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ハーレム目指して何が悪い  作者: かいむ
第1章 異世界と冒険者
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第11話 王女

「アンタ何者なの?」


 目の前の赤マントを纏った金髪の少女は、いきなり何者か聞いてきた。まさか、異世界から来たと気づかれたか? いやさすがにそれは無いだろうと、自分で否定する。


「何者って、ただの冒険者のハヤトって言います」


 とりあえず、無難な自己紹介をする。すると、突然目の前が光ったと思ったら、俺の足元の地面から煙が出ている。


「うわっ!」


 びっくりするな! さては、さっきの魔物に止めをさしたのは彼女か!

 

「って、急に何すんだ!」


 当たったらどうするんだ。危ないだろう。


「ふざけないで。Aランクの冒険者パーティーでも倒すのが難しいオーガを、たった一人で倒す人がただの冒険者の訳がないでしょう!」


 あのでかい魔物はオーガだったのか。


「いや、一人って、とどめは君が刺したんじゃないのか?」


「そうかもしれないけど、剣が壊れなければあのまま倒せたんじゃないの!」


 ん~、多分倒せただろうね。っていうか剣、両方とも壊れてしまったな。命が短かったなあのミスリルの剣……。また買わなきゃならないのか。


「い、いや、たまたまですよ」


 マズイな、怪しまれている。


「ご主人様は、田舎から出てきたばかりで自分の凄さが分かってないのです。ただ、ちょっとおかしいのです」


 俺がどうしようかと考えていると、ミルシアが助け舟を出してくれた。おいっ! おかしいって……。


「えっ、あ、アンタは何よ?」


「私はその方のメイドです」


 メ、メイド!? ま、まあ、いいか、実際そんな感じだし……。


「そ、そう、こいつは俺のメイドのミルシア」


「……本当なの?」


 怪しまれてるよ。普通メイドなんていないよな……。


「まあ、いいわ。改めてお礼を言っておくわ。助けてくれてありがとう。アタシはアースファルト王国第二王女エルメナ・アースファルトよ」


 えっ!? いいのかよ! それに、聞き間違いかな、王女って聞こえた気がしたんだけれど……。


「お、王女?」


 ミルシアも王女って聞こえたみたいだな。声を失っている。ってか、こんな言葉使いの荒い王女っているのか?


「え~と、王女様は何でこんな所にいらっしゃるのですかね?」


 とりあえず、慣れない敬語で話す。


「んっ! その話し方止めてくれない? さっきまでの話し方でいいから。そういう堅苦しいの苦手なのよ」


 本当にそれでいいのか王女様……。


「アタシが、たまたまこの町の近くいた時に、この町が魔物に襲われているって知らされたから、アタシの部隊を率いて魔物退治に来たって訳よ」


「周りで倒れているやつとか、向こうで魔物と戦っているのは、エルメナ姫の率いる部隊のメンバーと言う訳なんだな?」


「ええ、そうよ。それから、別にアタシのことはエルメナでいいわよ」


 いいのか? 一応、王女だろう。でも本人に言われたら仕方がないな。


「分かったよ、エルメナ。とりあえず、もう近くに魔物はいなさそうだから、ギルドに戻ろう」


「……ほ、本当に呼ぶなんて…………」


 俺が言うと、エルメナは俯いて何か言っているが、何を言っているか聞こえない。


 俺は、未だ呆然としているミルシアを正気に戻す。


「ミルシア、とりあえずギルドに戻るぞ!」


「はっ! 王女様って言うのは?」


 話しに付いて来てなかったのか。


「いいから、ギルドに行くぞ」


 ギルドに向かいながらミルシアに事情を話してやる。そういや周りの兵達、置いてきてよかったのかな?




 ギルドに戻るとさっきより人が減っていた。魔物も殆ど見なかったし、皆自分の家に戻ったのだろう。


 俺は中に入ると、ミリアさんを探す。


「……いないな」


 見当たらなかったから近くにいた、ギルドの職員っぽい人に今の状態を聞く。


「町に入っていた魔物は、王国の兵と冒険者のおかげで全て倒されました。今は、怪我人の治療と町の修復を急いでいます」


「ありがとう」


 俺が礼を言うと何処へ急ぎ足で去って行った。


「もう、魔物達は全滅したみたいだな」


「そうみたいね、もっと早く来れていたら良かったんだけど……」


「いや、来てくれただけで十分だろ」


「そうです、ここの冒険者だけだったらもっと時間が掛かったはずですし、被害も増えていたでしょう」


 俺が否定するとミルシアも続いた。俺は、ふと浮かんだ疑問を投げかける。


「なあ、魔物ってこんなに群れて、町を襲ったりする物なのか?」


「いえ、私は聞いた事がありません」


 ミルシアにも何故かは分からないみたいだ。


「多分、最近魔物が増えてきているのが原因じゃないかしら。アタシも増えた魔物が町を襲わない様にこのあたりに来ていた訳だし」


「じゃあ、他の町でもこんな事があったのか?」


「いえ、こんなに大規模なのは初めてよ。他は魔物が何匹か町に紛れこんだって感じだったのに」


「じゃあ、一体何で?」


「今回は、あのオーガに付いて他の魔物も町まで来たみたいね。オーガなんかの強い魔物は、普通自分の縄張りから滅多に出で来ないんだけどね」


 エルメナは困った様に言う。


「そういえば、魔物が最近増えているって、どういう事なんですか?」


 そう、そこが問題だ。


「噂だけれど、神聖ミルバル国が異世界から勇者を呼んだらしいわ。それが関係しているみたいなのよ。召喚自体は失敗したみたいだけれど」


「へっ!?」


「はい?」


 俺とミルシアから変な声が出た。


「どうしたの?」


 エルメナが何事かと聞いている。えっ! その勇者ってもしかして、俺じゃね!? 異世界から呼んだとか言っていたし……いやっ! まだ断定するのは早い。


「そ、その召喚っていつ行われたか知ってるか?」


「アタシも詳しいことは知らないけど、魔物が増え始めたのが一ヶ月ぐらい前だから、そのぐらいじゃないの?」


 俺が来たのは四日前だから違うのか? いや、エルメナも詳しいことは知らないって言ってるいし、まだ分からないな。


「なぁ、エルメナ、その事について何か分かったら知らせて貰えないか?」


「一国の王女様がご主人様みたいな人の為に、わざわざ動く訳がないでしょう」


 ミルシアがバカにした様に言う。分かっているが一応だよ、一応! これは是非とも知りたい情報なんだよ!


「いいわよ」


「そうだよな、いや分かってたんだけど、やっぱりダメだよ――えっ、いいの!?」


「アタシもこの件には興味があったの。何か分かったらアンタにも教えてあげるわ。アンタ達はまだこの町に居るんでしょう、何か分かったらあたしの部下で知らせるわ」


「本当か!? ありがとうエルメナ。それから、アンタっての止めてくれないか、俺の事はハヤトでいいぞ」


「うっ、え~と、分かったわよ……は、は、ハヤト」


 エルメナは顔を真っ赤にして上目遣いで言う。な、なんだ、俺は何を生み出してしまったんだ。この可愛さは反則だ!


「じ、じゃあ、あたしは部下を回収しないといけないから」


 俺が一人悶えていると、エルメナは去ろうとしていた。


「ああ、分かった。いろいろありがとうな」


「お気をつけて」


 俺とミルシアが言うと、エルメナは逃げる様に去って行った。




 俺がエルメナが去ってどうしようかと考えていると、声を掛けられた。


「あっ!ハヤトさん、ミルシアさん」


 ミリアさんが小走りで近寄ってくる。


「ああ、ちょうどよかった。ニーナは大丈夫ですか?」


「はい、今奥の部屋で休んで貰っています」


 魔物に襲われて、ショックを受けてなければいいな。俺は、もう慣れてしまったのかな? 何だかもう昔の自分に戻れない気がする、まぁ、元の世界には戻る気は無いから、いいんだけど……。


「今からニーナに会えたりしますか?」


「ええ、大丈夫ですよ。ちょうどハヤトさんにニーナさんを、送ってもらおうと思っていましたから」


 ミリアさんはギルドの奥に入って行く。ギルドの奥には入ったことがなかったけど、廊下の左右に部屋があって、奥行きも結構あり思っていたより広い。


 ミリアさんはその部屋の一つに入って行く。俺とミルシアも後から付いて入る。


 部屋は白いベッドが置いてあるだけの簡素な作りで、病院を思い出させた。ベッドの一つにニーナは腰掛けていた。


「ニーナさん、もう落ち着きましたか?」


 ミリアさんが声を掛ける。


「あぁ、ミリアさん、大丈夫ですよ。」


 そう言ってこっちを見て俺達に気づく。


「ニーナ、大丈夫だったか?」


「あっ! ……は、ハヤトさん、大丈夫ですよ」


 ニーナは顔を俯けて言う。


「本当に大丈夫なのか?」


 俯いているから大丈夫じゃないんじゃないか、と思いニーナの顔を覗き込もうとすると、突然、後頭部に衝撃が!


 俺はしゃがもうとしていたから、耐え切れずに床にキスしてしまった。


「う゛っ……何すんだ!」


 後ろを振り向くと、腕を振り下ろした恰好のミルシアが佇んでいた。


「今のは、女心を理解していないご主人様が悪いです」


 何だそりゃ?


「そうですよ、ハヤトさん。大丈夫と言ったら大丈夫なのですよ」


 ミリアさんまで言ってくる。完全に俺が悪者か……。まぁニーナが大丈夫ならいいんだけど。


「えっと……何かゴメンな、ニーナ」


「ええ、大丈夫ですよ」


 あははは、と笑いながら言うニーナ。大丈夫ならいいか。


「ニーナさん、すぐ近くですけれどハヤトさん達に宿まで送って貰おうと思っています」


「そんな、別に一人で帰れたのに」


「いやいや、俺達もニーナの宿に泊まっているし、ニーナの事も心配だったから」


「あ、ありがとうございます」


 ニーナは顔を真っ赤にしていた。そんなに真っ赤にされると俺も恥ずかしいんだけど。俺達が二人でモジモジしていると、ミルシアが話しを進める。


「ニーナさん、早く宿に戻りましょう」


「は、はい、行きましょう」


「そうだな、もう暗くなり始めてるし、早く帰った方がいいな」


 ミリアさんは他にも用があると言って、他の部屋に行ってしまった。


 俺は、二人を連れてギルドを出る。ギルドの前にある宿は、あんまり魔物の被害を受けていない様だった。


 宿に入ると、シミルさんがニーナに駆け寄って来る。


「ニーナ! 何処行ってたの、心配したんだよ!」


「ごめんなさい。ハヤトさんに助けてもらったの」


 その言葉にシミルさんが俺の方を見る。


「迷惑をかけて済まないね。ありがとう」


 そう言って頭を下げてくる。


「いえ、とにかく無事でよかったです」


「今日の夜ご飯は豪華だよ、町を守ってくれた冒険者達にご馳走をってな」


「それは、楽しみですね」


「私たちはこれで、さぁ、ニーナ行くよ!」


 ニーナはシミルさんに引きずられて行った。


感想などがありましたらどんどんお寄せください。


2012 2/11 加筆修正

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