第13話 魔剣
朝起きると隣にミルシアが寝ていた。昨日はあの後何度もs、ごほっごほっ、結局、起きるのが遅くなってしまったな。
俺は、窓を開けて換気をする。もう高く上がっている太陽の光が入ってくる。
「ふぁ~、いい天気だな~」
さて、ミルシアを起こすとするか。俺は、ミルシアの寝ているベッドに近づいて、声を掛ける。
「お~いミルシア、朝だぞ~、起きろよ。あっ、もう昼か」
ん~、全く起きる気配なし。ミルシアの肩に手を伸ばし、揺さぶる。
「ミルシア~、早くおきろ~」
んっ、これでも起きないか、しょうがないから最後の手段といくか。
気持ち良さそうに寝ているミルシアの顔の近くに、俺の顔を持って行く。そのまま近づいて――
「う、う~ん、……ハヤト様、何をしているんですか?」
いい所でミルシアが目を覚ました。あ、ちゃんと、ハヤトって呼んでくれてるんだ、うれしいな。
「え~と、ミルシアがなかなか起きないから、目覚めのキスでも、っと思って……」
「…………」
ミルシアが無言で見てくる。嫌だったのかな?
昨日の事はなかった事になってたりするのか!?
「いや、何でもないです、すみません……」
俺がショックを受けていると唇に柔らかい感触が。
「ふ、ふぇ!?」
俺は思わず、変な声が出てしまった。
俺がキョトンとしていると、ミルシアは恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にしている。
「さ、さぁ、早くご飯を食べに行きましょう」
ミルシアは逃げる様に部屋から出て行く。くっ、可愛いやつだな~。
「ミルシア待てよ! もう朝飯の時間は過ぎてるぞ」
俺は急いで後を追いかける。
朝飯は、外でどこかの露店で買って食べることにした。宿の朝食の時間は既に過ぎていた。
町は、昨日の傷跡がまだ残っていたけど、店は大半が元気にやっていた。露店もいくつか出ていて、そのうちの一つから匂ってくる肉のいい香に、俺は誘われ、近づいて行く。
「ミルシア、あれでいいか?」
俺は露店を指差しながらミルシアに聞く。
「ええ、いいですよ」
俺は露店のおっちゃんに話し掛ける。
「すみませ~ん、これ二人分下さい!」
「あいよ! 少々お待ち」
おっちゃんは元気にそう言って、鉄板の上のお好み焼きっぽいのを、皿に盛り付けてくれる。
「はい! お待ちどう、十セールだよ」
俺は十セールを渡してお好み焼きっぽいのを受け取る。
一つをミルシアに渡して食べてみると、広島風のお好み焼きみたいな感じだった。
「ん~、美味い」
「ええ、美味しいです」
「そういえば、昨日の依頼の報酬をもらってないな、今からでも貰えるのかな?」
「ん~、わかりませんね、とりあえずギルドに行ってみるべきですね」
俺達は食べ終わると、ギルドに向かう事にした。
そういえば俺の剣、両方共折れたんだったな、また買わなきゃな。今度はもっと丈夫なやつを選ぼう、少々高くとも。
ギルドに着くと昨日は沢山いた人は、すっかりいなくなって、普段通りのギルドだった。
中に入って受付に向かっていると、横から声が聞こえてきた。
「ハヤトさん!」
声の方を見ると、ミリアさんが手を振っていた。俺達はミリアさんの所に行く。
そこは、机と椅子が置いてある休憩スペースみたいな所だった。
「ちょうどよかった、ハヤトさん貴方を探してたんです」
「俺を?」
何の用だろう? ミリアさんに限って、デートのお誘いなんかはありえないし。
「ええ、昨日あの後、エルメナ王女が貴方にこれを渡して欲しいと」
そう言ってミリアさんは、筒状の袋を渡してくる。
「これをですか? エルメナ姫が、何だろう?」
俺は、何だか分からないまま袋を開ける。すると、中から剣が二本出てきた。
「これは!」
「あの時、壊れたのを気にしていたんでしょうね」
二本の剣は片方は柄が青で、もう一方は柄が赤かった。鞘には綺麗な装飾がされていて、普通の剣とは違う、不思議な力が感じられた。
「なあミルシア、この剣って――」
「はい、恐らく魔剣でしょう。魔力が感じられます。赤い方は火、青は水だと思います」
マジ! 魔剣って高いんじゃないの!? いや、分かんないけど……。
「こんな物を貰っていいのかな? いい物なんじゃないのか?」
「ハヤトさんは、王女を助けたのでしょう、それくらい普通ですよ」
俺が遠慮していると、ミリアさんが言ってくる。まあ、新しいのを買うつもりだったから、ありがたく貰っておこう。魔剣か嬉しいな。
「それから、ハヤトさんはギルドランクBになります」
「「え!」」
ミルシアと被った。
「何でもうBなんですか? まだ依頼も少ししか受けてないのに」
「それは、昨日ハヤトさんがオーガを倒したと聞いた為です。エルメナ姫のお墨付きですし、オーガは相当強いのでBランクで問題無いと、判断しました」
ああ、あのオーガか、たしかに強かった。でも、急すぎないか?
「それから、オーガの討伐の報酬の十万セールです」
「「!!!」」
驚き過ぎて声が出なかった。てか、俺この頃驚いてばっかりだ。
「じゅ、十万セールですか?」
「はい、オーガですから」
マジっすか。オーガですからって言われても分からない。オーガ、ハンパないな、俺はミリアさんから十万セールを受け取る。
「ランクBになりましたら、ダンジョンに入る事が出来ます」
俺の混乱を無視して話は進んで行く。待って下さいよ、ミリアさん!
「だ、ダンジョンですか?」
「ええ、魔物が沢山いる洞窟などのことです。強い魔物も多いので、ランクC以下の冒険者には遠慮してもらっています」
「わ、分かりました。また、行ってみたいと思います」
俺達は、貰ったお金の多さに呆然としながらギルドを出た。最後の方の話は余り頭に入っていなかった。
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2012 2/13 加筆修正