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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第52話「取り調べの温度」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。

警視庁の取調室には、時計の音だけが響いていた。


秒針が進むたびに、空気が少しずつ重くなる。


神崎修司は椅子に深く座り、背もたれに体を預けている。両手は机の上。視線はまっすぐ前に向いていた。


向かいの刑事が、静かに資料をめくる。


「では、順番に確認していきます」


声は淡々としている。


「まず、公開されたデータの中に、複数企業の契約内容が含まれています」


一枚の紙を滑らせる。


「これらは機密情報に該当する可能性が高い」


神崎は紙を見た。


見覚えのあるフォーマット。自分たちが整理した資料だ。


刑事が続ける。


「改めて聞きます。これらはどこから入手しましたか」


神崎は一度だけ瞬きをした。


そして言う。


「複数のルートです」


刑事はすぐに聞く。


「具体的には」


神崎は答えない。


数秒の沈黙。


その沈黙が、答えの一部だった。


刑事は視線を変えずに言う。


「答えられない理由は?」


神崎は言った。


「守る必要があるからです」


「誰を?」


神崎は少しだけ笑った。


「情報源です」


 


部屋の空気がわずかに変わる。


 


刑事が言う。


「あなたの行為は、情報源を守ることと引き換えに、多くの人間に影響を与えています」


神崎は答えた。


「分かってます」


刑事は続ける。


「企業、関係者、家族」


「あなたが批判していた“やり方”と、似ていませんか」


 


数秒。


 


神崎は何も言わなかった。


 


その沈黙は、否定でも肯定でもない。


 


ただ、逃げていなかった。


 


やがて、神崎は口を開く。


「似てますね」


刑事がわずかに眉を動かす。


神崎は続ける。


「だから嫌なんですよ」


 


その言葉は、静かだった。


 


だが、確かに感情が乗っていた。


 


「でも」


 


神崎は前に少しだけ身を乗り出す。


 


「止めるには、それ以上のことをやるしかない」


 


 


六本木。


 


真壁はモニターの前に立ったまま、ニュースを見ていた。


「神崎修司、事情聴取で違法性を認識と発言」


テロップが流れる。


スタッフの一人が言う。


「この切り取り、きついですね」


真壁は答えない。


ただ画面を見ている。


数秒後、静かに言った。


「想定内だ」


 


別のスタッフが言う。


「でも印象は悪いです」


真壁は頷く。


「印象はな」


 


 


赤坂。


 


相良宗一は、そのニュースを見ながら小さく笑った。


 


「いい質問するな」


 


刑事の問い。


 


“あなたが批判していたやり方と似ていませんか”


 


それは、核心だった。


 


相良はグラスを回しながら呟く。


 


「そこをどう越えるかだな」


 


 


有楽町。


 


城戸正宗は、静かにニュースを見ていた。


 


神崎の発言。


 


違法性の認識。

情報源の保護。

影響の自覚。


 


城戸は小さく言った。


 


「いいですね」


 


スタッフが聞く。


 


「どこがですか」


 


城戸は答える。


 


「揺れている」


 


 


六本木。


 


真壁のスマートフォンが震える。


 


「来ました」


 


神崎からのメッセージ。


 


短い。


 


「そのまま流せ」


 


 


真壁は少しだけ笑った。


 


「やっぱりか」


 


 


スタッフが聞く。


 


「どうします?」


 


真壁は答える。


 


「そのまま出す」


 


 


数分後。


 


パパラッチ・パパラッチの公式アカウントに、新しい投稿が出る。


 


神崎修司の発言。


 


ノーカット。


 


編集なし。


 


そのまま。


 


 


SNSの空気が、再び動き出す。


 


「ちゃんと全部言ってる」

「切り取りひどいな」

「でもやってることは危ない」

「正しいのか分からない」


 


 


観客は、また迷い始める。


 


 


警視庁。


 


刑事が言う。


 


「あなたは、自分の行為が正しいと思っていない」


 


神崎は答えた。


 


「思ってないですね」


 


 


刑事が続ける。


 


「それでもやる」


 


神崎は頷く。


 


「はい」


 


 


刑事は言う。


 


「なぜですか」


 


 


神崎は少しだけ考えた。


 


 


そして言った。


 


「他にやるやつがいないからです」


 


 


その答えは、シンプルだった。


 


だが――


 


重かった。


 


 


その瞬間。


 


この物語は――


 


正義でも悪でもなく。


 


“選択の連続”として、動き続けていた。

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