第74話「答えを持たない世界」
『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧
■神崎 修司
本作の主人公。
元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。
現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。
芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、
メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。
■真壁 葵
パパラッチ・パパラッチの調査責任者。
元新聞記者。
報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。
理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。
神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。
■佐伯 圭一
神崎の元マネージャー。
神崎が新人だった頃から担当していた人物。
しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。
神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。
■黒川 真也
週刊誌記者。
七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。
仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。
神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。
■相良 宗一
芸能界の大物プロデューサー。
テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。
神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。
■城戸 正宗
広告業界の伝説的存在。
日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。
テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。
■有里
神崎の元恋人。
七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。
現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、
神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。
■最終判断者
大手企業・メディア・広告を横断する意思決定の中核にいる人物。
七年前の神崎のスキャンダルにも関与していたとされ、
今回、音声や記録によってその関与が可視化される。
当初は「組織の一部」として責任を曖昧にするが、、、
■観客
SNSのユーザー、視聴者、一般の人々。
当初は消費者として情報を受け取る存在だったが、
神崎の言葉によって「選ぶ側」へと引き上げられる。
本作において、最終的に“物語の意味を決定する存在”。
問いは、静かに広がっていた。
爆発ではない。
炎上でもない。
拡散ですらない。
沈み込むように、広がる。
六本木のオフィス。
モニターには、感情の強い言葉が減っていた。
代わりに増えているのは、曖昧な言葉。
「分からない」
「考えてる」
「簡単に判断できない」
「どっちとも言えない」
真壁が言う。
「ここまで来るとは思いませんでしたね」
神崎は画面を見たまま答える。
「来ると思ってた」
スタッフの一人が言う。
「でもこれ…」
言葉を探す。
「盛り上がってないですよね」
神崎は、少しだけ笑った。
「そうだな」
そして続ける。
「盛り上がらないのが、正しいんだよ」
赤坂。
相良宗一は、スマートフォンをテーブルに置いた。
反応が弱い。
だが、それは“興味がない”のとは違う。
深く入っている。
相良は呟く。
「面倒な状態にしたな」
有楽町。
城戸正宗は、静かに言った。
「収束しませんね」
スタッフが聞く。
「理由は?」
城戸は答える。
「答えがないからです」
六本木。
神崎は、ホワイトボードの前に立っていた。
「判断」
その文字を見つめる。
七年前。
判断は一瞬だった。
早かった。
単純だった。
分かりやすかった。
だから――
終わった。
今回は違う。
神崎は、静かに言った。
「終わらないな」
真壁が言う。
「終わらせないんですよね」
神崎は、少しだけ考えた。
そして答えた。
「終わらないようにした」
そのとき。
スタッフが声を上げる。
「これ…」
モニターに、新しい流れが出る。
ある大学の授業で、この件が取り上げられている。
企業の研修資料に、神崎の投稿が使われている。
メディア論の番組で、議論が始まっている。
真壁が言う。
「場、変わりましたね」
神崎は頷く。
「変わったな」
赤坂。
相良は、その流れを見ていた。
SNSではない。
教育。
議論。
検証。
相良は、小さく笑った。
「やられたな」
有楽町。
城戸は、静かに言った。
「これは…」
少し間を置く。
「残りますね」
六本木。
神崎は、窓の前に立っていた。
夜の街。
いつもと同じ景色。
だが、少しだけ違って見える。
真壁が後ろから言う。
「どう思います?」
神崎は答えた。
「分からない」
その言葉に、真壁は少しだけ笑う。
「らしいですね」
神崎は続ける。
「でも」
少し間を置く。
「それでいいと思ってる」
その声は、静かだった。
だが――
確信があった。
その夜。
世界は、答えを持たなかった。
だが――
問いを持ち続けていた。




