第18話 町へ
俺は、ドラゴンの魔石を回収すると(魔石は真っ赤だった)、スンを連れて三人で出口を目指す。
一度通って、知っている道だったから、来た時よりも早く外に出られた。
「もう、真っ暗です……」
外に出ると、スンが少し不安そうに言う。
「そうだな、ここら辺で野宿しよう。ミルシア、野宿の準備をしよう。あっ、スンは休んでいていいぞ」
俺はスンが疲れているだろうと、気遣かって言う。
「ぜ、全然、大丈夫ですから、手伝いますよ!」
スンは焦った様に言う。
「そ、そうか。じゃあスンも野宿の準備を手伝ってくれ」
俺はどうしたのか、とミルシアと作業するスンを見ていたけど、スンは普通に準備を手伝っているから、何なのかは分からなかった。
野宿の準備が出来ると、ご飯を食べる。食べ物は他の人が持っていたらしく、スンは何も持っていなかった。だから俺達のを分けた。
スンは申し訳なさそうにしていた。全然遠慮しなくてもいいのに。
ご飯を食べ終わるともう寝る事になり、順番に見張りをする事になった。
俺はスンに休んでいてもいいと言ったのに、また自分もやると言っていたから三人で順番になった。スン、大丈夫なのかな? 無理しなくてもいいのに。
順番はミルシア、俺、スンの順になった。
俺とスンはミルシアに見張りを任せて眠る。俺が横になると、すぐにスンの寝息が聞こえて来る。よかった。ちゃんと眠れているみたいだ。
俺は安心すると共に、意識は闇に落ちた。
「ハヤト様、時間ですよ」
「ふぁ~、……了解」
早いな、全然寝た気がしない。実際三時間くらいしか寝てないんだけど……。
俺は隣で寝ているスンを起こさない様にして、ミルシアと交代する。
見張りをしながら、こっちを向いて寝ているスンの顔を眺める。
スンは多分仲間に見捨てられた、と思っているだろうな。実際そうなんだけど……、まぁ、あいつらも自分の事でいっぱいいっぱいだったんだろうけど……。
スンがショックを受けてなかたら、そして、傷付いてなければいいんだけど。心配だな。
そういえば、スンはこの前、冒険者になったばかりだと言ってたな。俺みたいなチートじゃないと、もうBランクになってる訳がないのに、何でダンジョンに居たんだろう?
ん~、俺は不思議に思い、また聞いてみようと思った。
俺の見張りの時間は、特に何も起きないまま交代となった。
俺は、スンと代わる為に起こしに行く。
「お~い、スン時間だぞ」
スンの肩を揺さぶりながら小声で呼び掛けるけど、なかなか起きない。
スンの可愛くて、あどけない寝顔を見ていると、なんだか、抱きしめたくなってきた。
いやっ、待て俺。早まるな。ここで抱きしめてしまったら何か大切な物を失う気がする。
「うにゃ」
だ、駄目だ、可愛い過ぎる。
俺がスンを抱きしめようと身をスンの上に乗り出した時、スンの目がパチッと開いた。
「な、何?」
スンはいきなり目の前にいた俺に、状況が分からず混乱しているみたいだ。
「………………」
俺は突然の事に固まってしまった。くそっ、もう少しだったのに!
「…………?」
ま、マズイ。何か言い訳を。
「あっ、こ、交代の時間だから起こそうとしていたんだ。スンがなかなか起きないから、困っていたんだよ」
俺は急いでスンの上から身体を除けながら、言い訳がましくまくし立てる。
「そ、そうなんですか?……すみません」
スンの疑わしげな視線が突き刺さる。
「い、いや大丈夫だ。起きてくれたから。じ、じゃあ見張り頼む」
俺はスンから逃げる様に横になり、眠る。
俺は朝日に起こされて、朝飯を食べる。
「スンは町に戻ったらどうするんだ?」
俺は何気なくスンに聞く。
「まだ、何も決めてないです」
「そういや、ギルドランクは何なんだ?」
「え~と、まだDです」
「Dなんですか? では、何でダンジョンに?」
「あっ、え……え~と」
スンはしまったという様に挙動不審になる。
「どうせ、他のやつに連れて来られたんだろう?」
俺はそんなスンが気の毒になり、助け舟を出してやる。
「え! あ、そうです」
スンはホッとした様に肯定する。俺はそんなスンにふと、提案する。
「なあ、もし良かったら俺達とパーティーを組まないか?」
「えっ、良いんですか?」
スンは心配そうに聞いてくる。
「全然大丈夫だぞ、な、ミルシア」
俺は、スンを安心させる為にミルシアに話を振る。
「ええ、ハヤト様がいいなら」
「ほ、本当ですか? ありがとうございます」
スンは嬉しそうに言う。よかった。喜んでくれて。
俺達は、荷物を纏めると街に向かう。
夕方になる前に町に着く事ができた。俺は歩きながらスンに聞く。
「スンは何かダンジョンで取って来た物はあるか?」
「はい、ダンジョンで倒した魔物の魔石はあたしが持っていたから、それがあります」
「じゃあ、換金しに行こうぜ」
「え、でも……」
「大丈夫だって、細かい事は気にすんな」
俺は、乗り気じゃないスンを連れギルドに向かう。
ギルドに入るといつもの様にミリアさんの所に行く。
「すみません、魔石を取って来たんですけど」
俺とスンは魔石を出す。
「こちらですね、少々調べておきますので明日また来てください」
「分りました。また来ます」
俺逹はミリアさんに魔石を預けると、ギルドを出る。
「スンはここに住んでるのか?」
外に出ると俺はスンに聞く。
「いえ、今は宿に泊まってます」
「ふん、そうか。じゃあ、明日また朝ここで」
「分りました」
「また、明日」
俺達はまた明日会う約束をすると、俺とミルシアはスンと分れて宿に向かった。
感想お待ちしています。
みなさんよいお年を~。
2012 2/16 加筆修正