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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第68話「選ぶ言葉」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。

壇上の空気は、もはや音を失っていた。


人が何百人といるはずなのに、呼吸すら聞こえない。

ただ一つの問いが、空間の中心に置かれている。


「あなたは、どこですか」


 


神崎の声は強くない。

だが、逃げ場を残さない温度を持っていた。


 


男は、マイクを握ったまま動かない。


視線が揺れる。

ほんの一瞬だけ、神崎から外れる。


 


そして――


戻る。


 


逃げないと決めたのか。

それとも、逃げられないと理解したのか。


 


男は口を開いた。


「…私は」


 


言葉が止まる。


 


七年前、同じ場所で止まらなかった男が、今は止まっている。


 


「私は」


 


もう一度。


 


そして、続けた。


 


「最終判断に関与しました」


 


 


会場の空気が、はっきりと変わる。


 


ざわめきではない。


 


“確定”の空気。


 


 


六本木。


 


真壁が息を吐いた。


 


「…出ましたね」


 


 


神崎は、わずかに目を細めた。


 


だが、何も言わない。


 


 


有楽町。


 


壇上の男は続ける。


 


「ただし、それは私一人の意思ではありません」


 


すぐに言葉を重ねる。


 


「複数のプロセスを経て――」


 


 


神崎が、そこで口を挟む。


 


「知ってます」


 


 


その一言で、流れが止まる。


 


 


神崎は言う。


 


「構造の話は、もうやりました」


 


 


一歩、踏み込む。


 


 


「今は、“あなた”の話をしてます」


 


 


 


男は、何も言い返さない。


 


 


いや、言い返せない。


 


 


 


赤坂。


 


相良宗一は、画面を見ながら小さく呟いた。


 


 


「完全に主導権取ったな」


 


 


 


有楽町。


 


壇上の男は、ゆっくりと息を吸った。


 


 


そして言う。


 


 


「…最終的な判断に、責任があります」


 


 


 


その一言は、先ほどとは違った。


 


 


曖昧ではない。


 


 


逃げてもいない。


 


 


 


会場に、はっきりとしたざわめきが広がる。


 


 


記者たちが一斉に動く。


 


 


「責任を認めるということですか!」

「辞任の意向は!」

「具体的な関与はどこまで!」


 


 


質問が飛び交う。


 


 


だが、その中心にいるのは、もう記者ではない。


 


 


神崎だった。


 


 


 


神崎は、ゆっくりと頷いた。


 


 


「やっと出ましたね」


 


 


 


その言葉は、攻撃ではなかった。


 


 


確認だった。


 


 


 


男は、神崎を見た。


 


 


その目に、さっきまでの余裕はない。


 


 


だが――


 


 


別のものがあった。


 


 


 


覚悟。


 


 


 


男は言う。


 


 


「あなたのやり方は、正しいとは思いません」


 


 


 


会場が少しざわつく。


 


 


神崎は、すぐに答えた。


 


 


「知ってます」


 


 


 


男は続ける。


 


 


「多くの人間を傷つけている」


 


 


神崎は頷く。


 


 


「そうですね」


 


 


 


数秒の沈黙。


 


 


 


男が言う。


 


 


「それでもやる理由は何ですか」


 


 


 


その問いは、これまでと同じだった。


 


 


だが、今は違う。


 


 


 


神崎は、少しだけ考えた。


 


 


 


そして、答えた。


 


 


 


「選ばせるためです」


 


 


 


男が眉をひそめる。


 


 


 


神崎は続ける。


 


 


 


「誰が、何をやったのか」


 


 


 


一歩、前に出る。


 


 


 


「それを見て」


 


 


 


「選ぶのは、あの人たちだから」


 


 


 


視線を、壇上の外へ向ける。


 


 


 


記者。

観客。

画面の向こうの人間。


 


 


 


その全員を指していた。


 


 


 


会場が静まる。


 


 


 


誰も、すぐには言葉を出せない。


 


 


 


神崎は、最後に言った。


 


 


 


「俺は、決めない」


 


 


 


その一言は――


 


 


この物語の“役割”を、はっきりと分けた。

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