第20話 スン(2)
俺が起きると、スンは既に起きていた。えらく早いな。
「おはよう、スン」
「あっ、おはようございますハヤトさん」
俺は昨日から感じていた違和感が何か分かる。
「なぁ、そんな丁寧な喋り方しなくても、最初に会った時みたいに砕けた喋り方でいいぞ。というか、そうしてくれるとうれしい」
スンの話し方に違和感を感じていたんだ。
「えっと、分かったの。こんな感じでいいのかな?」
「おう、ありがとう」
スンと少し打ち解けた後、俺達はミルシアを起こして、朝ごはんを食べに行く。
食堂に入り食事を頼み、席に座る。食堂には今日も沢山の人がいた。
「これからだけど、王都からの知らせが来るまでは、ダンジョンとか依頼を適当にこなしたいんだがいいか?」
俺はこれからの予定を確認する。できれば、早く王都からの知らせが来てくれるとうれしいんだが。
「私はもちろんいいですよ」
「……王都からの知らせ?」
ミルシアはいつもの様に即答だが、スンは話の内容が掴めず混乱している。
「そうだ、スンは知らないんだった。とある事情で王都の知り合いに調べて貰っている事があるんだ。その知らせが届くまでの間だ」
まさか、その知り合いが王女だとは思わないだろうな。まぁ、あえて言う事もないだろう。
「そうなんだ、あたしもそれでいいの。あたしも役に立てる様になりたいから、それまで鍛えたいの」
スンもいいと言っているから、今後の予定は決まった。
スンは役に立てる様になりたいと言ってるけど、実際どれくらいの実力なんだろう?
朝ごはんを食べ終わると、俺達はギルドに向かう。
ギルドに着くと早速、依頼書を見に行く。
スンはDランクって言ってたな。パーティーだからその三つ上のランクまでだな。なら――。
「ミルシア、スン、Bランクぐらいの依頼を受けようと思うから、何かよさ気な依頼を探してくれ。できれば討伐系で」
「分かりました」
「分かったの」
ミルシアとスンは、返事をするとすぐに依頼書を見て回っている。俺も依頼書を順番に眺める。
え~と、Bランクは、っと、あんまり多くないな。でも、あるのは大体討伐系だ。
その中からよさそうなのを見てみる。
『森の魔物の退治』
『シャドウバード討伐』
う~ん、これだけじゃあんまり分からないな。ミルシアに聞かないと。
「ハヤト様、これなんかはどうでしょう?」
「ハヤトさん、これはどうかな?」
二人も見つけて来たみたいで、依頼書を持ってくる。
『ナキスネークの討伐』
『ビクビーの討伐』
いろいろあるな。名前だけでは分かる様な分からない様な感じだな。できれば、色んな魔物と戦いたいな。
「ん~、この、『森の魔物の退治』にしよう。これなら色んな魔物と戦えるだろうし、いいだろう」
「Bランクだから、そこまで強い魔物も出ないでしょうから、多分大丈夫だと思います」
「了解なの」
ミルシアとスンもいいみたいだし、これにしよう。
俺は依頼書を持って受付のミリアさんの所に持って行く。
「この依頼、お願いしま~す」
「あ、はい。ハヤトさんは、毎日毎日ダンジョンに依頼に頑張りますね。そんなに頑張らなくても良いんですよ。他の冒険者には月に三、四回しか依頼を受けない人もいるぐらいですから」
ミリアさんは依頼書を確認しながら話し掛けてきた。
「そうなんですか? でも今、俺は他にやる事もないですし、新しいパーティーメンバーの力を試すつもりなんです」
「でも、くれぐれも健康には気をつけて下さいね」
「はい。そういえば、また新しいダンジョンとかの情報ないですか?」
「ダンジョンの情報ですか? え~、今の所はないですね」
さすがにまだ無いか。そんなにしょっちゅう新しいのはできないか。
「そうですか、分かりました」
「また何か情報が入ったら知らせますね。それでは、依頼の説明をさせてもらいます」
「お願いします」
「この依頼は、この町から南に五、六時間の所にあるノーマス村の村長からの依頼です」
「えっ! ノーマス村!」
「どうしたスン、知ってるのか?」
急に大声を出したスンに、俺は驚いて聞く。
「あ、あたしの実家があるところなの」
「そうなのか?」
「そうなの」
「それはちょうど良かったです、なら場所は分かりますよね」
ミリアさんがホッとした様に言う。
「ノーマス村って場所がわかりにくかったりするのか?」
「そうなの」
「場所が分からなかったと言って、帰って来る冒険者も結構いたりするんです」
スンに続いてミリアさんが補足してくれた。
「ふ~ん、そんなに分かりにくいのか」
「依頼内容の詳しい事はノーマス村の村長に聞いて下さい」
「分かりました」
ミリアさんに見送られてギルドから出る。
「そうだ、スンは何か必要な武器とかないのか?」
「ふぇ、武器ですか? ん~、ちょっと見に行っていいですか?」
「ああ、いいぞ」
俺逹は武器屋に行くことにする。武器屋に入ると前来た時にいた、ドワーフのおっさんがいた。
「こんにちは~」
「いらっしゃい、ん、また来たのか?」
「ああ、今度はこの子の武器を探しに」
「どんな武器がいいんだ?」
おっさんがスンに聞く。
「ん~、軽くて扱いやすい武器かな」
「軽くて、扱いやすいか。ん~、なら短剣なんかどうだ?」
「どんなのがあるの?」
「短剣か、短剣なら……これなんかどうだ?」
おっさんは奥の方でごそごそしてると思ったら、短剣をいくつか机に出してくる。
スンはその短剣を、持ち上げたり軽く振ったりしている。
「どんな感じだ?」
「これがいいの」
そう言ってスンは一つの短剣を持ち上げる。中でも小さい短剣だ。
「それは三千セールだ」
「これを買います」
おっさんが値段を言うと、スンは買うことに決めたみたいだ。
スンがお金を払い、短剣を受け取ると俺逹は店を出る。
ご感想お待ちしています。
2012 2/24 加筆修正