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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第58話「出てくる者」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。

名指しされた瞬間、世界は二つに割れた。


沈黙する者と、動く者。


 


六本木のオフィスでは、モニターに複数の画面が並んでいる。SNS、ニュース、企業の公式声明。どれもが同時に更新され、同時に矛盾していた。


「否定コメント出始めました」


真壁が言う。


画面には、実名を出された人物の一人の投稿。


「事実無根です。法的措置を検討します」


スタッフの一人が続ける。


「こっちも」


別の人物。


「一切関与していません」


 


神崎はそれを見ながら言った。


「当然だな」


 


真壁が聞く。


「どうします?」


 


神崎は答えない。


 


数秒。


 


そして、静かに言う。


「待つ」


 


 


赤坂。


 


相良宗一は、ソファに座ったままスマートフォンを見ていた。


 


否定。

否定。

否定。


 


だが、その中に混ざる。


 


沈黙。


 


何も言わない名前。


 


相良は小さく笑った。


 


「いるな」


 


 


有楽町。


 


城戸正宗は、並べられた名前を順番に見ていた。


 


反応がある者。

強く否定する者。

法的措置を匂わせる者。


 


そして――


 


何も言わない者。


 


城戸は言った。


 


「そこです」


 


スタッフが聞く。


 


「どこですか」


 


城戸は答えた。


 


「動くのは、沈黙している側です」


 


 


六本木。


 


真壁が言う。


 


「沈黙してる人、三人います」


 


神崎が聞く。


 


「誰だ」


 


真壁は名前を読み上げる。


 


その中の一つ。


 


神崎の表情が、わずかに変わる。


 


「…あいつか」


 


 


スタッフが聞く。


 


「知ってるんですか?」


 


神崎は答えた。


 


「知ってる」


 


少し間を置く。


 


「一番、出てくるタイプだ」


 


 


赤坂。


 


相良はその名前を見ながら、グラスを持ち上げた。


 


「やっぱりな」


 


 


その人物は、過去に何度も“線を越えるかどうか”のギリギリを歩いてきた人間だった。


 


守ることもできる。


逃げることもできる。


 


だが――


 


出ることもできる。


 


 


有楽町。


 


城戸はその名前を見て、静かに言った。


 


「ここが分岐点です」


 


 


スタッフが聞く。


 


「どういう意味ですか」


 


城戸は答えた。


 


「出てくれば、流れが変わる」


 


 


六本木。


 


神崎のスマートフォンが震えた。


 


真壁が画面を見る。


 


「…来ました」


 


 


全員の視線が集まる。


 


 


投稿。


 


 


その名前。


 


 


先ほどまで沈黙していた人物。


 


 


文章は短い。


 


 


「事実です」


 


 


 


空気が止まる。


 


 


その一言だけだった。


 


 


だが――


 


重さが違った。


 


 


 


SNS。


 


 


「え?」

「認めた?」

「マジか」

「一気に流れ変わるぞ」


 


 


 


赤坂。


 


相良は、その投稿を見て、ゆっくりと笑った。


 


 


「始まったな」


 


 


 


有楽町。


 


城戸は目を細めた。


 


 


数秒。


 


 


そして、静かに言った。


 


 


「予想より早い」


 


 


 


六本木。


 


神崎はその投稿を見つめていた。


 


 


何も言わない。


 


 


ただ、見ている。


 


 


真壁が言う。


 


 


「来ましたね」


 


 


神崎は、数秒後に答えた。


 


 


「来たな」


 


 


 


そして、静かに呟く。


 


 


「一人目だ」


 


 


 


その夜。


 


 


沈黙していた世界から――


 


 


“声”が生まれた。

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