないが、この町は魔王がいる場所への通り道の町だった。逆に言うと、聖地から追っ手を真っ先に送って来るだろう場所だったから、あんまり長居は出来ない。
町に入ると、とりあえず近くの宿を取った。今回は四人部屋があったから、もちろん男女で別れた。
俺とハッシュベルは部屋に荷物を置くと、女性陣の部屋に向かった。今後の予定なんかを話そうと思っていたのだ。
「ちわー!」
適当に挨拶をして部屋に入る。助け出した少女はまだ気を失っているみたいだ。
適当に空いてる場所に座る俺たち。
「で、これからどうするかだけど、俺は魔王を倒しに行くけど、みんなどうする?」
とりあえず聞いた。聖地では聞く暇無かった。神官たちは勝手に行くんだと思っていたかもしれないが、聞いてないから分からない。
「私はもちろん、ハヤト様に付いて行くのみです」
「あたしもなの!」
「アタシも行くわよ、もちろん。約束もあるし」
ミルシアたちは即答。いつもの事だから分かっていた事だけどな。一応聞いただけだ。
「別に、ハッシュベルは来なくてもいいんだぞ」
そう、ハッシュベルはエルメナの護衛と言っても、エルメナは既に半分国から逃げてる様な状態。ハッシュベルが魔王を倒す所まで付いて行く必要はない。
「……私は、姫様が行かれるなら無論付いて行きます」
「そうか、分かった。それでこれからだけど、ここは魔王の居る場所までの道筋の町だ」
ハッシュベルの感動の忠誠心は適当に流し、これからについて話し出す。
「だから、もしまだ神官たちが俺たちを探しているなら、真っ先に探すであろう場所なんだ」
「でも、この道じゃないと、魔王の所へは行くのに時間が掛かるわよ」
「聖地で追われた程の規模で追って来るとは考えられませんので、見付かっても逃げるのは容易いと思います」
エルメナ、ミルシアと続く。こういう真面目な話は、基本三人で話してる時が多いな、やっぱり。
「姫様を危険に晒したら許さんぞ!」
「だよな、あの多さならキツイけど少なかったら、楽に逃げれるよな」
「そうです」
「でも見つからない方がいいわよね」
横槍を見事にスルーして三人で話を進める。
「そうだな、当分はなるべく目立たない様にして、普通に向かうか?」
「そうですね」
「一々遠回りしたり、変に隠れたりしたくないものね」
とりあえずの方針は決まった。
「後はあの女の子なんだよな。あの子は、どれくらいで目覚めるのかな?」
「段々息は落ち着いてきたの」
ずっと少女に寄り添っていたスンが言う。
「――んっ……」
その時、少女が突然うめき声を出した。
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