第60話「次に出る者」
『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧
■神崎 修司
本作の主人公。
元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。
現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。
芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、
メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。
■真壁 葵
パパラッチ・パパラッチの調査責任者。
元新聞記者。
報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。
理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。
神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。
■佐伯 圭一
神崎の元マネージャー。
神崎が新人だった頃から担当していた人物。
しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。
神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。
■黒川 真也
週刊誌記者。
七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。
仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。
神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。
■相良 宗一
芸能界の大物プロデューサー。
テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。
神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。
■城戸 正宗
広告業界の伝説的存在。
日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。
テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。
■有里
神崎の元恋人。
七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。
現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、
神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。
六本木のオフィスは、これまでで最も静まり返っていた。
画面にはまだ「解雇」の文字が残っている。
更新され続ける情報の中で、それだけが異様に動かない。
真壁が口を開く。
「…止まる可能性、ありますね」
神崎は椅子に座ったまま答える。
「あるな」
スタッフの一人が言う。
「普通は止まりますよ」
別のスタッフも続ける。
「これ見たら、誰も出てこないです」
沈黙。
それは、自然な反応だった。
声を出せば、切られる。
守られない。
その現実が、可視化された。
赤坂。
相良宗一は、グラスを持ったまま動かなかった。
「これで止まるか」
小さく呟く。
連鎖には条件がある。
最初の一人。
二人目。
そして――
三人目。
「ここが壁だな」
有楽町。
城戸正宗は、静かに言った。
「止まります」
スタッフが聞く。
「理由は?」
城戸は答える。
「恐怖が具体化したからです」
六本木。
神崎は、ホワイトボードを見ていた。
「1 ×」
「2」
その並び。
真壁が言う。
「ここで止まったら…」
神崎は答える。
「意味が変わる」
そのとき。
スタッフの一人が声を上げる。
「社長」
全員が振り向く。
「二人目の人…」
モニターに映る。
投稿。
短い。
「すべて、私の責任です」
空気が、揺れる。
真壁が言う。
「…かぶった」
神崎は、画面を見つめたまま動かない。
数秒。
そして、ゆっくりと呟く。
「違うな」
真壁が聞く。
「何がですか」
神崎は答える。
「かぶってない」
少し間を置く。
「選んでる」
赤坂。
相良は、その投稿を見て笑った。
「出たな」
その目は、楽しんでいるわけではなかった。
ただ、理解していた。
これは“連鎖”ではない。
“意思”だ。
有楽町。
城戸は、その文章を何度も読み返していた。
「すべて、私の責任です」
その言葉の重さ。
城戸は言った。
「これは…」
スタッフが見る。
城戸は続けた。
「止まりませんね」
六本木。
神崎はホワイトボードに、新しく書く。
「3」
その横に、ゆっくりと丸をつける。
1 ×
2
3 ○
真壁が言う。
「ここで変わりますね」
神崎は頷く。
「ああ」
そして続ける。
「ここからは、止まらない」
SNS。
「責任取るってどういうこと?」
「解雇されるの分かってて?」
「すげぇな」
「これ、流れ変わったぞ」
観客の空気が変わる。
恐怖だけではない。
尊敬。
理解。
そして――
覚悟。
六本木。
神崎は、ゆっくりと息を吐いた。
真壁が言う。
「ここから一気に来ますよ」
神崎は答えた。
「来させる」
その目は、静かだった。
だが、燃えていた。
その夜。
恐怖で止まるはずだった連鎖は――
意思によって、加速を始めた。




