第15話 ダンジョンに行こう!
朝ご飯を食べていると、ニーナを見かけたから声を掛ける。
「ハヤトさん、どうしたんですか?」
ニーナが近くに来て聞いてきた。
「俺達、今日からダンジョンに行くから、何日か宿に戻って来ないと思うけど、よろしく!」
「えっ、もうダンジョンに行ける様になったんですか!?」
ニーナは驚いている。
「ああ、もうBランクになったんだ!」
「それはおめでとうございます! 待っていますから、無事に帰って来て下さいね」
恥ずかしそうに微笑んで言って、立ち去ってしまう。か、可愛いな。
俺はミルシアと、ダンジョンの詳しい事を聞く為に、ギルドに向かう。
いつもの様にミリアさんの所に、と思って受付を見るが、ミリアさんはいなかった。俺は若干寂しくなり、トボトボ受付に向かう。
「ハヤト様みっともないのでシャキッとして下さい」
ミルシアに後ろから罵倒される。うっ! やっぱり、俺の扱いが段々酷くなってる。
とりあえず、中年のおばさんのいる受付に行く。
「すみません、新しいダンジョンについて教えてもらえますか?」
「はい、ダンジョンですか? 失礼ですが、ギルドランクを確認さして貰っても良いですか?」
俺はポケットに入れていたギルドカードを取り出して渡す。俺が動きまくっているせいで、もう折れ目が付いてるギルドカードだ。
「はい、Bランクですね大丈夫です。それで、新しいダンジョンについてですか?」
俺は頷く。
そういえばミルシアって、こういう時静かにしているよな。最近のミルシアには喋らないか、俺に暴言を吐くの両極端しかないのか?
「新しいダンジョンはここから一日ぐらいの所にあります」
意味の無い俺の考えを無視して話しは進んでいく。
「ダンジョンには洞窟や森などが有りますが、新しく見つかったのは洞窟型で、今の所ほとんど攻略されていません。魔物の多さからしてある程度強い主が居ると思われます」
「その洞窟ってどれくらいの大きさなんですか?」
「ハッキリとは分かりませんが、恐らく主のいる一番奥まで普通に歩いて、一日は掛かると思います」
そうか、普通に歩いて一日か……。中々遠いな。
「えっ! 一日!?」
「そう、一日です」
俺の驚きは冷静に返される。
「一日って事は洞窟の中で野宿するんですか!? 危なくはないんですか?」
「え~、ダンジョンと言っても所構わず魔物が居る訳ではないので、魔物がほとんど居ない所もあるみたいです」
「そういう事か。そういえば、ダンジョンに行って何をしたら良いんですか?」
「ダンジョンの魔物は特殊で、倒すと魔石を残し消えます。その魔石を持って帰って来て下さい。ギルドの方で買い取らせてもらいます。もちろん一番の目的は主を倒す事ですから、主を倒すと莫大な報酬が出ます」
魔石を残して消えるって、まあ、いかにもゲームって感じだな。
「魔石? ダンジョンの魔物は普通の魔物と違うのですか?」
「いえ元は同じだと思われます。私達にも詳しくは分からないのですが、何故かダンジョンにいる魔物は倒すと、魔石を落として消えるみたいです」
「分かりました。とにかく魔物を狩りながら主の所を目指せば、いいんですね?」
「その通りです」
「ありがとうございます。よし、ミルシア行こうか」
「はい、行きましょう」
俺達は、町を出るとダンジョンがあると教えられた方向に、歩いて行く。
道なき草原の中を歩いていると、ゴブリンの小さい群を見つけた。俺はさっそく魔剣の威力を試そうと、剣を構える。
だが、ミルシアが先に魔法を発動させていた。ミルシアも杖の威力を試したかったのか! くそっ、先を越された。
ミルシアからゴブリンに向かって、小さい竜巻みたいなのが突き進んで行く。ゴブリン達は巻き込まれ吹き飛んでいく。すぐに全滅した。
「……すげぇ!」
「…………」
ミルシアも驚いているのか目を見開いている。うん、俺はすごいと言ったんだけど、実際はどんな魔法を使ったか分からないから、強くなっているのか分からなかったんだ。だけど、ミルシアの様子からいくと、ちゃんと強化されているみたいだ。
「なあ、俺も魔剣を試したいから次魔物が現れたら俺にやらせてくれ」
俺はミルシアに言う。持っている剣が悲しかった。
「……あ、すみません」
「で、どうなんだ? 俺はその魔法の元の威力を知らないから分からないんだけど」
一応、聞いておく。
「ええ、風の魔法だったのですが、嵐の魔法並の威力が出ていました」
「それは凄いな! 嵐の魔法を使った時が怖いな」
草原を歩き続けていると今度はシャドウウルフが何匹か現れた。
俺は左側に吊している赤い柄の剣を右手で抜き、右の青い剣を左手で抜く。二本の剣を構えてシャドウウルフに向かって走り出す。
一番近くにいる奴に右の剣で切り付ける。炎が出るか。
ズバッ!
綺麗な音と共に普通に斬れた。……あれっ? 魔剣じゃないの? 何も起きなかったよ。もしかして、あの王女に騙された!?
訳が分からないから、左の剣でも斬ってみる。こちらは水だ。
ズバッ!
さっきと変わらん! 何なんだ意味が分からないぞ!
「ハヤト様、多分魔力を込めないと発動しないのだと思います」
俺が混乱していると、ミルシアが教えてくれた。
あっ、魔力か。魔力を込めるっと、了解了解……って、どうするんだよ!?
「魔力を込めるってどうしたら良いんだ?」
俺は残っているシャドウウルフ達を警戒しながらミルシアに聞く。
「え~と、体の中にある力を集めて剣に注ぎ込む感じです」
え~、体にある力を集めるっと、よく分からないけど、とにかくやってみる。それを剣に注ぎ込む、っと。
すると、右の剣からは炎が立ち上がり、左の剣は水を纏う。
「おお! 出来た! すげぇ!」
俺が興奮してはしゃいでいると、シャドウウルフが迫って来る。
俺は右の炎を纏っている剣で切り付ける。シャドウウルフは斬られると、すぐに炎に包まれて燃える。
後に迫っているシャドウウルフを左の水を纏っている剣で切り付ける。ほとんど斬った感覚がなく斬れる。血もほとんど出ない。
シャドウウルフを全滅させても俺は、返り血をほとんど浴びていなかった。
「こりゃ凄いな」
俺はその威力と、使い勝手の良さに感動していた。
その後も何度か魔物を倒し、魔力の込め方をマスターした。
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2012 2/14 加筆修正