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ハーレム目指して何が悪い  作者: かいむ
第1章 異世界と冒険者
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第12話 ミルシア

今回はほとんどミルシア目線です。

 夜ご飯は本当にご馳走で、すごくおいしかった。周りでは冒険者達が祝いだ、と騒いでいた。だが、俺は犠牲になった人達のことを思うと、とても祝う気にはなれなかった。だから、早めに食堂を出た。当然の様にミルシアも着いてくる。


 部屋に戻りベッドに座って、今日の事を考えていると、ミルシアが俺の前に座って話しがありますと言ってきた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 私の家は貧乏だった。いや、それ自体はたいした事はなかった。


 エルフなのにエルフの村で暮らさないで、人間の町で暮らしていたからだ。人間の町では、エルフだと言うだけで差別を受けた。


 親がやっていた服屋も、エルフがやってる店だといって買ってくれる人は少なかった。それが、貧乏に拍車を掛けた。




 私は二十になる前に奴隷商に売られた。とうとう家が限界になったのだ。


 それまでは私が冒険者をしていたけれども、私がエルフだから、パーティーを組んでくれる人もいなかった。それに、魔法しか使えない私は、一人ではたいした依頼を受けられる訳もなかった。依頼を受けても、エルフだから断られる事もよくあった。だから大して家の足しにはならなかった。


 そんな中、家は借金が増えていき、家には借金取りが毎日の様に来る様になった。


 家は妹と弟の泣き声と父親の怒鳴り声が鳴り止まなくなった。私はそんな家が嫌になった。そして、両親に自分を奴隷商に売る様に言った。私は逃げてしまおうかとも、考えたが、妹と弟の事を考えるとそれは出来なかった。


 周りから見ると、私の両親が私を売った様に見えるが、私が両親を見限ったのだ。この家にいるのが、嫌になったのだ。私を売ったお金で、借金を返せてもこの生活を続けていたら、すぐにまた、借金が出来るだろう。私はその事を分かっていながら、結局妹と弟を見捨てたのだ。


 奴隷商では、腕輪を付けられて言うことを無理矢理聞かされた。


 私は、いくら自分で奴隷になったと言っても、両親を恨んだ。毎日人間を恨んだ、私達エルフを差別した人間を。家族を恨んだ、無理に人間の町で暮らそうとした親を。何よりそんな運命を恨んだ。


 私は、奴隷商の人間に反抗的だった。そのせいか、なかなか売られなかった。


 でも、私は売られないならその方が良いと思った。どうせ買われても慰み者として男に玩ばれるだけだから。


 でも、そんな願いも叶わない。




 ある日、ある部屋に連れていかれた。


「こ、これは……」


 私が入ると中には、黒目黒髪の少年が座っていた。多分私より、年下だろう。


 私はこんな人間に買われるのか、と絶望した。それは、脂ぎった中年に買われるよりはいいが、嫌な事には変わりはない。


「いかがですか。なかなかでしょう。ちなみに処女ですよ」


「い、いくらなんですか?」


「ハヤト様には恩もありますし……二万セールでどうでしょう?」


「買います!!」


 私が絶望していると、いつの間にか買われる事になっていた。


「あ、ありがとうごさいます。では契約をしますから立って頂けますか」


 私は少年の前まで歩かされる。その少年が私の腕輪に手を当てると奴隷商人が呪文を唱える。


 私の体中に虫がうごめく様な感覚がはしる。気持ち悪い。


「これで、ハヤト様が主人になります」


「奴隷を解放したい時は、腕輪に触りながら呪文を唱える事で、出来ます。また、奴隷には住む所と必要な食事を与える義務があります」


 奴隷商が説明している。


「えっと、俺はハヤト。これからよろしく」


 説明が終わると、少年が話し掛けてくる。


「…………」


 私は当然無視する。


「え~と、君の名前は?」


 私のご主人様は奴隷に慣れてないのか、命令かどうか分からない言葉で聞いてくる。だから私は無理矢理答えさせられる事はなかった。


「……それは命令ですか?」


「いや命令じゃないけど、教えて欲しいなと」


 意味が分からない。言わないとずっと待ってそうだったから仕方なく答える。どうせ、命令されれば逆らえないのだから。


「私はミルシアです」


 私が答えた事に満足したのか、歩き出した少年に付いて行く。


「ミルシアって、魔法を使えるんだよね?」


「はい、使えます」


 私は事務的に答える。


「何か武器って要るの?」


「ナイフがあれば」


 本当は杖があれば一番いいが、奴隷に杖は無理、と諦め、ナイフと言っておく。


「防具は何か着けるの?」


「必要ありません」


 からかっているのだろうか、防具を着けている魔法使いが一体何処にいるのか。


「じゃあ、服は要るよね」


「要ります」


 要らない訳がなかった。本当にからかわれているのだろうか?


 質問には、全て最低限の言葉で答える。私が言った武器や服をそのまま買い与えられる。もしかしたらバカなんじゃないかと思った。杖も言っておけば買ってくれたかもしれない。残念だ。


 ギルドにも登録させられ、一応戦わすつもりみたいだ。よかった、魔物を倒す事で気分転換ができる。




「あ~、もう寝るか?」


 私は宿に連れて行かれて夜になり、ギルドの説明を終えたご主人様が、私に言ってくる。


 そのまま、自分のベッドに入って寝ようとしている。


「何もしないの……?」


 私は思わず聞いていた。


「えっ」


 私は何を余計な事を言っているんだろう。わざわざ自分から言わなくてもよかったのに……。


「そりゃ、したいけど。ミルシアが嫌そうだったから」


 意味が分からない。何を言っているんだこの人は。奴隷の意思を気にするなんて、命令すれば聞かなければならないのに。


「……なんで?」


 私は混乱していた。


「えっ」


 ご主人様は何か言っているが、私は逃げる様にベッドに入った。


 少しすると、ご主人様の寝息が聞こえてきた。本当に何もしてこなかった。奴隷として売られる時から、自分の純潔を好きでもない奴に奪われる事を、覚悟していたのに。


 私はご主人様が何を考えているのか分からない。でも、私は安心してしまった。いい人に買われたんだと思ってしまった。人間を嫌っていたのに、恨んでいたのに……。


 私はちゃんとご主人様の奴隷らしくしようと思った。




 ご主人様が、自分は異世界から来たと言われた。


 私は意味が分からなかった。だけど、ご主人様のことを信じると決めていた。奴隷の私に一人の人間として接してくれた、そんなご主人様だから。




 町に戻ると町が魔物に襲われていた。


 私は、ご主人様が走って行くのに付いて行くだけで精一杯だった。


 ニーナさんを助けて、騒ぎの中心に向かうと三メートルを遥かに超えるオーガがいた。私は、見た瞬間思考が固まった。


 私はただ、ご主人様がオーガの前に出て行く時も見ている事しかできなかった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「私はその時、ご主人様が遠くに行ってしまうと思いました。私にはご主人様しかいません。そのご主人様に置いていかれて、捨てられるかもしれないと思うと……」


 ミルシアは寂しそうに言う。俺はそんなミルシアを見て守ってやりたくなる。


「そんなことは無いよ。ミルシアは十分上手くやってくれているよ。戦闘以外でも助かってるよ。だからそんな事、心配しなくてもいいよ」


「ご主じ、……ハヤト様」


 ミルシアがやっとハヤト様と呼んでくれた。俺は思わずミルシアを抱き寄せる。


「これからもよろしく頼むな、ミルシア」


「私こそ、よろしくお願いします。ハヤト様」


 ミルシアはギュッと抱きついてくる。俺とミルシアはそのままベッドに倒れ込む。


 俺とミルシアの長い夜が始まった。


ご感想お待ちしてます。


2012 2/11 加筆修正

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