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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第81話「同じテーブル」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。



最終判断者さいしゅうはんだんしゃ

大手企業・メディア・広告を横断する意思決定の中核にいる人物。

七年前の神崎のスキャンダルにも関与していたとされ、

今回、音声や記録によってその関与が可視化される。

当初は「組織の一部」として責任を曖昧にするが、、、



観客かんきゃく

SNSのユーザー、視聴者、一般の人々。

当初は消費者として情報を受け取る存在だったが、

神崎の言葉によって「選ぶ側」へと引き上げられる。

本作において、最終的に“物語の意味を決定する存在”。

六本木の夜は、静かだった。


だが、その静けさは“止まっている”のではなく、

何かが動く前の均衡だった。


 


「会いたい」


 


その一言は短い。

だが、ここまでの流れの中では十分すぎる意味を持っていた。


 


神崎は、スマートフォンをテーブルに置いた。


 


真壁が言う。


「行きますか」


 


神崎は即答しなかった。


 


数秒、沈黙。


 


 


「行く」


 


 


その一言で、空気が決まる。


 


 


 


赤坂。


 


相良宗一は、既に店に入っていた。


 


西麻布の奥。

外からは見えない個室。


 


七年前も、こういう場所だった。


 


 


相良はグラスを傾けながら、扉の方を見た。


 


 


「遅いな」


 


 


だが、焦りはない。


 


むしろ――


 


楽しんでいる。


 


 


 


扉が開く。


 


 


神崎修司が入ってくる。


 


 


二人の視線が、真正面からぶつかる。


 


 


「久しぶりだな」


 


 


相良が言う。


 


 


神崎は、ゆっくりと席に座る。


 


 


「そうですね」


 


 


 


沈黙。


 


 


だが、それは気まずさではない。


 


 


互いに、言葉の順番を測っている。


 


 


 


相良が先に口を開く。


 


 


「やりすぎだ」


 


 


 


神崎は、少しだけ笑った。


 


 


「よく言われます」


 


 


 


相良は続ける。


 


 


「でもな」


 


 


グラスをテーブルに置く。


 


 


「今回は違う」


 


 


 


その声には、わずかな真剣さがあった。


 


 


 


神崎は、何も言わない。


 


 


 


相良は言う。


 


 


 


「止まってる」


 


 


 


神崎の目が、わずかに動く。


 


 


 


相良は続ける。


 


 


 


「現場が」


 


 


 


「企業が」


 


 


 


「スポンサーが」


 


 


 


 


その言葉は、事実だった。


 


 


 


神崎は、静かに答える。


 


 


 


「そうですね」


 


 


 


 


相良は、少しだけ前に身を乗り出した。


 


 


 


「それ、いいと思ってるのか」


 


 


 


 


神崎は、視線を外さずに答える。


 


 


 


「思ってます」


 


 


 


 


即答だった。


 


 


 


相良の口元が、わずかに歪む。


 


 


 


「経済が止まるぞ」


 


 


 


 


神崎は言う。


 


 


 


「一時的には」


 


 


 


 


相良が言う。


 


 


 


「その“一時的”で潰れる会社もある」


 


 


 


 


神崎は、少しだけ間を置いた。


 


 


 


その言葉の重さを、否定しない。


 


 


 


だが――


 


 


 


「じゃあ」


 


 


 


 


静かに言う。


 


 


 


「何も変えない方がいいですか」


 


 


 


 


相良は、すぐには答えなかった。


 


 


 


分かっている。


 


 


 


その問いには、簡単な答えがない。


 


 


 


 


相良は、ゆっくりと息を吐いた。


 


 


 


「極端なんだよ、お前は」


 


 


 


 


神崎は、わずかに笑った。


 


 


 


「そうですかね」


 


 


 


 


相良は、視線を鋭くする。


 


 


 


「バランスを取れ」


 


 


 


 


その言葉は、説得だった。


 


 


 


だが同時に――


 


 


 


“誘導”でもあった。


 


 


 


神崎は、静かに聞く。


 


 


 


「どうやって」


 


 


 


 


相良は、少しだけ間を置いた。


 


 


 


そして、言う。


 


 


 


「線を引け」


 


 


 


 


神崎の目が、わずかに細くなる。


 


 


 


相良は続ける。


 


 


 


「ここまではやる」


 


 


 


「ここからはやらない」


 


 


 


 


「その線を、こっちと一緒に引け」


 


 


 


 


沈黙。


 


 


 


それは提案だった。


 


 


 


だが――


 


 


 


条件付きの共存。


 


 


 


 


神崎は、しばらく何も言わなかった。


 


 


 


七年前。


 


 


線は、引かれていた。


 


 


だが、その線は――


 


 


一方的だった。


 


 


 


 


神崎は、ゆっくりと口を開いた。


 


 


 


「それ、誰が決めるんですか」


 


 


 


 


相良は、即答した。


 


 


 


「俺たちだ」


 


 


 


 


その言葉は、迷いがなかった。


 


 


 


 


神崎は、少しだけ笑った。


 


 


 


「ですよね」


 


 


 


 


そして――


 


 


 


「だからダメなんですよ」


 


 


 


 


空気が、一瞬で変わる。


 


 


 


相良の目が、鋭くなる。


 


 


 


神崎は続ける。


 


 


 


「決める側が決めた線なんて」


 


 


 


 


少し間を置く。


 


 


 


「意味ないんで」


 


 


 


 


その言葉は、静かだった。


 


 


 


だが――


 


 


 


完全に拒絶だった。


 


 


 


 


相良は、ゆっくりと笑った。


 


 


 


「そう来るか」


 


 


 


 


その目は、怒っていない。


 


 


 


むしろ――


 


 


 


楽しんでいる。


 


 


 


 


その夜。


 


 


 


二人は、同じテーブルについた。


 


 


 


だが――


 


 


 


見ている世界は、まったく違っていた。

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