第62話「構造の中の顔」
『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧
■神崎 修司
本作の主人公。
元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。
現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。
芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、
メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。
■真壁 葵
パパラッチ・パパラッチの調査責任者。
元新聞記者。
報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。
理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。
神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。
■佐伯 圭一
神崎の元マネージャー。
神崎が新人だった頃から担当していた人物。
しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。
神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。
■黒川 真也
週刊誌記者。
七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。
仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。
神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。
■相良 宗一
芸能界の大物プロデューサー。
テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。
神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。
■城戸 正宗
広告業界の伝説的存在。
日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。
テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。
■有里
神崎の元恋人。
七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。
現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、
神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。
投稿は、これまでとは違う速度で広がった。
「意思決定の構造」
それは暴露でも、告発でもない。
説明だった。
六本木のオフィス。
モニターに映るのは、シンプルな図。
企業
↓
中間管理職
↓
外部コンサル
↓
広告代理店
↓
メディア
そして横に並ぶ。
「承認」
「調整」
「最終判断」
真壁が言う。
「これ、めちゃくちゃ分かりやすいですね」
神崎は腕を組んで画面を見る。
「分かるようにした」
スタッフの一人が言う。
「個人攻撃じゃなくなってる」
別のスタッフも続ける。
「でも、逃げられない」
その通りだった。
名前を出された人間だけの問題ではない。
誰もが、どこかに関わっている。
赤坂。
相良宗一は、画面を見ながら静かに言った。
「一番やっちゃいけないやつだ」
グラスを置く。
「これをやると、全員が“関係者”になる」
有楽町。
城戸正宗は、その図をじっと見ていた。
線の引き方。
言葉の選び方。
順番。
すべてが計算されている。
城戸は言った。
「見せ方がうまい」
スタッフが聞く。
「どういう意味ですか」
城戸は答える。
「責任を分散しているように見せて」
少し間を置く。
「全員に背負わせている」
六本木。
神崎はホワイトボードに同じ図を描いていた。
「企業 → 中間 → 外部 → メディア」
その下に書く。
「個人」
真壁が言う。
「結局そこに戻るんですね」
神崎は頷く。
「当たり前だろ」
そして続ける。
「構造は、誰かが動かしてる」
そのとき。
スタッフが声を上げる。
「来てます!」
モニターに映る。
新しい投稿。
「私は、この構造の中で判断しました」
また一人。
だが今度は違う。
単なる謝罪ではない。
説明だった。
真壁が言う。
「…フェーズ変わりましたね」
神崎は頷く。
「来たな」
SNS。
「これ分かりやすい」
「こういうことだったのか」
「じゃあ一人の問題じゃないじゃん」
「でも誰が決めた?」
議論が変わる。
感情から、理解へ。
赤坂。
相良は、その投稿を見ながら言った。
「止まらんな」
そして小さく笑う。
「でも」
少し間を置く。
「ここからは難しいぞ」
有楽町。
城戸は、静かに言った。
「次の段階です」
スタッフが聞く。
「何ですか」
城戸は答えた。
「責任の特定」
六本木。
神崎は、スマートフォンを見ていた。
投稿の流れ。
一人目。
二人目。
三人目。
そして今。
「構造の中の人間」
真壁が言う。
「このまま行くと…」
神崎は答える。
「行くな」
少し間を置く。
「最後まで」
その言葉は、静かだった。
だが――
決まっていた。
神崎は、新しい投稿を開く。
タイトル。
「最終判断者」
指が止まる。
ここから先は、違う。
構造ではない。
逃げられない。
神崎は、目を閉じた。
一瞬。
そして開く。
その夜。
構造の中に埋もれていた“顔”が――
ついに、浮かび上がろうとしていた。




