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ハーレム目指して何が悪い  作者: かいむ
第3章 勇者と魔王
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第40話 救出

 前と同じ教会の広間に俺たちはいた。


「勇者ハヤトよ、魔王を倒してくれるか?」


 無数の神官たちの前で老人の神官が聞いてくる。


 何度も同じ様な質問をされた気がするが、一々聞かなければ気が済まないみたいだ。


「はい」


 若干うんざりしながら答える。


「では、魔王のいる場所までの行き方を教えよう」


「はい」


「魔王がいるのは――」


 何故こんな面倒な事をするかと言うと、神官たちは道案内を付けると言っていたんだが、俺が断った。


 弱い人を連れて行く訳には行かないとか、適当な事を言って。


 結果、魔王までの道を教えてもらう事になったという訳だ。


「――という事だ」


「分かりました」


「では、健闘を祈る」


 俺たちは神官たちの歓声に見送られる様にして、広間から出る。


 後は、荷物を纏めたら出発だ。神官たちは出発も見送ってくれるとか言っていた。


 別にいいのに。


 俺は部屋に戻ると、荷物を纏めて装備を整える。


 左右に剣を引っ提げ、聖剣は背中に吊した。


 そして、静かに廊下に出ると、ちょうど他の四人も出てきていた。


 俺たちは無言で目配せすると、それぞれがバラバラの方向に向かう。


 今いるのは、教会の2階。俺は静かに、1階に下りると、ある場所に向かう。


 それは、地下に続く階段だった。俺はそこを足音を殺して下りる。


 そこは、暗くて居心地が悪かった。俺が聖剣を抜いた部屋なんかがある。


 だが、向かっているのはそこじゃない。


 しばらく歩くと、見張りの兵が見えて来る。あそこか。


「――何だ?」


 見張りの兵は俺に気付くと、不審に思ったのか首を捻り聞いてくる。


「いや、ちょっとそこに用があって……」


 答えながらも、兵との距離を詰める。


「いくら勇者様でも通す訳にはいかない。止ま――ぐぁ」


 身体強化で一気に兵士に近付き、腹に拳を全力で叩き込んだ。兵士は変な声を上げ崩れ落ちる。


 少しの間眠っていてもらおう。


 兵士から鍵を奪い、兵士の後ろにある兵士が守っていた扉を開く。


 ギギギッと嫌な音を出して、ゆっくりと開く。先には下への階段が続いていた。


「ここか」


 階段を下りて行くと、段々と寒くなってくる。流石に地下2階にもなると寒いな。


 階段を下りると、そこには牢が並んでいた。


 網目状の格子の向こうには、罪人と思われる人が何人も入れられていた。


 俺に気付くと、騒ぎ出す。


 マズい!


「どうした?」


 騒ぎを聞き付けた看守が近付いてくる。


 俺はなんとか、階段の影に隠れる。


「いや、そこに不審者いますよ」


「あっ、そんな馬鹿な事ある訳ないだろ」


 ニヤニヤした罪人に言われた看守の足音が近付いてくる。


 俺は看守が来るギリギリのタイミングで飛び出す。


「ギャ!」


 腹に剣の柄を埋める。


「何だお前は!」


 もう一人が少し遠くで俺に気付き、魔法を唱えようとしている。


「くそっ!」


「あんた、一人逃げようとするからだよ」


 罪人が俺が脱獄したと思ったのか、言ってくる。お前と一緒にすんな!


 俺は身体強化を駆使し、猛スピードで看守に迫る。


 なんとか、魔法を唱えられる前に気絶させることが出来た。


「はぁ~」


 ため息をつき、神官の懐を探るが、鍵は出て来ない。


「ここは、鍵じゃなくて、神官の魔法で閉じられてんだよ」


 もう一人の神官の懐も探っていると、罪人が言って来る。


「残念だったな、誰かを助けに来たか知らんが、無理だよ」


 そうか、まあいいや。


 俺は罪人の言葉を無視して、立ち上がり歩き出す。


 行き着いたのは重厚な扉に閉ざされた部屋だった。扉の表面には魔法陣が描かれていた。


「ここかな?」


 俺は扉を開こうと、手で押そうとするが、触った瞬間手に痺れが走る。


 うわっ!


 さっと、離れる。ふん、しっかりと守られてるって訳だな。


 左右の剣を抜き魔力を込めて、炎と水を纏わす。ついでに、身体強化もしっかり全身に掛ける。


「うらぁぁぁ!」


 二本の魔剣で全力を出し切り付けるが、弾かれる扉はびくともしない。


「無理か~」


 流石に硬いな。魔剣じゃびくともしないか。


 俺は魔剣を鞘に戻し、背中の聖剣を抜く。青白い光を放つラムドスクは神々しい。


 いまだ、ラムドスクの力は分からないが、本当に聖剣ならこんな扉すぐに壊せるだろう。


 下手したら、地下を崩してしまうがいい。最悪この教会はどうなろうといい。


 俺はラムドスクを両手で構える。


「とりあえず、最初は触れるだけにするか」


 ラムドスクをゆっくりと扉に近付ける。


 妙な緊張感が俺を包み込む。


 ラムドスクの先端が扉に触れる――瞬間、嵐が起きた。


 ラムドスクと俺を中心に、ラムドスクと触れた扉に向かって風が、ここにある大気が、物凄い勢いで暴れ出した。


 扉はなすすべがなくバラバラに吹き飛ばされる。


「……これが聖剣の力か」


 これを本気で振ったら凄い事になるんだろうな。洒落にならんぐらいに。


 扉が吹き飛んだ中に入る。


「――――!」


 そこには、空のような髪を持ち、碧い目を見開いている少女が、言葉を失っていた。


 この娘が――まだ、全然幼く見えるぞ。


「……勇者さ、ま…………」


 少女はポツリと呟いた。

ご感想お待ちしています。


次話は明日に投稿します。

総合評価は一万ポイント超えました。ありがとうございます。

今日から3日連続3話更新します!

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