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ハーレム目指して何が悪い  作者: かいむ
第2章 旅と勇者
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第28話 王族

 俺達は、国王の前で頭を垂れていた。歳の割には若く見える国王は、玉座にゆったりと座っている。


 ここは謁見の間という、国王が人と公式に会う時に使われる場所だった。


 俺達の周りには国の重鎮と思われる人達や、兵士達が沢山いる。その視線は俺達三人に注がれていた。


 無数の視線に晒されて、俺の両隣にいるスンとミルシアは、緊張で固まっていた。


 俺達は、国王に言われ、頭を上げる。俺の目に入ってきたのは、国王の左右にいる王族。そして、その中のエルメナだった。俺は今朝の事を思い出していた。




 俺は、昨日ハッシュベルに言われた通り、城に来ていた。


 俺達はいつもの冒険者姿に戻っていた。これ以外にいい服はなかったし、俺達は冒険者なのでこれが正装だろうと諦めていた。


 城の前まで来ると、見張りらしき人に中に通された。すると、いつの間にか部屋に連れていかれ、待たされてた。


 俺達が意味も分からず、部屋で待っていると、部屋の戸が開く。入って来たのは、いつか出会ったエルメナだった。エルメナは、あの鎧に赤マント姿ではなく、お姫様らしく真っ赤なドレスを着ていた。どうも、赤が好きみたいだな。


 鎧姿じゃ気付かなかったけど、エルメナは中々スタイルがいい。俺がエルメナのドレス姿に見とれていると、エルメナは言う。


「ハヤト、急だけどあたしの父親、国王に会ってもらうわ」


「はっ? なんで?」


 俺は急な事に疑問を抱く。


「ハヤト、貴方をここに呼ぶには、何か理由が必要だったの。それが、この前アタシが助けられた事に対するお礼、という事になっているから、頼むわ」


「へ? え〜と、つまり俺はエルメナの父親、国王に会って、お礼されたらいいの?」


「そういう事、くれぐれも失礼の無い様にね。いくらアタシの恩人でも、国王に失礼があれば、罪に問われるから」


「ま、マジで……」


 エルメナの言葉に俺はビビる。今までたいして敬語とか使った事ないからな。うまくいくといいんだけど……。


 俺はエルメナに言われると、すぐにこの謁見の間に連れて来られた。エルメナはすぐに離れて、国王の隣に行く。おい待てよ、置いてかないで!


 そんな俺の心の声は当然無視されて、今に至るという訳だ。




 国王が話し出す。


「お主らがエルメナを助けたという者達か?」


「は、はい」


 俺は緊張で口の中がカラカラになっていた。実際はスンは違うけど、そんな事まで頭が回らない。


「ふむ、ならば褒美は何を望む?」


 ほ、褒美? マズイ、何も考えてなかった。俺が口ごもるのを見て、国王の後ろにいるエルメナの顔にも焦りの色が見えた。……褒美、褒美、褒美っと、そうだ!


「――エルメナ姫と話をさせて頂く時間を」


 元々それが目的と言っても過言ではない。


「うん? そんな事でいいのか? 金でも、財宝でもいいんだぞ。姫の命を助けたのだから、それぐらい当然だぞ」


 国王は首を捻っている。


「いえ、物としてなら、エルメナ姫に双剣を頂きましたので、大丈夫です」


 俺はこの部屋に入る前に預けさせられた剣を思い浮かべながら言う。


「ふむ、そうか。ならいいが。……エルメナと話か、エルメナいいな?」


 国王は頷くとエルメナを振り返り聞く。


「ええ、問題ありません」


「なら後で会うといい。ご苦労だった。下がってよいぞ」


 俺達は、国王の言葉に失礼の無いように、出来る限り急いで部屋から出る。




「あ〜、緊張したー!」


 あの後、俺達は城の中にある部屋に案内され、また、待たされていた。


 俺は緊張から解放され、机に突っ伏す。


 ミルシアも疲れたみたいで、ソファーの背もたれに身を預けている。普段は背を付けずに姿勢良く座っているのに。


 スンは呆然とミルシアにひざ枕されていた。




 そうして、しばらくボーッとしていると、扉が開かれる。俺達は焦って身を起こし、座り直す。


 入って来たエルメナは俺達の様子を見て、苦笑して言う。


「アタシだけだから、そんなに緊張しなくてもいいわよ」


 エルメナの言葉に俺達はふぅ〜、と息を吐き出す。


「あんな感じで大丈夫だったのか?」


「まあ、大丈夫だと思うわよ」


「そうか、ならよかった」


 俺は、ソワソワしているスンを見て思い出す。


「あっ、そうだ。この娘はスンって言って、俺達の新しい仲間なんだ。なんだかんだで言ってなかったけど」


 俺はスンの方を向きながら言う。


「あ、あの、よろしくお願いしますなの」


「ああ、そんなに畏まらなくていいわよ。アタシはエルメナよろしくね」


 俺はスンの紹介を終え、本題に入ろうとする。


「それで、エルメナ手紙の件だけど――」


「あー、ちょっと待って。その話は、アタシの部屋でしましょう。ここじゃ誰が聞いてるか分からないから」


 エルメナはそう言うと、部屋から出て行く。俺達は慌てて付いて行く。


 雪の様に白い大理石の廊下を進んで行くエルメナ。俺達は遅れない様に付いて行く。何度目かの階段を上っていると、上から声が降ってくる。


「あら、エルメナじゃない。田舎の冒険者達を連れて何処に向かっているのかしら?」


 声の方を向くと、踊り場に漆黒のドレスを纏った少女がいた。俺より少し年上かと思われる顔に、バカにした様な色を滲ませていた。だが、その眩しいばかりの美しさは失われていなかった。


「何処でもいいでしょ!」


 エルメナは吐き捨てる様に言うと、その少女の横を通り過ぎる。俺達もその後に付いて行く。


 俺はその少女の顔に見覚えがあった。謁見の間でエルメナと共に国王の後ろにいた一人だ。という事は、彼女も姫の一人だろう。


「ふ〜ん、自分の部屋に連れ込むの? 貴方、気を付けなさいよ。エルメナに押し倒されるかも。私の妹はちょっと、気性が荒いから」


 俺の方を見ながらその姫は言う。えらく嫌みだな。エルメナが妹という事は第一王女か。


「ちょっ! いい加減にしてよ、ルミナル姉さん!」


 エルメナが顔を真っ赤にして振り返ると、ルミナル姫はオホホホと、笑いながら去って行く所だった。


 エルメナは唇を噛むと、そのまま歩き出す。




 エルメナの部屋と言っても、寝室とかのプライベートな空間というより、エルメナが客を迎える時に使う部屋らしい。


「ふぅ、見苦しい所を見せてしまってごめんなさい」


「えっと、姉妹で仲が悪かったりするのか?」


「まあね、王族なんてそんな物よ」


 やっぱり、権力争いみたいなのがあるのかな?


「そんな事より、手紙の事よ。ハヤトは知りたいのよね?」


「ああ、俺に関係する事かもしれないからな」


「ハヤトに関係する事? 何の事か聞いてもいいかしら?」


「ああ、大丈夫だ」


 俺はエルメナに今までの事、特にこの世界に来た事を話した。エルメナは驚いていたが、何処か納得した様な表情をしていた。


「そう、ハヤトが異世界から……、なら手紙の件だけど、他人に言ったりしない事を約束して。手紙には国家秘密と書いてあったのは、言い過ぎなのだけど、あまり広まると困る情報だったから――」


 そう言ってエルメナが話し出した内容は、はっきりと俺が関係しているかは、分からなかった。だが、俺を動かすには十分な情報だった。


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