第1話 異世界へ
「……んっ……んん」
俺は眩しさのあまり目が覚める。朦朧とした意識の中、なんだか寝心地が悪いなと思う。
何だよ! 俺はまだ眠いのに、背中のゴツゴツした感覚と、日差しを直で浴びているかの様な眩しさが、俺にもう一度夢の世界に旅立つ事を許してくれない。
俺はとうとう観念して目を開ける。すると、目の前には雲一つない青空……。や、屋根は? えっと、俺ちゃんとベットで寝たはずだよな? 焦って周りを見るが、一面草原だった。
混乱してきた……まず、今の状況をちゃんと把握しよう。
まず、俺の名前は柴田速人、年は十七歳で高校二年だ。百七十五センチのまあこれと言って特徴のない高校生だ……多分。髪も染めてない黒だ。
昨日は、オンラインゲームで何時ものメンバーと何時もの様に、クエストをしてからベットで寝たはずだ。そう、夜も遅かったし疲れていて、横になるとすぐに夢の中だった。
改めて周りを見渡すが、草と空しか見当たらない。こんな草原が日本に存在するのか? もしかして海外だったり!?
ふと、自分の服を見てみると布でできている服を着ていた。更に腰には、剣がぶら下がっていた。……何故剣が? 本物なら即、銃刀法違反で逮捕だ。俺は怖くて本物か確認する事が出来なかった。たしか、寝る時は紺のジャージで寝たはずだが…………んっ、この服何処かで見たことある気がする……何だったかな?
あっ! 昨日やっていたオンラインゲームの初期装備にそっくりなんだ。納得納得。
って、何で俺がゲームそっくりの服を着ているんだ! まさかゲームの世界に来た訳でもあるまいし……。えっ、マジで? ゲームの世界? そんな小説とかではよくありがちな展開、俺は遠慮したい……。
試しにステータスと念じてみる。まさか出る訳がないと思いながら、どこかで期待する俺。俺ってこんなに刺激を求めるやつだったっけ?
俺が自分の隠された本性に驚いていると、目の前に文字が浮かんできた。
っんな馬鹿な!?
シバタ ハヤト
Lv.1
人間
自由民
17歳
平民
体力 100
筋力 999
知力 001
耐力 100
俊敏 999
器用 800
スキル
片手剣 100
双剣 100
ナイフ 10
隠密 100
ステータス確認
魔法
装備
布の服
皮の靴
鉄の剣
…………うんっ! 出ちゃったよ! 本当にゲームなのか!? まだ信じられん。
ステータスは俺が使っていたキャラとステータスはほぼ同じだ。レベルと装備は初期に戻ってるけど。
俺は攻撃力と素早さをひたすら上げていたから、ステータスが偏っている。魔法は全く使えないし、防御力や体力も低い。
まあその分、剣だけで大抵のモンスターは倒せるようになったんだけど。
スキルは双剣と片手剣と隠密がMAXでナイフが少し……んっ、見覚えのないステータスがある『ステータス確認』なんだこれ?
名前から考えると今見てるやつかな。多分。
とりあえず、ゲームの中だと考えておこう。そうしないと、さっきの光景が説明できない。さて、どうしよう……ゲームの中だろうが、現実だろうが情報は必要だな。
他に人はいるのか?
モンスターもいるのか?
俺は果たして強くなっているのか?
知らなければならない事は多い。いろいろ考えたが答えは出ないし、とりあえず人がいる所を探そう、人が居れば色々聞けるはず……、言葉が通じないとかないことを祈ろう。
俺はそう思って歩き出した。
暫く歩くと草原から、道に出た。道は閑散としていて人が通る所に思えない。
俺は、人の気配を感じられず、不安になる。もし、誰もいなかったらどうしよう? この広い世界に一人だったら……。
考えれば考える程、怖くなってくる。俺はなるべく無心で歩き続ける。
「誰もいねーーー!」
どっちに行ったらいいかも分らないから、適当に歩いていたけど誰にも会わなかった。本当に人っ子一人いない。
「道があるから人はいるはずなんだけどな……」
俺はついつい独り言を零してしまう。今のところ、人どころか、生物にさえ出会っていない。すごく寂しい。
弱いモンスターでも出てきたら、自分の力を試しがしたかったんだけどな。まぁ、今まで結構歩いた割には、疲れてないし、身体能力なんかは上がってるんじゃないかな? 多分。
このまま誰にも会えないと俺、飢え死にするんじゃないだろうか? サバイバルの能力がある訳でもないから……。
町はないのか! 道の先には、あるはずなんだが?
どんどん不安になってくる。誰か、もしくは何か、出てこないかな?
俺はそんなことを考えながら、自然と少し急ぎ足になっていた。
段々と不安が増してきて、余裕がなくなる。俺は何時しか全力で走っていた。
「何だ!」
俺は走りながら誰かが叫ぶ声を聞いた。
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2012 1/27 加筆修正