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ハーレム目指して何が悪い  作者: かいむ
第2章 旅と勇者
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第24話 出発

第2章始まりました。

 王都からの使者が来たのは、スンの故郷の村に行った時から二週間が経った頃であり、俺がこの世界に来てから、既に一ヶ月近く経った頃だった。




 王都からの使者は突然、俺達の宿に来た。そいつは、偉そうな態度で王都からの使者だと名乗る。


「私は、王族直属の近衛隊長ハッシュベルだ。王都からの使者としてやって来た。お前がハヤトという者か?」


 いきなり来て偉そうなやつだな、と思ったが俺は大人だし、王都からの知らせは待っていた事なので我慢してやろう。


「ん? そうだぜ。――ところで、そのムカつく顔をやめてくれないか? ……あっスマン、スマン、元からか?」


 我慢出来なかった。


 俺の言葉にハッシュベルは青い長髪を振り乱して怒り出す。それにしても、見事な青だった。流石は、異世界と言った所かな。


「お、お前! ただの冒険者風情で、私にナメた口利くんじゃない! わ、私は王族直属の近衛の隊長だぞ!」


 見事な怒りっぷりだ、プライドが高いのだろう。俺みたいなただの冒険者を馬鹿にしている節がある。だから、こういうやつは嫌いだ。


 俺はすっかり冒険者としての考え方に染まっていた。一ヶ月も冒険者をしていると自然とそうなる。


「はいはい、申し訳ありません。近衛隊長様」


 俺は見事なまで、感情が篭らない声で言う。


「お前! 自分の立場が解っているのか! 私に逆らうとどうなるの――」


「もう、いいから。お前は自分の仕事をしっかりしろよ。髪を振り乱して気持ち悪いぞ」


「ええ、気持ち悪いです」


「お、王族直属? 近衛隊長?」


 ミルシアは俺に続いて言う。さすがミルシアだ! スンはというと混乱していた。そういえば、スンには王女と知り合いだと、言ってなかったな。毎度、スマンなスン。


「く! お前ら、覚えてろよ! ふぅ~、お前らには第二王女様から直々に手紙を預かっている。何故お前らなんかに手紙を出されるのか分からんが、心して読めよ」


 ハッシュベルはそう言うとエルメナからの手紙を渡してくる。俺は封を丁寧に開こうとしたが、上手くいかずイライラし、結局適当に開く。ハッシュベルが何か言いたそうにしていたがもちろん無視する。


 手紙の内容は挨拶なんかは無く、いきなり本題に入っていた。




 例の件ですが、詳しい事が分かりました。ですが、手紙に書く事は出来ません。情報が漏れてしまう恐れがありましたので。すみません。一応、国家の重要機密にあたりますので。そこで、どうしてもこの情報が知りたいのであれば、王都の方までお越し下さい。案内は手紙を持たせたハッシュベルに任せて下さい。





 という短い内容だった。


 結局何も分からなかった。う~ん、どうしよう? まぁ、知りたいから行くのは決定だけど。単純な興味なんだな、これが。もう、元の世界に帰る事はどうでもいいんだけど、知りたいと思ってしまう。やはり、俺をこの世界に呼んだ奴や、俺が呼ばれた理由は何となく知りたい。尤も、俺が異世界に来たのと関係ないのかもしれないけどな。


 俺はミルシアとスンに手紙を見せて、行きたい旨を教える。


「もちろん、付いていくだけです」


「例の事? 第二王女?」


 スンは混乱しまくっていた。何も言ってなかったからな。急に、王女とか言われたら混乱してしまうよな。


「あ~、その事は後で説明するよ。とりあえず、ついて来る?」


「ふぇ! あっ、それは、もちろんなの。あたしはハヤトさんしか頼れる人がいないの!」


 俺は二人がついて来る事を確認すると、早く帰りたいという空気を、ばんばん出しているハッシュベルの方を向く。


「じゃあ、そういう事だから道案内頼む」


「はっ? 道案内?」


 ハッシュベルは初耳だという風に目を見開く。


「えっ? 聞いてないのか?」


 俺はハッシュベルにエルメナからの手紙を渡す。


「ほら、そこに書いてあるだろ?」


 ハッシュベルは手紙を何度も確認する。


「何だと!? 私がこんな奴らを案内するだと!」


「おいおい、失礼だな。俺だってお前みたいなのは勘弁して欲しいぜ」


「じゃあ、いいだろ自分で行けよ!」


 そうは言ってもな、俺達は馬車とか持ってないから歩いて行く事になるんだよな。確か王都は遠かった気がする。


 この前スンに報復しに来た奴らから借りた馬車は、ちゃんと返してしまったからな。奴らにもう二度と関わらない様に言って。あいつらミルシアに面白いぐらいビビりまくっていたからな。


「ん~、そうは言ってもな……、お前、何でここまで来たんだ?」


「ん? 馬車だが、何だ?」


「よし、決まり。道案内頼む!」


「はっ? 何を言ってるんだ! 私もお前も嫌なのに、何故そうなる?」


 俺はすごく嫌そうなハッシュベルを説得しにかかる。


「道案内と言っても、馬車に乗せて王都まで送ってくれるだけでいいんだ! それに、姫様からの頼みだぞ?」


「くっ、しょうがない、連れて行ってやるよ! 明日の朝出発するから、それまでに準備しておけよ」


 ハッシュベルは諦めた様に言うと、出て行った。


 明日出発か、この町で世話になった人に別れを告げないとな。尤も、また戻って来るつもりだけどな。


「よし、出発の準備をしよう!」


 俺達は荷物を纏め始めるが、皆持ち物は少なくすぐ終わった。必要最低限の物しか買ってなかったからな。


 とりあえず、ギルドに行く事にする。




 ギルドは相変わらずの雰囲気だった。俺は、この雰囲気を結構気に入っていた。俺はミリアさんを見つける。


「ミリアさん!」


「あっ、ハヤトさん。また依頼を受けに来たんですか? 熱心ですね」


「いえ、今日はお知らせを。俺達、王都に行く事になったので、明日、この町を離れる事になったんです」


「え! 本当ですか!? それは残念です……、また、戻って来てくれるんですよね?」


「もちろん、戻って来るつもりです。この町の雰囲気は結構気に入りましたから」


「戻って来る日を楽しみにしています。お気をつけて」


 俺達はミリアさんに見送られギルドを出た。ミリアさんは意外とあっさりしていた。いや別に、泣いて引き止めて欲しいとか思っていた訳じゃないけど、何となく悲しい。まあ、依頼以外ではロクに話もした事もないんだからしょうがないけど……。


 俺は他に世話になった人を思い浮かべる。奴隷商人のオスカーさんが浮かんできたけど、振り払った。あの人には何故だか、もう会いたくなかった。


 後は宿のニーナぐらいか? 


 俺達が宿に戻ると中にはニーナがいた。


「ニーナ、ちょっといいか?」


「あっ、ハヤトさん、何ですか?」


「俺達、明日から王都に行く事になったんだ。だから部屋は今日まででいいんだ」


「えっ! 本当ですか!? それは寂しくなります……でも、仕方がないですよね。ハヤトさんは冒険者ですから」


 ニーナの反応はミリアさんに似ていた。特に最初の二言。ニーナは寂しそうにしながらも、笑顔を見せてくれる。


「……ニーナ、またこの町に来た時は絶対この宿に泊まるから、楽しみにしといてくれ!」


 俺はそう言うと部屋に戻った。




 次の朝、俺達はニーナ達親子に見送られた。長い間お世話になったな。


「ハヤトさん、ミルシアさん、スンさん、絶対また来て下さいね!」


「おう、また来るぜ!」


「長い間、お世話になりました」


「ありがとうなの!」


 俺達は宿から離れると、ハッシュベルと待ち合わせた場所に向かう。


 待ち合わせの場所には既に、立派な馬車があった。ハッシュベルは先に来てたみたいだ。


「やっと来たか。早く出発するぞ! 王都は遠いんだ!」


「はいはい、分ってますよ」


「くっ! いいから早く乗れ! 出発するぞ」


 俺達は馬車に乗る。ハッシュベルも乗り込んで来ると、御者に出発する様に言う。


「よろしく頼むぜ、ハッシュベル」


「私はよろしくしたくない、それに呼び捨てにするなと言っているだろ!」


 ハッシュベルは今日もハッスルしていた。何だか新しいおもちゃを見つけた気分だ。これは楽しい旅になりそうだ。


 俺は期待を胸にマスラを離れた。


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