表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーレム目指して何が悪い  作者: かいむ
第2章 旅と勇者
35/54

第33話 エルメナ

 目を開けると、真っ白い天井が目に入ってきた。俺はベッドに寝ていた。


 俺は起き上がろうと思い、腕を動かそうとするが左腕が動かない。左腕には、包帯が頑丈に巻かれて固定されていた。


 俺はそのグルグル巻きの左腕を見て、黒装束にやられた事を思い出す。どうにか無事だったみたいだ。


「あ~、そうか、油断したな」


 俺は独り言を言い、周りを見回すと、俺の寝ているベッドの右側に広がる金髪を見つける。


 俺は自由に動く右手で、その頭を優しく撫でる。そう、俺はエルメナを守る為に戦ったんだ、後悔はない。


 俺がしばらくそうしていると、頭が動き、うめき声が聞こえてくる。


「ん、ん~」


 エルメナはこちらに顔を向ける。そして、目を開く。


「えっ――」


 固まるエルメナ、と俺。エルメナが固まるからつられて俺まで固まってしまった。先に硬直が解けたのは、エルメナだった。


「ハヤト、ハヤト! よかった。本当によかった」


 そう言いながら、目に涙を溜めて、俺に抱き着いてくるエルメナ。


 ああ、エルメナさん。色々と当たってますよ。エルメナも俺も部屋着で薄いから、良い感じに胸とかが――。


 って、そんな場合じゃないな。俺はエルメナの背中に手を回し、言う。


「大丈夫だよ。あれくらい、俺には問題ないよ」


 俺はエルメナを安心させる様に言う。


「で、でも、ハヤトは気を失っちゃうし……」




 その後もしばらくエルメナの泣き声が続いた。


 俺はひたすら安心させる様に背中を撫で続けた。その間も、胸を堪能させて頂きました。ごっつぁんです!


 エルメナは落ち着くと、恥ずかしくなったのか、俺から離れてしまった。残念。


「……あの、ハヤト、その腕は特に問題ないそうよ。もう明日には元の様に動かせるということよ」


 ふん、ちゃんと左腕の神経は生きているみたいだ、さっきから傷があった所が少し痛む。でも、あの傷で一週間か、魔法でも使ったのかな。


 エルメナの話によると、俺はあの後結構危なかったらしい。毒も体中に回り掛けていたらしい。大量出血も危なかったみたいだ。あの傷の中、無理して動いたからな。


 すでにあれから、二日経っているらしい。


「ずっと、看病してくれたのか?」


 俺はエルメナがベッドの横で寝ていたから聞く。


「う、うん。アタシのせいだから、当然だわ」


「そうか、ありがとうな、エルメナ」


「な、なんで、ハヤトがお礼を言うのよ」


「いや、何となく……そうだ、あいつらの事聞いていいか?」


 俺はずっと聞きたかった黒装束の事を聞く。


「えっ、ええ、いいわよ。ハヤトにも迷惑を掛けてしまったから、無関係じゃないしね」


 エルメナは座り直すと、話し始めた。


「あの黒装束達を送って来たのは、おそらくアタシの姉、ルミナル・アースファルトだわ」


「えっ? 第一王女が?」


 俺は、思わず聞き返す。


「ええ、そうよ。あのルミナル姉さんが……」


「なんでそんな事を?」


 俺は、王都で会った第一王女を思い出しながら聞く。


「姉さんはアタシが邪魔なのよ。アタシがしょっちゅう騎士や兵士達と共に、色んな所に行っているから、騎士達はアタシに付いてるのよ」


 別に、味方になってもらいたくて、一緒に行動していた訳じゃないんだけど、とエルメナ。


「それが気にいらなかったのよ。姉さんは、貴族達に人気だから、貴族と仲の悪い騎士に人気のアタシを、排除しようとしているのよ」


「姉妹なのに、そんな事で殺しに来るのか……」


「姉さんも第一王女だから必死なんでしょう。今、王国には王子はいない。従って、次期国王は、第一王女の姉さんが最有力。権力に貪欲な貴族達は、そんな姉さんに味方しているの」


「つまり、そんな後ろ盾を失わない様に、第二王女のエルメナを?」


「そう、アタシは別に後継とかはどうでもいいんだけど、騎士達はアタシを持ち上げているから……」


「ふーん、それで、エルメナがいなくなったら、騎士達は力を失い、貴族と第一王女に権力が集中するのか」


「アタシはこんな事、嫌だったのよ。なんで、姉さんに殺されそうにならなきゃならないのよ……。だから、王都にはなるべくいない様にしていたのよ。そして、今回ちょうどハヤトが他国に行くから、付いて来たのよ。でも――」


「俺達といる時に、王都から離れていても、刺客に襲われたという訳か」


「そうなのよ。アタシは、怖いの……。何処にいても姉さんに狙われている気がして。いつ、何処にいても安心出来ない……」


 エルメナは俯き、肩を震わせていた。


「それは、国王とかには相談しなかったのか?」


「駄目よ。お父上は実力主義だから、死にたくなければ自分の力を付けろって、言われたわ。何ならルミナルがいなくなれば、お前が後継者だぞ、って」


「そ、そうなのか」


 父親としてはどうかと思ってしまうな。娘同士に殺し合わせ様なんて。


「もう、アタシは生きていていいのかも、分からなくなったの。姉には命を狙われ、父は助けてくれない。旅に出ても、周りに迷惑が掛かってしまう。……もう、生きている意味が分からなくなったのよ」


 エルメナの俯いている顔の下のシーツが、涙で濡れていた。


 俺はそんなエルメナを見て考える。今、エルメナを救うには何をすればいいのか。


 そして、決める。例えそれが間違っていたとしても、エルメナを救えるなら――。


「そんな事を言うなよ。エルメナ。俺はエルメナの為になら命を投げ出してもいいと思っているぞ。俺がエルメナ、お前の生きる意味になってやってもいいぞ」


「えっ? どういうこっ――」


 俺は、顔を上げたエルメナにキスをする。軽く触れる様なキスだ。すぐに離れてしまったが、確かに触れた。


「な、何、なんで?」


 唇を離すとエルメナは混乱して、目を白黒させている。可愛いな。


「俺の為に生きていてくれ。そうすれば、俺がエルメナを守ってやるから」


「な、なんでよ……そ、そんな事を言われたら……」


 エルメナの目からはボロボロと涙が流れ出していた。その涙を拭うと、言う。


「わ、わかったわ。アタシをちゃんと守りなさいよ。ハヤト」


 エルメナは、泣き顔に笑顔を浮かべ言う。


 俺達は再び唇を重ねる。


 エルメナの目からは、また涙が溢れていた。


ご感想お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ