第75話「それでも残るもの」
『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧
■神崎 修司
本作の主人公。
元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。
現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。
芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、
メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。
■真壁 葵
パパラッチ・パパラッチの調査責任者。
元新聞記者。
報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。
理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。
神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。
■佐伯 圭一
神崎の元マネージャー。
神崎が新人だった頃から担当していた人物。
しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。
神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。
■黒川 真也
週刊誌記者。
七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。
仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。
神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。
■相良 宗一
芸能界の大物プロデューサー。
テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。
神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。
■城戸 正宗
広告業界の伝説的存在。
日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。
テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。
■有里
神崎の元恋人。
七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。
現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、
神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。
■最終判断者
大手企業・メディア・広告を横断する意思決定の中核にいる人物。
七年前の神崎のスキャンダルにも関与していたとされ、
今回、音声や記録によってその関与が可視化される。
当初は「組織の一部」として責任を曖昧にするが、、、
■観客
SNSのユーザー、視聴者、一般の人々。
当初は消費者として情報を受け取る存在だったが、
神崎の言葉によって「選ぶ側」へと引き上げられる。
本作において、最終的に“物語の意味を決定する存在”。
夜が深くなっても、議論は消えなかった。
ただ、形を変えていた。
六本木のオフィス。
モニターには、もう派手な言葉はほとんど流れていない。
代わりに、長い文章が増えている。
「この問題は単純な善悪では語れない」
「報道の自由と個人の尊厳のバランスとは何か」
「神崎の行動は危険だが、必要悪だったのかもしれない」
真壁が言う。
「完全に“議題”になりましたね」
神崎は、ゆっくりと頷いた。
「なったな」
スタッフの一人が言う。
「これ、もう終わりじゃないですよね」
神崎は答えた。
「終わりじゃない」
少し間を置く。
「終わらせたら意味がない」
赤坂。
相良宗一は、静かにニュース番組を見ていた。
コメンテーターが話している。
「今回の件は、単なるスキャンダルではなく、社会構造そのものへの問いです」
相良は、小さく笑った。
「そこまで行ったか」
グラスを手に取る。
「面白いな」
だが、その目は冷静だった。
終わっていない。
むしろ――
ここからが長い。
有楽町。
城戸正宗は、会見の映像をもう一度見ていた。
神崎の言葉。
自分の言葉。
会場の空気。
城戸は言った。
「残りましたね」
スタッフが聞く。
「何がですか」
城戸は答える。
「問いです」
六本木。
神崎は、ホワイトボードを見ていた。
「金」
「人」
「構造」
「責任」
「証拠」
「自分」
「判断」
そのすべてが、そこに並んでいる。
神崎は、ゆっくりとペンを持った。
そして、その下に書く。
「残るもの」
真壁が言う。
「それ、何ですか」
神崎は、少しだけ考えた。
そして答える。
「分からない」
真壁が小さく笑う。
「またそれですか」
神崎も、わずかに笑った。
「でも」
少し間を置く。
「何かは残る」
そのとき。
神崎のスマートフォンが震えた。
画面を見る。
差出人。
佐伯圭一。
空気が、わずかに変わる。
真壁が言う。
「…来ましたね」
神崎は、画面を見たまま動かない。
七年前。
すべての始まり。
裏切り。
神崎は、ゆっくりと通話ボタンを押した。
「もしもし」
電話の向こうで、佐伯の声がする。
「…久しぶりだな」
その声は、少しだけ震えていた。
神崎は、何も言わない。
佐伯が続ける。
「全部、見た」
数秒の沈黙。
「話せるか」
六本木。
神崎は、少しだけ目を閉じた。
そして開く。
「いいですよ」
その一言で――
物語は、原点へと戻り始めた。




