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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第82話「引けない線」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。



最終判断者さいしゅうはんだんしゃ

大手企業・メディア・広告を横断する意思決定の中核にいる人物。

七年前の神崎のスキャンダルにも関与していたとされ、

今回、音声や記録によってその関与が可視化される。

当初は「組織の一部」として責任を曖昧にするが、、、



観客かんきゃく

SNSのユーザー、視聴者、一般の人々。

当初は消費者として情報を受け取る存在だったが、

神崎の言葉によって「選ぶ側」へと引き上げられる。

本作において、最終的に“物語の意味を決定する存在”。

西麻布の個室には、静かな緊張が残っていた。


グラスの中の氷が、わずかに音を立てる。

その小さな音だけが、時間の流れを知らせている。


 


相良宗一は、神崎をまっすぐ見ていた。


 


「意味がない、か」


 


その言葉を、噛みしめるように繰り返す。


 


神崎は、何も付け足さない。


 


 


相良が言う。


 


「じゃあ、どうする」


 


 


問いではあるが、確認でもあった。


 


 


神崎は、ゆっくりと答える。


 


「引かないです」


 


 


 


その一言で、空気がわずかに歪む。


 


 


相良は、少しだけ目を細めた。


 


 


「全部やるつもりか」


 


 


神崎は頷く。


 


 


「できる範囲で」


 


 


 


相良が、わずかに笑う。


 


 


「それが一番危ない」


 


 


 


その通りだった。


 


 


線を引かない人間は、どこまでも行ける。


 


 


だからこそ――


 


 


止められない。


 


 


 


相良は、グラスを持ち上げた。


 


 


「お前、自分で自分止められるか?」


 


 


 


神崎は、すぐには答えなかった。


 


 


数秒。


 


 


 


「分からないですね」


 


 


 


正直な答えだった。


 


 


 


相良は、小さく笑った。


 


 


 


「だろうな」


 


 


 


 


そのとき。


 


 


 


相良のスマートフォンが震えた。


 


 


画面を見る。


 


 


わずかに、表情が変わる。


 


 


 


神崎は、それを見逃さない。


 


 


 


「動きました?」


 


 


 


相良は、スマートフォンをテーブルに置いた。


 


 


 


「動いたな」


 


 


 


 


短い一言。


 


 


だが、その重さは十分だった。


 


 


 


六本木。


 


真壁の元にも、同じ情報が届く。


 


 


 


「スポンサーが動きました」


 


 


 


スタッフが聞く。


 


 


 


「どっちにですか」


 


 


 


真壁は答える。


 


 


 


「止める側です」


 


 


 


 


西麻布。


 


 


相良は、神崎を見たまま言う。


 


 


 


「ここからだぞ」


 


 


 


 


神崎は、静かに頷く。


 


 


 


「そうですね」


 


 


 


 


相良は続ける。


 


 


 


「圧、かかるぞ」


 


 


 


 


その言葉は、脅しではない。


 


 


 


事実だった。


 


 


 


神崎は、わずかに笑った。


 


 


 


「もうかかってますよ」


 


 


 


 


その余裕に、相良は一瞬だけ目を細める。


 


 


 


「違う」


 


 


 


少し間を置く。


 


 


 


「次元が変わる」


 


 


 


 


その言葉に、空気が重くなる。


 


 


 


神崎は、何も言わなかった。


 


 


 


だが、理解している。


 


 


 


今までは、“揺らし”だった。


 


 


これからは――


 


 


“押し潰し”が来る。


 


 


 


相良は、最後に言った。


 


 


 


「最後にもう一回聞く」


 


 


 


 


「引くか?」


 


 


 


 


神崎は、迷わなかった。


 


 


 


「引きません」


 


 


 


 


即答。


 


 


 


その一言で、すべてが決まる。


 


 


 


相良は、ゆっくりと立ち上がった。


 


 


 


「分かった」


 


 


 


 


扉に向かう。


 


 


 


そして、振り返らずに言う。


 


 


 


「じゃあ、こっちも引かない」


 


 


 


 


扉が閉まる。


 


 


 


静寂。


 


 


 


神崎は、一人残る。


 


 


 


グラスの中の氷が、完全に溶けていた。


 


 


 


その夜。


 


 


 


引かれなかった線は――


 


 


 


ついに、ぶつかることになった。

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