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ハーレム目指して何が悪い  作者: かいむ
第2章 旅と勇者
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第26話 決闘

「決闘? 何で俺が、お前と?」


 俺は急に言い出したハッシュベルに聞く。


「私は考えたのだが、お前らは私の事を軽視し過ぎだ! だから、私の力を見せ付けてやる!」


 いやいや、意味が分からん。別にハッシュベルの実力を疑って軽視していた訳じゃない。寧ろ、性格がからかいやすかったからだ。


「見せ付けられても困るんだが……」


「それで、私が勝ったらもう二度とナメた口を利くんじゃない!」


「ハヤト様、あの生意気な青髪を懲らしめてやって下さい」


 なんか勝手に話が進んでいる。しかも、ミルシアは乗り気だ。スンは何時もの如くオロオロしている。


「お前ら、少し冷静になれ。俺達が決闘しても、何の得もないぞ」


「ふんっ! エルフが! 偉そうな口を利いていられるのも、今の内だ!」


「ふん、ハヤト様が貴方に負ける訳がありません」


 俺を無視して俺の決闘話が白熱してる!? 


「ち、ちょっと待てよ。俺の意思は?」


 俺が抗議するが、当然の如く無視される。ハッシュベルは御者に馬車を止めさせ、馬車から降りて体を動かしている。


「さあハヤト様、頼みます。あの生意気なやつを倒して下さい」


 俺はミルシアに言われて馬車から降りる。はぁ~、俺はやるって言ってないのに、完全に決闘する空気になっている。


 俺は諦めて柔軟を始める。こんな決闘で体を痛めたくないからな。


「はっ、やる気になったみたいだな。覚悟しておけよ」


 ハッシュベルが満足そうに言ってくる。イラッとするな。


「やるならサッサとやろうぜ」


 俺は双剣を両手に構えて、ハッシュベルを急かす。ハッシュベルは始める気になったのか、剣を構えてしゃべりだす。


「では、初めよう。いざ尋常に、ハヤト覚悟!」


 ハッシュベルは俺の身長ぐらいある大剣を、その百九十はあるかというデカイ体で持ち上げ、走り近づいて来る。巨体に似合わず速い。ハッシュベルは大剣を俺に向かって容赦なく降り降ろしてくる。


 俺はその大剣を避ける。大剣は俺がさっきまでいた地面をエグる。


「ほう? やるな!」


 あれ? そういえば、これ真剣でやるのマズくね? 俺は根本的な事に気付く。


 怪我をしたくないから、サッサと決着を付けようと思い、ハッシュベルに右手の剣の腹をたたき付ける。しかし、ハッシュベルは器用に体を捻り避ける。そして、そのまま大剣で切り上げて来る。俺はバックステップで距離を取る。


 ハッシュベルは俺が思っていたより上手い。俺はてっきり力任せの筋肉バカかと思っていたのに。流石は近衛隊長。


 早く終わらせないと、どちらかが怪我をするぞ。俺は終わらす為にハッシュベルに素早く近づく。


 右の剣を振るう。ハッシュベルは大剣を盾に防ぐ。その瞬間、俺は右手に魔力を込める。突然現れる炎。


「何!?」


 ハッシュベルは驚き隙を作る。俺はその隙を逃さず、鳩尾に左の剣の柄を叩き込む。ハッシュベルはゆっくりと倒れた。


 まさか真剣で決闘する事になるとは。俺の剣が魔剣だと知られてないおかげで、何とか気絶させれたけど、あのまま続けてたら怪我してたな。


「ふう~、なんとか終わった~」


 俺が一人満足げに伸びをしていると、ミルシアとスンの冷たい視線を感じた。


「……卑怯です」


「……卑怯なの」


 わあってるよ! 俺だって卑怯だったと思っている。だけど、怪我なく終わらせるにはこうするしかなかったんだ。ハッシュベルは剣の腕が凄かった。俺は、はっきり言ってセンスはないから、チートの力と速さで対応するだけだ。長引けば、俺が怪我していた。あいつ手加減するつもりなかったみたいだし。




 俺達は気絶したハッシュベルを馬車に乗せると、馬車を再び出発させる。


 しばらくすると、ハッシュベルは気が付いた。


「おい、大丈夫か?」


「お前! 卑怯だぞ! あんな手を使いやがって」


 俺が心配して声を掛けると、ハッシュベルは掴み掛かってきた。


「卑怯って……、確かに卑怯だけど、事前に何も決めてなかったし、お前も真剣なのに、手加減する気がなかっただろう。だから仕方なかったんだ」


「くそっ、もう一度だ、もう一度! もう一度勝負しろ!」


 ハッシュベルはしつこく言って来る。


「嫌だ! 元々お前が仕掛けて来た事だ。諦めろ。ついでに偉いのは俺だ」


「おまっ、くそ! 何であんな事で油断してしまったんだー!」


 ハッシュベルは悔しそうに叫んでいるが、仕方がない、ハッシュベルに偉そうにされると嫌だからな。


 ハッシュベルは、その後もずっと機嫌が悪かった。まあ、俺やミルシアが昼飯の時とかに、パシリにしたり、何かと使い走りにしたからだろう。




 俺達はその日も、野宿をした。今日は、女性群が見張りなので俺はグッスリ寝た。




 次の日も、ハッシュベルは不機嫌のままだった。流石に、俺とミルシアもからかうのは止め、普通にしていたのだが、機嫌は直らない。


 俺はどうにかこの空気を変えようとしたけど、無理だった。




 そんな中、俺達の前に突如現れたゴブリンの群。そこは人通りの少ない森の近くだったから、人間を待ち伏せていたのか、道の真ん中に山ほど鎮座していた。


 俺達が倒す為に馬車から降りようとすると、ハッシュベルが徐に立ち上がり、俺達を止める。そのまま、無言で一人馬車を降りると、背中の大剣を下ろし、構えて走り出す。


「はぁぁぁぁー!」


 ハッシュベルは今までのイライラを振り払う様に、大剣を振るう。ハッシュベルが大剣を振る度に何体ものゴブリンが吹き飛ぶ。


 ハッシュベルは大群の中を上手く動き回り、ゴブリンを抹殺して行く。


「ハーハッハッハッハッハー」


 ハッシュベルは狂った様に笑っていた。とうとう、ハッシュベルが壊れた……。俺は密かに後悔する。


 数分の内に道を塞いでいたゴブリンの群は、一匹たりとも居なくなっていた。


 流石に近衛隊長だけあって、強さは人外の様だ。


「ふう~、スッキリした」


 ハッシュベルは機嫌良さそうに帰って来る。何はともあれ機嫌が直って、よかった。


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