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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第89話「核心に触れる」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。



最終判断者さいしゅうはんだんしゃ

大手企業・メディア・広告を横断する意思決定の中核にいる人物。

七年前の神崎のスキャンダルにも関与していたとされ、

今回、音声や記録によってその関与が可視化される。

当初は「組織の一部」として責任を曖昧にするが、、、



観客かんきゃく

SNSのユーザー、視聴者、一般の人々。

当初は消費者として情報を受け取る存在だったが、

神崎の言葉によって「選ぶ側」へと引き上げられる。

本作において、最終的に“物語の意味を決定する存在”。

六本木のオフィスに、静寂が落ちていた。


誰も席を立たない。

誰も軽口を叩かない。


 


「城戸正宗」


 


ホワイトボードに書かれたその名前は、

相良のときとは明らかに違う重さを持っていた。


 


 


真壁が言う。


「これは…引き返せないですね」


 


神崎は、キーボードの前に座ったまま答える。


 


「とっくに引き返せない」


 


 


スタッフの一人が言う。


 


「相良と違って、城戸は“触れた瞬間に終わる”可能性あります」


 


 


神崎は、画面を見つめたまま言った。


 


「だから今触る」


 


 


 


投稿画面が開かれている。


 


 


一人目のときと同じ構成。


 


 


「事実」

「時系列」

「関係性」


 


 


ただし――


 


 


一つだけ違う。


 


 


“緊張感”。


 


 


 


神崎の指が、ゆっくりと動く。


 


 


「本件において、意思決定に関与した可能性がある人物として」


 


 


一行ずつ、慎重に積み上げていく。


 


 


断定はしない。

だが逃げない。


 


 


真壁が言う。


 


「ここまでは問題ないです」


 


 


神崎は頷く。


 


 


「問題はここからだな」


 


 


 


最後の一行。


 


 


名前。


 


 


 


空気が張り詰める。


 


 


 


神崎は、ほんの一瞬だけ目を閉じた。


 


 


 


七年前。


 


 


見えなかったもの。


 


 


見せられなかったもの。


 


 


 


今回は違う。


 


 


 


神崎は、ゆっくりと打ち込む。


 


 


 


「城戸正宗」


 


 


 


 


送信。


 


 


 


 


数秒。


 


 


 


何も起きない。


 


 


 


そして――


 


 


 


一気に、流れ始める。


 


 


 


「え?」

「城戸ってあの城戸?」

「さすがに飛躍じゃない?」

「でも相良と繋がってるならあり得る」

「これはヤバいだろ」


 


 


 


 


六本木。


 


真壁が、静かに言う。


 


 


 


「相良のときと違いますね」


 


 


 


神崎は頷く。


 


 


 


「層が違う」


 


 


 


 


赤坂。


 


相良宗一は、その投稿を見ていた。


 


 


 


数秒、無言。


 


 


 


そして――


 


 


 


小さく笑う。


 


 


 


「行ったか」


 


 


 


 


だが、その目は鋭かった。


 


 


 


 


有楽町。


 


城戸正宗のスマートフォンが震える。


 


 


 


通知。


 


 


 


自分の名前。


 


 


 


城戸は、ゆっくりと画面を開いた。


 


 


 


内容を読む。


 


 


 


一行ずつ。


 


 


 


最後まで。


 


 


 


そして――


 


 


 


何も言わない。


 


 


 


スタッフが、恐る恐る聞く。


 


 


 


「…対応は?」


 


 


 


城戸は、しばらく沈黙した。


 


 


 


その沈黙が、長い。


 


 


 


そして、口を開く。


 


 


 


「何もしません」


 


 


 


 


その答えに、部屋の空気が張る。


 


 


 


スタッフが言う。


 


 


 


「しかし…」


 


 


 


城戸は、静かに続けた。


 


 


 


「ここで反応したら」


 


 


 


少し間を置く。


 


 


 


「認めることになる」


 


 


 


 


その判断は、冷静だった。


 


 


 


 


六本木。


 


神崎は、画面を見続けていた。


 


 


 


反応は荒れている。


 


 


 


だが――


 


 


 


止まらない。


 


 


 


 


真壁が言う。


 


 


 


「どう見ます?」


 


 


 


神崎は答える。


 


 


 


「効いてるな」


 


 


 


 


その一言に、確信があった。


 


 


 


 


ホワイトボード。


 


 


「名前」

「一人目」

「反応」

「二人目」


 


 


その下に、新しく書く。


 


 


 


「沈黙」


 


 


 


 


真壁が言う。


 


 


 


「…一番怖いやつですね」


 


 


 


神崎は、ゆっくりと頷いた。


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 


その夜。


 


 


 


核心に触れたことで――


 


 


 


構造は、初めて“無言”になった。

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