第16話 ダンジョン探索
ダンジョンの入口に着いた時には、もう日が落ちていた。
「もう、暗くなったし今日は外で野宿にするか」
「はい、ちょうどあちらに良い開けた場所が有りました」
「じゃあそこに行こう」
そこで野宿する事にした。俺は今まで背負っていたでかいリュックを下ろすと、中からテントを出して張る。
テントなんて張った事がなかったから手間取り、ミルシアに馬鹿にされながらも張る。
木の枝を集めて来て焚火をする。食事は持ってきた食材を焚火で温めて食べた。思っていたよりは旨かった。
見張りを交代でする事にする。先にミルシアがする事になったから、俺はテントに入って横になった。眠気はすぐに襲ってきた。
「ハヤト様、起きて下さい」
ミルシアに起こされる。もう交代の時間か、早いな。全然寝た気がしない。
「ふぁ~、了解交代だな」
俺は欠伸をしながら起き上がり、ミルシアと見張りを交代する。
ミルシアは俺と代わると、すぐに寝たみたいだ。寝息が聞こえてくる。見張りって言っても何もする事がない。ハッキリ言って暇だな。
そういえばこの世界に来てからもう一週間ぐらいか? いや、まだかな? よく覚えてないな。
こっちでは、毎日の内容が濃すぎて、もう一ヶ月はいる気がしてくるから不思議だな。実際は一週間たったかどうかってところなのに。
地球の何のないダラダラした生活が懐かしいな。でも、こっちに来れてよかったのかな、俺にとったら。あのまま、あっちの世界でいたら、碌な大人に成らなかっただろうし、今の生活は大変だけど、俺は満足してるしな。
気が付くと、いつの間にか朝になっていた。ヤバッ、俺寝てた! 見張りの意味ないじゃん。急いで周りを見るとミルシアが、気持ち良さそうに寝ていた。
よかった。何もなかったみたいだな。それに寝ていたことも気付かれてなさそうだな。
俺はホッとしてミルシアを起こしに行く。
「ミルシア、朝だぞ~。起きないと目覚めのキスを――」
「必要ありません!」
「そ、そうか……」
ミルシアはガバッと起き、俺から離れる。そんなに嫌だったのか。へこむな。
飯を食ってすぐに、ダンジョンの洞窟に向かう。
ダンジョンの入口は、特にどうって事はない普通の洞窟みたいな感じだった。
「なあミルシアここで良いんだよな? めちゃくちゃ普通の洞窟だけど」
俺は不安になって聞く。
「ええ、ダンジョンと言っても、元は普通の洞窟なので仕方がないのでしょう」
中は意外と広く、5人くらい並べる幅に天井も結構高い。二、三メートルはあるんじゃないか。
暗いのを予想していたけど、壁や天井が薄く光っていて、案外明るい。
進んでいくと、すぐに別れ道が現れる。やっぱり中は入り組んだりしているのかな? ダンジョンというだけはあるな。迷いそうだ。
「なあ、どっちに行く?」
「どうしましょう? 私もどうすれば良いか分かりません」
「ん~、あれだ。ずっと同じ壁を伝って行くとかは?」
俺は迷路で使う方法を提案する。
「そうですね、悪くはないですね。ただ、時間が掛かるでしょうが」
「まあ、それしかないからしょうがないだろ。迷うのは嫌だし」
右の壁を伝って行く事にして、ずっと右側を進んで行く。すれと、すぐに別れ道にたどり着く。
やはり右に進む。
別れ道に着く。
右に進む。
別れ道。
右。
別――
「って、魔物はどうした! ダンジョンには沢山いるんじゃないのか!」
俺は肩透かしに会い、思わず叫んでしまった。
何でこんなに何も出ないんだ? ここがダンジョンじゃないのか、と心配になるだろう。
「静かにして下さい! 多分、他の冒険者が先に倒しているんでしょう」
ミルシアに睨また。ス、スミマセン。
「そうなのか? でも、その割に他の冒険者に会わないけど」
「このダンジョンが結構広いからでしょう。それに、たまたま私達と同じルートを先に進んでる人でもいるのでしょう」
「でも、今からルートを変えると迷うし、まあ楽だし、このまま行くか」
「そうですね」
その後も右側に沿って歩き続けると、前から猿みたいな魔物が出て来る。
「ミルシア、やっと出たぞ!」
魔物を見つけて、何故か嬉しくなるという矛盾。
「来ます。気を付けて下さい」
「えっ!?」
猿を見ると、杖の様な物を持っていた。
「キャキャキャキャー!」
猿が奇声を発すると、杖の先に火の玉が現れる。
「キー!」
杖が振られると人の頭ほどの火の玉が飛んで来る。
「うわっ!」
油断していた。まさか魔法を使うとは。避けきれないと思った瞬間、突然水の玉が飛んできて、火の玉と衝突する。
水が蒸発するような音が聞こえ、辺りが水蒸気で覆われる。
「ハヤト様! 大丈夫ですか?」
「ミルシア、ありがとう助かった!」
俺はミルシアに礼を言いながら、左の剣を抜く。俺は水蒸気の中に突っ込む。魔力を剣に込めると剣は火を纏う。俺は思い切って、魔物がいると思われる所に切り込む。
俺の右手には確かな手応えがあり、火に覆われる魔物。
火が消えると地面には魔石が残っていた。魔石は綺麗な緑色で透明だった。大きさは拳ほど。
魔石を回収してミルシアの所に行く。
「焦った、魔法を使える魔物がいたのか!」
「ええ、私も知りませんでした」
ミルシアも知らなかったのか。う~ん、魔法を使えるのは珍しいのかな?
とにもかくにも、次は先手を打たれない様に注意しよう。
その後も、右沿いに進んで行く。魔物は何体か出て来たけど、みんな単体ですぐに倒せた。
「疲れてきたな~」
「そうですね。もう結構な時間が経っていると思います」
ダンジョンの中にいると太陽がないから、時間の経過が分からなくなる。ほとんど、歩いてるだけなんだけど、すごく疲れる。
「そろそろ、何処かで休もうぜ」
「ええ、休める場所を探しましょう」
探すって言っても、あまり魔物がいないから何処でも変わらない気がするけど……。
少し進むと、ちょうどいい具合に開けた所に出た。
「よ~し、ここで休もう!」
俺とミルシアは座って、持ってきた食べ物を食べる。
俺は集めた魔石を取り出し眺める。
魔石の色は様々で、緑や青、赤、黄色などがあった。全て透明で大きなビー玉みたいだった。どうやら、魔物によって色が変わるみたいだ。
「なぁ、ミルシア。主って何処にいるんだろう?」
「私に聞かないで下さい。私も知りたいです」
「ん~、そうだよな。じゃあ――」
「キャァァァァァァー!」
「――えっ何だ?」
突然、洞窟の奥から悲鳴が聞こえてきた。
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2012 2/14 加筆修正