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ハーレム目指して何が悪い  作者: かいむ
第2章 旅と勇者
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第34話 ミルバル国へ

 俺達は、神聖ミルバル国に入っていた。


 既に、俺が黒装束に襲われて、病室で起きてから、一日経っていた。あれから黒装束は再び襲ってくる事はなかった。


 これといってアースファルト王国と変わりはない様な道が続いている。周りの景色も大差はない。魔物の数が心なしか増えた気がするぐらいだ。




 あの後、エルメナは恥ずかしくなったのか部屋から出て行った。俺も慣れない事をして疲れていた。カッコつけ過ぎたな……。


 俺が横になって、自分のセリフに悶えていると、ミルシアとスンがやって来た。


「ハヤト様、大丈夫ですか?」


「ハヤトさん!」


 二人は部屋に入ってくるなり、口を開く。


「ああ、大丈夫だ。心配かけて済まなかったな」


「エルメナさんが走って行きましたけど、どうしたのですか?」


「泣いていたみたいに見えたの。ハヤトさん何かしたの?」


 二人がエルメナについて聞いてくる。


「え、え~と、まぁ、エルメナを狙っているのが誰かとかを、聞いていたんだ」


 俺は一応事実を伝える。ただ、その後にした事は言わないが。


「本当に何もしてないのですね?」


「あ、ああ」


「ならいいのですが……」


「そうなの」


 俺は少し、歯切れが悪くなってしまった。


 俺は一日休んで、次の日には出発する事にした。ミルシアとスンは心配していたけれど、大丈夫だろう。一日でも早くミルバル国で事実を知りたいんだ。


 ああ、そういえば、ハッシュベルがエルメナの部屋の前にいたのは、エルメナに護衛はいらないと言われたが、心配になり部屋の近くまで来ていたかららしい。


 そこに俺が現れ、俺の事を暗殺者だと思ったらしく、向かって来たという訳だ。


 ハッシュベルは、俺に同じ様な手で倒された事にイライラしていた。




 あれから、俺とエルメナはまともに喋ってない。エルメナが妙に恥ずかしそうにするから、俺も恥ずかしくなる。


 今も、四人で馬車に揺られているが、非常に気まずい。


「あ、あのハヤト。腕の調子どう?」


 気まずい空気の中、エルメナが遠慮がちに聞いてくる。


「あ、ああ。大分、元に戻ったぞ」


 俺は、包帯が取れた左腕を振りながら言う。あの、気を失う程の傷がこんな短時間で動くまでなるなんて、すごいな魔法。


 やっぱり、俺の治療には、魔法を使ったみたいだ。関所に、回復魔法を使える人がいたみたいだ。よかった。


「そ、そう。ならいいんだけれど……」


 さっきから、俺とエルメナの会話はこんな感じで、すぐに止まってしまう。


「やっぱり何かあったんじゃないですか?」


 俺達の不自然さに、ミルシアが聞いてくる。うたぐり深いな。いや、俺達の言動が不自然すぎるのか。


「い、いえ、な、何にもないわよ」


「そうだぞ、何もないぞ」


 エルメナが否定するから、俺も否定する。わざわざ言いたくはない。


「本当なの?」


 スンの疑わしげな視線が突き刺さる。ぐっ、罪悪感が。


 俺はそんなスンの視線を受けながら考えると、何だか馬鹿らしくなってきた。エルメナと気まずくなっていたら、エルメナを守れないかもしれない。


「なぁエルメナ」


「えっ、な、何?」


「安心しろよ。俺は言った事はちゃんと守るぞ」


「なっ、あ、当たり前じゃない!」


 エルメナは少し安心した様に言う。俺の言った事信じてなかったのかな。


「言った事? 何の事ですか?」


「教えて欲しいの」


「え~、それは……」


「言ったらダメ! 秘密にしときなさいよ!」


 俺が言い淀んでいると、エルメナが言ってくる。なら、言わないけど、俺も言うのは恥ずかしいし。


「まっ、そういう事だ」


「え~、何なの、知りたいの」




 そんなこんなの内に、馬車はある村に着いた。今日は、ここで宿を取るという事だ。


 村にはやはり、魔物よけの柵が張り巡らされていた。


 俺達は馬車から降り、村に近づく。すると、柵の中から人が顔をだしてくる。


「おい、お前達は何者でぇ?」


「旅をしている者です」


「こんなご時世にか? 気楽なもんでぇ、まあ、入りな」


 俺達は村人が開けてくれた門から村に入る。村人の案内で村の中を進む。


「まずは、教会でお祈りをどうぞしてくだせぇ」


 俺達は立派な教会に連れていかれた。流石は宗教国家、こんな小さな村にも教会がある。


 中に入ると、長椅子が並んでいた。ガラスはステンドグラスで彩られていた。


 俺達は村人の見様見真似で、お祈りを捧げる。


「お客様ですか?」


 俺達が祈り終わると、横から柔らかい声が聞こえてきた。そこには、ゆったりとした白い修道着を着た男がいた。


「へぇ、そうです。神父様」


「そうですか、ゆっくりしていって下さいね」


 男は優しく微笑むと、下がって行った。




「神父様って、どういう人なんですか?」


 俺は教会から出ると、なんとなく気になって村人に聞く。


「ん、神父様は、優しいお方でぇ。昔は聖地で働いておられたみたいなんだが、今はこうして、私達を導いて下さっておるのです」


「そうなんですか」


「ええ、そうなんでぇ。神父様が来るまでは、教会も荒れ放題で困っとったんです」


 ふ~ん、立派な人なんだな。でも、聖地で働いていたんなら何でこんな所に来たんだ?


「では、ここで。宿はそこにあるんで。ごゆっくり」


 村人は、俺達を案内すると去って行った。


「すごいな、教会でお祈りさせられたぞ」


 俺は、村人が見えなくなると、口を開く。


「ええ、驚きました。外から来た者にもお祈りさせるとは」


「そうなの。あたし、ちゃんとお祈りできたかな?」


 ミルシアもびっくりしたみたいだ。スンは可愛い事を言ってくれる。


「噂には聞いていたけど、この調子じゃ、村に行く度にお祈りしなくちゃならないわね……」


「そうですね……」


 エルメナとハッシュベルも、言っている。無宗教の俺達には一々お祈りするのは面倒でしかない。


 俺達はうんざりしながら宿に向かった。


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