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ハーレム目指して何が悪い  作者: かいむ
第2章 旅と勇者
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第31話 関所

 俺達はようやく国境まで、たどり着いた。国境線上には、関所が設置されていた。


 俺達が関所に近づくと、見張りをしていた兵士が出てくる。兵士は俺達が馬車を止めるのを見ると、声を掛けてくる。


「通行書はありますか?」


 俺が通行書を出そうと、服の中を探していると、ハッシュベルが暴走しだす。


「おい、お前失礼だぞ」


「は、はい?」


 突然のハッシュベルの言葉に、首を捻る兵士。俺は嫌な予感がして、止めようとするが、間に合わない。ハッシュベルは暴走を続ける。


「こちらは、第二王女の、エルメナ様だぞ!」


 あ~あ、言っちゃったよ。なんの為にエルメナが普通の鎧姿になっているんだか。俺達はハッシュベルの暴走に嘆息する。


 どうも、ハッシュベルは王族を限りなく尊敬しているみたいだな。エルメナが普通に扱われるのが我慢ならなかったんだろう。でも、止めて欲しい。余計迷惑だろ。


 兵士は何を、という顔をして、エルメナの顔を見る。すると、エルメナの顔に見覚えがあったらしく、顔面を蒼白にする。


「も、申し訳ありません。いらっしゃる事を知らなくて、す、すぐに、歓迎の準備を――」


「いや、その必要はないわ。それより、アタシが来た事は内密にしてくれないかしら」


 エルメナが言葉を遮り、頼む。


「はっ、分かりました。本日はこちらに泊まっていかれますか?」


 兵士はエルメナの言葉に敬礼して、泊まるかどうか聞いてくる。


 エルメナは俺に視線で聞いてくる。エルメナはこの旅では、俺に付いて来ている身分だから、俺に基本的に従うと言っていた。


「泊まっていこうぜ。疲れている事だし」


 俺達は関所で泊まっていく事にし、兵士に案内してもらう。


 この後、当然ハッシュベルをボコボコにした。エルメナがなんの為に身分を隠しているのかを、しっかり教え込む。これだからバカは。




 関所は大きく、無骨な造りで要塞みたいだった。中は広く、部屋も沢山あり、俺達はそれぞれに一部屋を与えられた。エルメナがいる事で気を使っているんだろう。


 部屋にはベッドと、机しかない簡素な造りだったけど、野宿ばかりしていた俺には嬉しい。俺は、旅の疲れが出て、自分の部屋で寝てしまった。




 俺は晩飯を知らせに来た兵士の声に起こされる。いつの間にか、結構時間が経っていた。


 俺が食堂に行った時には、みんな既に座っていた。


「遅かったわね。待ち侘びたわよ」


 俺がエルメナの対面に座ると、エルメナが口を開く。


「スマン、ちょっと寝てた」


「まぁいいわ。みんな揃ったし、食べましょう」


「「「「「頂きま~す」」」」」


 エルメナが言うと俺達は一斉に食べ始める。


 料理は色々あり、どれも豪華だった。ここにも、気を使ったんだろう。おいしい料理が食べられて、エルメナ様々だな。


 俺はエルメナに感謝しながら、スープに手を伸ばす。最近は外で食べてばかりだったから、こういう温かいのは嬉しい。


 俺は、肉を頬張りながらこれからの事を聞く。


「なぁ、俺達が向かっている神聖ミルバル国の首都……えー」


「……カタフィギオですか?」


 俺が言い淀んでいると、右隣に座っているミルシアが教えてくれる。


「そう、それカタフィギオ」


 カタフィギオ――神聖ミルバル国の首都であり、国の宗教のミルバル教の聖地でもある町だ。


「この前教えたばかりよ……」


 エルメナの呆れた声が聞こえてくる。


「仕方がないだろ、最近は色んな事を知り過ぎて、頭がいっぱいいっぱいなんだよ」


「ふんっ! これだから、軟弱者は」


「はぁ、お前には言われたくないわ!」


 俺は、エルメナの横で嘆息しているハッシュベルに言い返す。一々鬱陶しいやつだ。


「で、カタフィギオが一体何なの?」


 脱線していた俺達を、右隣に座っているスンが引き戻す。


「ああ、そこまでここからどれくらい掛かるんだ?」


 俺はカタフィギオが何処にあるのか分からないから、どれくらい掛かるのか知りたい。


「う~ん、馬車だと多分、三、四日じゃないかしら」


 王都からここまでくらいの距離だな。案外近いみたいだ。


「ふ~んそうか。それから、聞いてなかったけど、この国とミルバル国はどうなんだ? 外交的に仲が悪かったりするのか?」


「外交的には、はっきり言って仲は悪いわ。少し前まで戦争したりしていたのだから」


「マジで。それなら、俺達はミルバル国に行っても大丈夫なのか?」


 俺は今更ながら、心配になる。


「ああ、それなら大丈夫だぞ。今は魔物が増えた事に対応するために停戦しているし、わざわざ面倒事を増やしはしないだろう」


 エルメナに聞いたつもりだったのに、男の低い声が耳に入ってくる。俺は少し気分を落としつつも安心する。


「なら、いいや」


 俺はパンに手を伸ばしながら言う。久しぶりのしっかりした食べ物に箸がすすむ。箸はないけど。


「ねえ、ハヤト」


 俺がそろそろデザートに入ろうかという時、エルメナが話し掛けてくる。


「ん、なんだ?」


「あの、ハヤトって、異世界から来たのよね?」


「んっ、なんだ、今更疑っているのか?」


「そういう訳じゃないんだけれど――」


 エルメナは、俺の問を焦った様に否定し、少し言い淀むと、決心した様に聞いてくる。


「――ハヤトは、故郷から、親や友人と離れ離れになったのよね?」


 ミルシアとスンは、その質問にエルメナを凝視して、俺の方を恐る恐る見てくる。


「ん~、まぁそうだな」


 ミルシアやスンは俺の事を心配していたんだろう。今まで前の世界の事を聞いてこないと思っていたけど、そういう事か。


 別に俺は触れられたくない訳じゃない。親や友人を思い出して悲しむ訳じゃない。特に友人はいなかった。逆の理由では、思い出したくないけど……。


「なら、この世界を、特に自分を召喚した人を恨んだりはしていないの?」


 そうか、エルメナが心配しているのは――。


「いや、全然恨んでないよ。寧ろ感謝しているぐらい」


「えっ、何で?」


 エルメナは俺の答えに首を傾げて聞いてくる。


「んっ、まぁ俺は前の世界では、何をする訳でもなかったし、この世界に来てから、ミルシアや、スン、エルメナなんかの素敵な女の子達と出会えたからかな」


 俺は三人に笑顔で言う。ちょっとカッコつけ過ぎたか。顔を真っ赤にする三人に、俺も恥ずかしくなってくる。


「まぁ、ハッシュベルに出会ったのは、マイナスだけどな」


 俺は恥ずかしさをごまかす為に、ハッシュベルの方を見て言う。困った時のハッシュベル。便利だ。


「一々、言わなくていい!」


 俺とハッシュベルのやり取りを見て、恥ずかしさが収まったのか、エルメナが言う。


「なら、いいんだけれど」


 多分、俺が召喚された事の復讐とか考えていると、思ったのだろう。




 俺達は食事が終わっても、色々話した。


 解散したのは夜も既に遅くなっていた。皆、自分の部屋に戻る事になる。


 エルメナの部屋は俺達四人とは少し遠い所にある。俺達よりもいい部屋が当てられたんだろう。俺達四人の部屋はそれぞれ近かった。


「じゃ、おやすみ~」


「おやすみなさい」


「おやすみなの!」


「おやすみ!」


「姫様おやすみなさいませ」


 皆口々に挨拶して、それぞれの部屋に向かった。


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