第38話 始動
第3章始まりました。
私は小さい時から天才天才と持て囃された。
少し魔法の才能が他の人よりあった。ただそれだけで、この国では異常に期待される。魔法が重要視されるここミルバル国では。
小さい頃から期待され、失敗する事は許されなかった。ただ、一番を、他人より優れた成績を残す事が求められた。
私は努力した。人より少し才能があった所で、本当の天才ではなかった私は、努力をしなければすぐにメッキが剥がれる。必死に努力した。ただ、期待を裏切らない為に。
そのおかげか、魔法学校を首席で卒業する事が出来た。そして、聖地カタフィギオの教会に入った。そこで巫女として働く傍ら、魔法の研究をした。
私には魔法の才能が求められていた。教会である魔法の研究の成果を出す事を。
その魔法は召喚魔法。しかも、異世界から勇者を呼ぶという無茶苦茶な物だった。
だけど私は努力を止めなかった。既に私は魔法しか取り柄がなく、魔法で認めて貰う事でしか自分を示せなかった。
努力の末、私はついにその方法を突き止めた。教会の上層部に褒められた。私は嬉しかった。これで、助かる人がいるのかもしれないし、私はまだ求められていると感じれたから。
そんな矢先、魔王が現れたと知らされた。すぐに勇者を召喚する事になる。私が召喚を行う事になった。
教会には私より魔法が上手い人も、私より強い魔法量を持っている人も何人かいた。だけど、勇者召喚の魔法を一番知っているのは私だったし、時間に余裕がなかった。強い魔法使いが召喚魔法を覚えるのを待っている時間はなかったのだ。
私は国中の期待を一心に背負い、召喚の儀式に入った。それは、途方もなく集中力が必要で、ものすごく時間が掛かる事だった。
だけど、私は持ち前の努力で頑張った。期待を裏切らない為に。
ついに、勇者のいる世界とこっちの世界をつなげる事に成功した。後は座標を特定して連れて来るだけ。
勇者の特定を行い、こちらの座標も決める。やっと勇者を召喚する日、私は最後の行程を行う。
魔力を使い連れて来るのみ。私は魔力を魔法陣に注ぎ込んだ。勇者をこちらの世界に連れて来る所までは成功した。だけど、そこで魔力が尽きてしまう。努力ではどうしようもない事で、私は失敗した。
私は責められた。お前は嘘つきだ、と。どうしてくれるんだ、と。
こちらの世界には来ているから探して下さいと言っても、何を今更、勇者を召喚出来る方法を見つけたのも嘘だったんだろう、と。
私は絶望した。ただ、国の為に国に言われたからやってきていたのに。
なんでこうなってしまったのか。私は一体どこで間違えたのだろう。
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「まずは、火をイメージして下さい」
「火か、分かった」
俺は指示された通り、突き出した手の平から火が出るのをイメージする。
しかし、なんら変化は起きなかった。手から火が出るとか、今一イメージの仕方が分からない。
「次は水をイメージして下さい」
俺は魔法の特訓をしていた。魔王の居場所の詳しい特定までは、もう少し掛かるという事だから、それぞれ鍛えようとなったのだ。
エルメナとミルシアは魔法の本場で魔法を鍛えている。
スンとハッシュベルも模擬戦なんかのトレーニングを兵士と共にやっていた。
で、俺は魔法を覚えようとしているのだが、イメージの仕方が難しい。手から火が出るとか言われても、俺の常識ではそんな事起きない。こっちに来てからなら何度か見たけど、現実味がない。
んな訳で俺の特訓は難航していた。
「う~ん、基本の五属性と光と闇は出来そうにありませんね」
結局何もできなかった。精神力を使っただけだ。
「あとは、移動、空間、回復がありますが、出来そうなのは移動くらいですかね。空間と回復はもっと難しいですから」
「マジですか?」
「移動は軽いものなら魔力量さえあれば、殆どの人が出来ますから。ハヤト様は魔力量は異常に多いですから」
若い神官は偉そうに言う。
「どうすりゃいいんだ?」
うんざりしながら聞く。魔法は無理なら無理で良いんだけど……。剣だけで戦うし。
「移動の初歩は、身体強化。肉体の能力を上げる魔法です」
「ふ~ん、そんなのがあるんだ便利だな……あれ、それならエルメナとかは使ってたのかな?」
簡単な魔法でその効果ならエルメナみたいな魔法剣士にはちょうど良いんじゃないのか。
「いいえ、欠点が一つあるんです。簡単に出来るんですが、魔力の消費が多いんです。なので、エルメナ様などちゃんと魔法が使える方はそちらを優先するのです。また、純粋な剣士では魔力がある者は少なく、この魔法が使われる事は殆どありません」
で、魔力量も多く、まともな魔法を使えない俺にはちょうどいいってか。何か複雑な気分だな。
「そうか」
「やり方は簡単で、例えば足を速くしたければ、足が速くなるのをイメージするのです。誰でも小さい頃から成長すれば足が速くなるのですから、イメージはしやすいはずです。そして魔力をその場所に送り込む感じです」
「了解~」
足が速くなるのをイメージか、俺の場合は異世界に来た時の事を思い出そう。あの時なら身体能力が全般に上がったからな。
「これで、どうだ」
イメージし魔力を送ると、体が疼く様な感じがする。走ってみると、遥かに速くなっている。周りの景色が飛ぶように代わる。
「す、すごいですね。流石は勇者様」
神官は驚いていた。ただでさえチートだからな、俺は。
俺の魔力量ならある程度なら身体強化を続けられるらしい。
その後も慣れる為に色々と試した。
腕の筋力を上げて力を強くしたり、足の筋力を上げて跳躍力を上げたりしてみた。
色々と応用が利きそうだから、便利で良さそうだ。
俺は日が暮れるまで色々試してみた。
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