第14話 平和
ギルドで大金を貰った後、まだ昼だったけど、昨日は大変だったし、依頼とかは受けずに、ゆっくりする事にする。
さっき朝飯食ったばかりだけど、もう昼飯を食う事にする。店を探しながら町をうろついていたら、近くを歩いていた、五、六人の冒険者達の話声が聞こえてくる。
「新しく見つかったダンジョンに行こうぜ!」
「おう、この人数なら大丈夫だろう」
「ダンジョンでがっぽり儲けちまおうぜ!」
彼らは、ダンジョンに行くみたいだ。俺も明日行ってみるかなと、思って見ていると、彼らの中にスンを見つけた。小さいから気づかなかった。
仲間と上手いことやってるみたいだな。前に絡まれていたから心配してたけど、大丈夫そうだな。
「ハヤト様、どうしましたか?」
俺が急に立ち止まったから、ミルシアが不思議そうに聞いてくる。
「いや、何でもないよ」
俺はスンから目を離して歩き出す。
「そうだ、昼は何食べる? 思ってもいなかった収入があったから、少しぐらい高くてもいいぞ!」
「え~と、これと言って食べたい物は無いですが、高い店なら町の奥に有ります」
「なら、そこに行ってみるか?」
「そうしましょう」
歩いているとミルシアに、男から視線が送られているのに気付く。止めろ! ミルシアは俺のものだぞ。もう渡さないからな。
ミルシアは視線を気にしてり様子はなく、スタスタ歩いて行く。俺は周りの男達を睨みつけて威嚇し、ミルシアを追う。
町の奥には、高そうな店や、大きな家が多かった。知らなかったな。こんな所があったんだ。
ミルシアは、レンガ作りで、綺麗ないかにも高級そうな店の前で止まった。
「ここなんかどうでしょう?」
別に嫌な理由もなかったから頷いた。
中は広い割にテーブルは少なかった。一つ一つのテーブルの間がが広く取られているのだ。
ウェイトレスに案内されてテーブルに座る。俺は分からないから、ミルシアに合わせて、コースを頼む。注文を聞くとウェイトレスは下がった。
「明日、ダンジョンってのに、行ってみたいんだけど、いいか?」
「ええ、せっかくBランクになったのですから行きましょう」
「そういや、さっき新しいダンジョンが見つかった、とか言ってるのを聞いたけど、ダンジョンって結局の所、何なんだ?」
「ダンジョンですか?……そうですね、魔物が沢山いる洞窟や森ですかね」
魔物が沢山いる洞窟や森って言われても、定義が曖昧だ。
「洞窟や森に沢山魔物が居たらダンジョンになるのか?」
「いえ、正確にはダンジョンには一体の強力な主が居ます。主を中心に弱い魔物達が沢山集まって、ダンジョンになるのです」
「主ってのは、どれくらい強いんだ?」
「そうですね……最低でもオーガくらいかと、大抵は十人単位で挑みますから、ドラゴンとかですね」
「さ、最低でもオーガか……」
俺達が話をしている間に、料理が運ばれてくる。料理はフランス料理みたいな感じだった。高いだけあって、流石に美味しかった。ミルシアも幸せそうに食べている。
食べ終わると、大金が入った事だし、ミルシアの武器でも買うか、という事になって武器屋に向かった。俺は新しいのが手に入ったからな。
元々ミルシアは遠慮してナイフだけでいいと言っていたけど、魔法使いは、普通杖を持っているそうだ。
杖は中に埋め込まれた宝石の効果で、魔法の威力を上げたりできるみたいだ。
武器屋の中には、前来た時に居たドワーフのオッサンがいた。
「オッサン、また来たよ!」
「んっ? あんたは確か……双剣を買ったやつか」
「おお、覚えていてくれたんだ」
「ああ、双剣なんて珍しい物を買ったんだ、忘れられんわ」
やっぱり双剣って珍しいのか……。見ないなぁ、とは思っていたんだ。
「んっ、今日は女連れか?」
「そう、今日は彼女の武器を買いに来たんだ」
「そうか、客なら大歓迎だ。で、何を探しているんだ?」
「私は魔法使いなので杖をお願いします」
「ほう、杖か。今ちょうど良いのが入ったばかりだ。ちょっと値が張るが大丈夫か?」
「ああ、いいぜ」
ドンと来い。
オッサンは奥に引っ込んだと思ったら、すぐに戻って来た。手には、細い杖が握られている。
俺は杖と聞いて、仙人とかが持ってそうな長くてゴツいのを考えていたんだが、〇リー・ポ〇ターの杖みたいな、細くて短い杖だった。
持ち手の先には、綺麗な緑の宝石が埋まっていた。エメラルドだろうか?
「これには、翠玉が使われていて、特に風、嵐の威力を強める効果がある」
やっぱりエメラルドだ。
「風に嵐ならちょうど良いじゃん。ミルシアどうだ?」
俺は杖を振ったりしているミルシアに聞く。
「ええ、大きさも小さくて扱い易いですし、良いです」
「よし! で、いくらだ?」
「一万セールだ」
「買った!」
お金を払って店を出る。
ダンジョンに行くなら、野宿の準備も必要だと言うから、野宿の道具を買いに行く。
テントや食料など野宿に必要な物を買う。野宿に必要な物を揃えると、結構な荷物になった。
「なあミルシア、こんなに色々必要だったのか?」
「もちろんです。荷物はハヤト様が持ってくれますよね?」
笑顔で言われる。
何だかミルシアの俺の扱いが酷くなってる。まあ、持つけどね。あんな笑顔を向けられたら断れない。
ミルシアの武器や食事を合わせると今日は一万二千六百セール使った。
夕方まで町をぶらぶらして、宿に戻るとニーナがいた。
「ハヤトさん、ミルシアさん、昨日はありがとうございました」
「いや、ニーナはもう大丈夫なのか?」
「はい、もう大丈夫です。宿もあまり被害を受けてなかったので安心しました」
「それは、よかった」
俺たちはニーナと別れと、夜ご飯を食べて、明日に備えて早めに寝た。明日はダンジョンにチャレンジだ!
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2012 2/13 加筆修正