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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第65話「崩れる均衡」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。

音声は、静かだった。


怒鳴り声でも、命令でもない。

むしろ落ち着いている。


だからこそ、はっきりと聞こえる。


 


「それでいきましょう」

「問題はありません」

「リスクは管理できています」


 


六本木のオフィスでは、その音声が繰り返し流れていた。


誰も途中で止めない。


止める理由がない。


 


真壁が言う。


「これ、完全に“判断”してますね」


神崎は頷く。


「してるな」


 


スタッフの一人が言う。


「逃げられないですね」


 


その言葉に、誰も否定しなかった。


 


 


赤坂。


 


相良宗一は、音声を最後まで聞き終えた。


 


グラスを置く。


 


「これは…」


 


少し間を置く。


 


「終わるな」


 


 


ただし。


 


それは“誰か一人”の終わりではない。


 


 


有楽町。


 


城戸正宗は、静かに目を閉じていた。


 


音声。


 


内容。


 


言葉の選び方。


 


 


すべてが揃っている。


 


 


城戸は目を開けて言った。


 


「均衡が崩れました」


 


スタッフが聞く。


 


「どの均衡ですか」


 


城戸は答えた。


 


「言葉と証拠の均衡です」


 


 


六本木。


 


神崎は、ホワイトボードを見ていた。


 


「金」

「人」

「構造」

「責任」


 


 


その下に、新しく書く。


 


 


「証拠」


 


 


真壁が言う。


 


「ここまで来ましたね」


 


神崎は頷く。


 


「ああ」


 


 


そして続ける。


 


 


「ここからは、もう戻らない」


 


 


 


そのとき。


 


 


モニターに速報が出る。


 


 


「〇〇氏、記者会見を予定」


 


 


 


空気が一瞬で変わる。


 


 


スタッフの一人が言う。


 


「来ました」


 


 


真壁が言う。


 


「反撃ですね」


 


 


神崎は、画面を見たまま言った。


 


 


「違うな」


 


 


 


真壁が見る。


 


 


神崎は続けた。


 


 


「これは“防御”だ」


 


 


 


赤坂。


 


相良は、その速報を見て小さく笑った。


 


 


「出てきたか」


 


 


 


その声には、少しだけ楽しさが混じっていた。


 


 


「いいね」


 


 


 


有楽町。


 


城戸は立ち上がった。


 


 


「時間が来ました」


 


 


スタッフが聞く。


 


 


「何のですか」


 


 


城戸は答えた。


 


 


「直接対決です」


 


 


 


六本木。


 


神崎は、ゆっくりと立ち上がった。


 


 


真壁が言う。


 


 


「どうします?」


 


 


神崎は答えた。


 


 


「行く」


 


 


 


スタッフが驚く。


 


 


「会見にですか?」


 


 


神崎は頷く。


 


 


「ああ」


 


 


 


少し間を置く。


 


 


 


「最初からそのつもりだろ」


 


 


 


その言葉に、全員が理解する。


 


 


これは、ただの情報戦ではない。


 


 


顔を出す戦いだ。


 


 


 


神崎は、ジャケットを手に取る。


 


 


七年前。


 


 


会見の場で、自分は何もできなかった。


 


 


ただ、見ているだけだった。


 


 


 


今は違う。


 


 


 


神崎は、小さく呟いた。


 


 


「今度は、逃げない」


 


 


 


その夜。


 


 


崩れた均衡は――


 


 


現実の“場”で、再びぶつかろうとしていた。

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