第84話「揺れる上流」
『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧
■神崎 修司
本作の主人公。
元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。
現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。
芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、
メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。
■真壁 葵
パパラッチ・パパラッチの調査責任者。
元新聞記者。
報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。
理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。
神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。
■佐伯 圭一
神崎の元マネージャー。
神崎が新人だった頃から担当していた人物。
しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。
神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。
■黒川 真也
週刊誌記者。
七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。
仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。
神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。
■相良 宗一
芸能界の大物プロデューサー。
テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。
神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。
■城戸 正宗
広告業界の伝説的存在。
日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。
テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。
■有里
神崎の元恋人。
七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。
現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、
神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。
■最終判断者
大手企業・メディア・広告を横断する意思決定の中核にいる人物。
七年前の神崎のスキャンダルにも関与していたとされ、
今回、音声や記録によってその関与が可視化される。
当初は「組織の一部」として責任を曖昧にするが、、、
■観客
SNSのユーザー、視聴者、一般の人々。
当初は消費者として情報を受け取る存在だったが、
神崎の言葉によって「選ぶ側」へと引き上げられる。
本作において、最終的に“物語の意味を決定する存在”。
違和感は、静かに浸透していった。
断定ではない。
証明でもない。
だが、確実に“つながり”を感じさせる。
六本木のオフィス。
モニターには、相変わらず曖昧な言葉が並ぶ。
「偶然にしては重なりすぎてる」
「でも証拠はないよね」
「裏で調整してる感じはする」
「考えすぎかもしれないけど、気持ち悪い」
真壁が言う。
「一番効くやつですね」
神崎は、画面から目を離さない。
「断言されない疑念」
スタッフが言う。
「これ…確信にはならないですよね」
神崎は頷く。
「ならなくていい」
少し間を置く。
「確信になったら終わる」
赤坂。
相良宗一は、珍しく言葉を発さずに画面を見ていた。
グラスの中の氷が溶ける。
部下が言う。
「完全には広がっていません」
相良は、小さく答える。
「広がる必要はない」
少し間を置く。
「残ればいい」
その視点は、神崎と同じだった。
有楽町。
城戸正宗は、静かに資料をめくっていた。
スポンサーの動き。
企業の反応。
番組の編成変更。
「揺れてますね」
スタッフが聞く。
「どこがですか」
城戸は答える。
「上流です」
六本木。
神崎は、ホワイトボードの前に立つ。
「圧力」
「可視化」
その下に、新しく書く。
「違和感」
真壁が言う。
「段階、進みましたね」
神崎は頷く。
「ここからだ」
そのとき。
スタッフが声を上げる。
「これ…」
モニターに、一つの投稿が表示される。
匿名アカウント。
「某代理店から“触れるな”と指示が来ました」
その一文だけ。
真壁が言う。
「来ましたね」
神崎は、静かに画面を見る。
投稿はすぐに拡散されない。
だが――
止まらない。
「ほんとなら怖い」
「ありそう」
「でも証拠は?」
「でも、さっきの流れと繋がるよね」
赤坂。
相良のスマートフォンが震える。
「現場でリークが出始めています」
相良は、ゆっくりと笑った。
「出るか」
有楽町。
城戸の元にも、同様の報告。
「統制が効き始めています」
城戸は、静かに言った。
「効いていないから出ている」
六本木。
神崎は、ゆっくりと椅子に座った。
すべてが、繋がり始めている。
だが――
まだ足りない。
神崎は、小さく呟いた。
「もう一段だな」
真壁が言う。
「どこ行きます」
神崎は、少しだけ考えた。
そして答える。
「上だ」
その一言で、空気が変わる。
スタッフが言う。
「直接ですか」
神崎は頷いた。
「逃げられない形で」
ホワイトボードに、新しく書く。
「名前」
その夜。
曖昧だった構造は――
ついに、“輪郭”を持ち始めた。




