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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第57話「名指しの瞬間」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。

六本木のオフィスの空気は、これまでで一番静かだった。


騒がしさは消えていない。通知音も、画面の更新も止まらない。だが、それを上回る“確信”のようなものが場を支配している。


もう戻れない。


その認識が、全員の中で共有されていた。


 


真壁がモニターを見ながら言う。


「拡散、止まりません」


神崎は窓の外を見たまま答える。


「止まらないだろうな」


 


スタッフの一人が言う。


「企業から問い合わせ来てます」


「削除要請です」


別のスタッフも続ける。


「法務からも」


 


神崎は振り返らない。


 


「全部無視でいい」


 


その一言で、方針は決まった。


 


 


赤坂。


 


相良宗一は、スマートフォンを置いた。


 


情報はもう十分だった。


 


企業名。

資金の流れ。

関係者。


 


断片ではない。


線になっている。


 


相良は小さく呟く。


 


「ここからは“人”だな」


 


 


有楽町。


 


城戸正宗は、机の上の資料を並べていた。


 


金の流れの図。


 


そして、その先にある名前。


 


スタッフが言う。


 


「影響、出始めてます」


 


城戸は頷く。


 


「当然です」


 


 


少し間を置く。


 


 


「ここからが、選別です」


 


 


 


六本木。


 


神崎はホワイトボードの前に立った。


 


 


「金」


と書かれた文字の横に、新しく書く。


 


 


「人」


 


 


 


真壁が言う。


 


 


「いきますか」


 


 


神崎は頷く。


 


 


「いく」


 


 


 


スタッフの一人が言う。


 


 


「でも…」


 


 


言葉を選ぶ。


 


 


「ここからは、本当に戻れませんよ」


 


 


 


神崎は振り返る。


 


 


「だからやるんだろ」


 


 


 


その目は、静かだった。


 


 


だが、決まっていた。


 


 


 


神崎はスマートフォンを手に取る。


 


 


画面には、すでに準備された投稿。


 


 


タイトル。


 


「意思決定者について」


 


 


 


真壁が最後の確認をする。


 


 


「これ、出したら…」


 


 


神崎は言った。


 


 


「全員、当事者になる」


 


 


 


送信。


 


 


 


数秒後。


 


 


SNSに、新しい投稿が現れる。


 


 


そこに書かれていたのは――


 


 


名前だった。


 


 


役職。


 


企業名。


 


 


そして。


 


 


「判断した人物」


 


 


 


 


SNSの空気が、一瞬で凍る。


 


 


「これマジか」

「実名出てる」

「やばすぎるだろ」

「終わった」


 


 


これまでの情報とは、質が違う。


 


 


金は抽象だった。


 


だが人は違う。


 


 


顔が浮かぶ。


 


声が想像できる。


 


生活がある。


 


 


 


赤坂。


 


相良はその投稿を見て、静かに息を吐いた。


 


 


「来たな」


 


 


その一言に、すべてが込められていた。


 


 


 


有楽町。


 


城戸は、画面を見たまま動かなかった。


 


 


数秒。


 


 


そして、ゆっくりと口を開く。


 


 


「ここまで来ましたか」


 


 


スタッフが聞く。


 


 


「どうします」


 


 


城戸は答えた。


 


 


「動きます」


 


 


 


六本木。


 


神崎はモニターを見ていた。


 


 


名前。


 


 


その一つ一つが、現実を持っている。


 


 


真壁が言う。


 


 


「これで、完全に“敵”作りましたね」


 


 


神崎は小さく笑った。


 


 


「最初からそのつもりだろ」


 


 


 


そして続ける。


 


 


「でもな」


 


 


少し間を置く。


 


 


「敵じゃないやつも出てくる」


 


 


 


真壁が聞く。


 


 


「味方ですか」


 


 


神崎は答えた。


 


 


「違う」


 


 


 


その目が、少しだけ鋭くなる。


 


 


「出てくるやつだ」


 


 


 


その夜。


 


 


名指しされた人間たちの中で――


 


 


何かが動き始めていた。

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