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ハーレム目指して何が悪い  作者: かいむ
第3章 勇者と魔王
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第39話 訓練

 次の日、俺は兵士達の闘技場に来ていた。


 昨日は魔法の訓練をしたから、今日は剣の訓練をしようと思ったのだ。


 闘技場は広く、既に何人かの兵士達が鍛練していた。


「ねぇ、せっかくだから模擬戦でもしない?」


「そうですね、私もコイツにはリベンジしたい所ですし」


 一緒に来ていたエルメナとハッシュベルが言う。


「そうだな、俺も試したい事があるし、聖剣ラムドスクも使ってみたいし」


「!!!」


 俺の言葉に、周りにいた兵士達が一斉に振り返った。


「えっ、な、何だ?」


 困惑する。何かマズイ事でも言ったかな。


 うろたえる俺に、一人兵士が代表して近付いて来る。


 その表情には緊張が滲んでいて、汗が頬を伝っていた。


「そ、その、勇者様。聖剣を使われるのですか?」


「ん、まあそのつもりだけど。どんな物かまだ分からないから、一応は試してみたいんだ」


「ど、どうかお止め下さい!」


 焦った様に言う兵士。何故?


「でも、一回使ってみないとどんな剣かも分からないし……」


「勇者様はここを破壊するつめりですか!」


 兵士は悲痛に叫ぶ。


 破壊って大袈裟な。


「そんな訳無いだろ」


「で、ですが、聖剣にはそれ程の力があると伝えられているのです。その聖剣をこんな所で使われると……」


 マジなのか? なら仕方がないのか? って言うか、そんなでたらめな聖剣を実戦で初めて使わないとならないのかよ。


「分かった。今日は使わないよ」


 しょうがないから、今日は身体強化を試すだけにしよう。






「――始めるけど良いかしら?」


 静まり返った闘技場にエルメナの声が響く。


「ああ、いいぜ」


「ええ、大丈夫です」


 二人向き合った俺とハッシュベルが答える。


 俺は左右の手にそれぞれ木の剣を持ち、構える。


 ハッシュベルも普通より大きい木の剣を見つけてきて、構えている。


 今回は、安全を考えて木の剣になった。前の時は本当に危なかったからな。


 ルールは簡単。相手に剣で切り付ける、又は相手に参ったと言わせると勝ち。魔法は使用可能だ。ただし、弱い魔法だけだが。


「――始め!」


 エルメナの声に俺は走り出す。ハッシュベルも走って来る。


 ハッシュベルとの距離がゼロになった瞬間、左右の剣を振り回す。ハッシュベル目掛けて、出鱈目に。


 ハッシュベルは俺の猛攻を大剣で上手く凌ぐ。


 やはり、剣の腕は俺より遥かに凄い。というより、俺の剣の腕が酷いだけかも知れないが……。


 とにかく、ハッシュベルは上手く捌き、俺に反撃をしようとして来る。


 俺はとっさに後ろに跳び、距離を取る。ハッシュベルも深追いはして来ない。


 厳しいな。ここは身体強化を試してみるか。


 イメージする。全身の筋力が上がる感覚を。そう、最初にこの世界に来た時の様な。


 魔力を全身に行き渡らせると、再び走り出す。


 今度はさっきよりも、明らかに速く。


「――!」


 ハッシュベルは驚き目を見開くが、なんとか俺の攻撃を防ぐ。


 しかし既に遅い。


 俺は反対の剣を素早く動かし、胴体を薙ぐ。


「――勝者ハヤト」


 エルメナの声が終わりを告げる。


「くそっ、何だ今の変わりよう?」


 ハッシュベルは悔しそうに呻くと、聞いてくる。


「ああ、昨日覚えた魔法だよ。身体強化とか言う」


「……身体強化? 本当か?」


「ああ、本当だぜ。何たって、俺には魔力量は多いが、魔法の才能が余りないという事らしいから、ちょうどよかったんだとよ」


「なんていうか、いつもの事ながら出鱈目ね、ハヤトは」


 エルメナは呆れた様に言う。


「いや、何たって俺は勇者様らしいからな」


 おどけて言う。


「それを言ったらおしまいよね……次はアタシと戦いましょう」




 闘技場で今度はエルメナと向き合う。


「では、始め!」


 ハッシュベルの声を合図に動き出す。


 エルメナはその場で腕を翳すと、魔法を放つ。


 電撃が認識出来ない速度で迫ってくる。


 身体強化を足に集中して避ける。それは、既に見えない電撃に対しての、本能からの行動だった。


 俺が避けれた事に安心していると、エルメナが突っ込んで来る。


 エルメナは普段の細いレイピアとは違う、普通の木の剣で切り掛かって来た。


「――くっ!」


 咄嗟に右の剣で防いだが、完全にエルメナのペースだ。


 力で押し返し、一旦距離を取る。


 だが、距離を取ると、エルメナは魔法を放って来る。


 これは厳しい。


 俺は炎やら電撃やらの攻撃を避けれながら、エルメナに近付く。一応、魔法といっても強力な物は禁止なので、威力が弱く範囲が狭い物だから、避ける事はできる。


 エルメナに肉薄し、切り付ける。剣で受け止められるが、すぐに反対でも切り付けようとする。


 だが、俺よりも早くエルメナは片手を俺に翳していた。


 マズイ! 魔法か。


 咄嗟に身を捻る。魔法を避ける為に全力で。


 その時には既にエルメナの剣が俺の腕に触れていた。


「――なっ!」


 翳した手に気を取られた隙を付かれた。


「勝者、エルメナ様!」


 ハッシュベルはえらく嬉しそうな声が響く。


 俺たちはその後も、ミルシアやスンも混ぜ、楽しく訓練をした。




 その日の夜――俺たちが魔王を退治する旅に出る前々日。


 俺はある噂というか、ある話を耳にする――いや、してしまう。


 それは、俺の気を引くには十分過ぎる話で、俺が行動するのには当たり前といえる話だった。


 その話によって、俺たちの旅は予想通りにはいかなくなってしまう。


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