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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第85話「名前の前夜」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。



最終判断者さいしゅうはんだんしゃ

大手企業・メディア・広告を横断する意思決定の中核にいる人物。

七年前の神崎のスキャンダルにも関与していたとされ、

今回、音声や記録によってその関与が可視化される。

当初は「組織の一部」として責任を曖昧にするが、、、



観客かんきゃく

SNSのユーザー、視聴者、一般の人々。

当初は消費者として情報を受け取る存在だったが、

神崎の言葉によって「選ぶ側」へと引き上げられる。

本作において、最終的に“物語の意味を決定する存在”。

“名前”。


ホワイトボードに書かれたその二文字が、部屋の空気を変えていた。


これまで神崎たちは、構造を揺らしてきた。

圧力を可視化し、違和感を浸透させ、連鎖を生み出した。


だが――


名前は違う。


 


それは、線を越える行為だ。


 


六本木のオフィス。


誰も軽く口を開かない。


 


真壁が静かに言う。


「出すなら、覚悟が必要です」


 


神崎は頷く。


「分かってる」


 


 


スタッフの一人が言う。


「間違えたら、終わりますよ」


 


その言葉に、誰も否定しない。


 


神崎は、ゆっくりと答えた。


 


「間違えなくても、終わる可能性はある」


 


 


その通りだった。


 


名前は、事実よりも強く反応を生む。


 


 


 


赤坂。


 


相良宗一は、報告を受けていた。


 


 


「“名前”に触れる可能性があります」


 


 


相良は、少しだけ笑う。


 


 


「やっと来たか」


 


 


グラスを置く。


 


 


「そこから先は、別のゲームだ」


 


 


 


有楽町。


 


城戸正宗も、同じ情報を受け取る。


 


 


「次は、個人に入る可能性があります」


 


 


城戸は、静かに目を閉じた。


 


 


「そうでしょうね」


 


 


 


少し間を置く。


 


 


「一番危険な段階です」


 


 


 


六本木。


 


神崎は、一枚の資料を見ていた。


 


 


断片的な証言。

資金の流れ。

意思決定のタイミング。


 


 


まだ、決定打ではない。


 


 


だが――


 


 


繋がっている。


 


 


 


真壁が言う。


 


「確定とは言えません」


 


 


神崎は頷く。


 


「言えないな」


 


 


 


スタッフが言う。


 


「じゃあ、出さない方が…」


 


 


その言葉は、自然だった。


 


 


 


神崎は、少しだけ考えた。


 


 


 


そして言う。


 


 


 


「確定してから出したら、遅い」


 


 


 


その一言で、全員が黙る。


 


 


 


神崎は続ける。


 


 


 


「今出す意味がある」


 


 


 


「動かすために」


 


 


 


 


真壁が、静かに息を吐いた。


 


 


 


「…ギリギリですね」


 


 


 


神崎は、わずかに笑う。


 


 


 


「いつもだろ」


 


 


 


 


赤坂。


 


相良は、スマートフォンを見ながら呟いた。


 


 


 


「出してみろ」


 


 


 


 


有楽町。


 


城戸は、静かに言った。


 


 


 


「どう出すか、ですね」


 


 


 


 


六本木。


 


神崎は、キーボードの前に座った。


 


 


 


投稿画面。


 


 


 


指が、止まる。


 


 


 


 


七年前。


 


 


名前は、勝手に出された。


 


 


歪められた形で。


 


 


一方的に。


 


 


 


今回は違う。


 


 


 


自分で出す。


 


 


 


その重さは、理解している。


 


 


 


神崎は、小さく呟いた。


 


 


 


「選ぶのは、こっちだ」


 


 


 


 


そして、打ち始める。


 


 


 


最初の一行。


 


 


 


「この件に関わる人物について」


 


 


 


 


その夜。


 


 


 


物語は――


 


 


 


ついに、“個”へと踏み込もうとしていた。

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