表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーレム目指して何が悪い  作者: かいむ
第2章 旅と勇者
31/54

第29話 出発!?

 俺達はエルメナの話を聞くと、一旦宿に戻った。今後の事について話す為だ。


 俺はミルシアとスンと向かい合って、言う。


「なあ、ミルシア、スン。俺は――」


「言っておきますけど、私はハヤト様に付いて行くと決めていますから」


「あたしも! あたしも、もちろん付いて行くの!」


 ミルシアとスンは俺の言葉を最後まで聞かず、付いて来ると言ってくる。


「でも、付いて来るったって、今度はこの国から外に出るんだぞ。しっかり考えて言っているのか?」


 俺はもっと真剣に考えて欲しかった。俺はどうしても二人が大して考えずに、付いて来ると言っているとしか思えなかった。


「そんなのは当たり前です。私はハヤト様の奴隷ですから、ハヤト様が行くと言えば行きます。それに、私にはハヤト様しか頼れる人はいませんし、奴隷という関係がなくても、なんと言われようとも、付いて行きます!」


「そうなの、アタシもずっと前からハヤトさんに付いて行くと、考えて決めていたの!」


 俺は二人の勢いに押される。二人が真剣に考えて、付いて行くと言うのなら、それでいいんだ。それに、本音を言うと付いて来て欲しかった。なんと言っても一人は寂しい。


「そうか、ありがとう。これからも、色々大変かもしれないけど、よろしく頼む!」


 結局、二人とも付いて来る事になった。今までと何も変わらない。そう、今の俺にはこれが普通になっていた。




 俺達が行こうとしているのは、神聖ミルバル国。魔法が盛んで、宗教によって治められている国だ。また、秘密主義で、エルメナも情報を集めるのは苦労したと言っていた。


 エルメナの話だと、この世界で魔物が増え始めたのは、今から約二ヶ月前。俺が来る一ヶ月前くらいだ。神聖ミルバル国では他の国に比べても、魔物の増え方が多く、国も対応しきれずに人々は苦しめられていた。


 そんな中、首都の聖地にいたある神官が、神からお告げを受ける。


 曰く、魔王が現れたのが、魔物が増えている原因だ。


 曰く、ミルバル国の中に魔王が存在する。


 曰く、魔王を倒すには、異世界から勇者を召喚するしかない。


 という事だ。俺には信じられないが、ミルバル国の人達は信じたみたいだ。さすがは、宗教の国。


 そこで、昔から言い伝えられていた召喚の魔法を、国一番に優秀な巫女が使った。


 それは、長期間に渡る魔法らしく、実際に呼び出せるのは、一ヶ月後、つまり、俺がこの世界に来た時とちょうど合う。


 しかし、巫女は最後の最後に失敗したらしい。詳しい事は分からないが、勇者がちゃんと召喚される事はなかった、という事だ。


 時期的にもピッタリだし、それが俺だという確率は高かった。失敗した結果があんな草原に投げ出されていた、というなら俺も納得できる。


 俺はこのままこの話を無視して、普通に生活してもよかったんだ。本音ではそうしたかった。だけどよく聞くと、魔王を放っておくとこの世界が終わる、というお告げもあったらしい。


 そうなると、この世界で暮らしていこうと思っている俺に、影響が出てくる。俺が本当にその勇者かどうか調べて、勇者なら魔王を倒さなければならない。残念ながら、勇者以外では魔王を倒せないときた。本当に面倒だ。


 そういう訳で俺達は、神聖ミルバル国に向かう事になった。エルメナに通行書と、紹介の手紙を貰ったから問題なく行けるはずだ。


 俺達は明日の出発に備えて、早めに寝た。




 次の日、俺達は王都の外に用意しておくと、エルメナに言われた馬車を探していた。


 エルメナには何から何まで世話になりっぱなしだ。これは、一生足を向けて眠れないな。


 俺は止められている馬車を見つける。その馬車は、ハッシュベルが乗っていた馬車にも劣らない大きさがあった。派手さは抑えられていたから、安心する。変に目立ちたくないからな。


 俺達が馬車に近づくと、馬車の側に人影があった。俺は使用人かなにかだと思い、お礼を言おうと近づく。


「あの、ハヤトです。これは――」


 俺は言葉を途中で止める。いや、止まってしまう。俺の目の前に広がったのは、真っ赤なマント――


 そうエルメナだった。


「え、エルメナ? 何でここに?」


 俺は驚いて聞く。同時に、嫌な予感が沸き上がってくるのを抑えつける。


「あっ、ハヤト、遅いわよ。いつまで待たせるのよ! ん? 何でいるかって、それは付いて行くからに決まっているでしょう。ねえ、ハッシュベル」


 な……に、ハッシュベルだと!? エルメナの真っ赤なマントの後ろには、白い鎧を身に纏い、大剣を背にした巨体が。


「……は、はい! それから、お前、姫様になんて口を利いているんだ!」


 うわっ、鬱陶しいやつが来たな。ハッシュベルは俺達に付いて来る事には、乗り気でないみたいで、返事に歯切れがない。


「いいのよ、ハヤトはアタシの恩人なんだから」


「そ、そうなんですか?」


 エルメナがハッシュベルを諌める。ハッシュベルは俺の方を睨んできたが無視だ、無視。


「で、私は一体何故一緒に行く事に?」


「え? だって貴方アタシの近衛じゃない」


「くっ、そうですが……。分かっています。全力で姫様を守らせて頂きます!」


 ハッシュベルは、嫌そうにしていたが、エルメナの言葉には逆らえないのか、最後には投げやりに叫んでいた。


 俺は二人のやり取りを見届けると、エルメナに話し掛ける。


「なあ、一国の姫がこんな勝手に他国に行ったりしていいのか?」


 俺は、自分でダメだろ! と、ツッコミながら聞く。


「ん~、多分駄目なんだろうけど、勝手に出かけるのはいつもの事だし、大丈夫でしょ」


「いやいやいや、ダメっしょ! 何か俺があの国王に罪を問われたりするんじゃないの!?」


 勝手に王女を他国に連れ出した、とか言って。


 ハッシュベルはエルメナの後ろから、がんばれと口パクで俺に言っていた。そんなに行きたくないなら自分で言えよ。ムカつくな!


「大丈夫よ。アタシがなんとか言ってあげるから。さあ、行きましょう!」


 エルメナは、他の国に行くのは初めてなのよ、と嬉しそうに言いながら馬車に乗り込んで行く。


「本当に大丈夫なのでしょうか?」


 ミルシアがポツリと漏らす。


「いや、分からん。だけど、エルメナには世話になり過ぎた。今更逆らえない……」


「ははは、何だか賑やかになったの」


 本当だ五人になってしまった。結構な大所帯だ。でも、こんな旅も楽しいだろうと、期待する気持ちもある。


 俺達も馬車に乗り込み、賑やかな旅が始まった。


ご感想お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ