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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第46話「暴かれる側」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。

投稿から、三分。


それだけで十分だった。


 


SNSは、完全に崩壊した。


 


「これ本物?」

「やばすぎるだろ」

「企業名出てるぞ」

「消される前に保存しろ」


 


タイムラインは、もはや会話の形をしていなかった。情報の奔流。スクリーンショット、動画の切り抜き、引用、解説。誰もが“拡散する側”に回っていた。


 


六本木。


オフィスの中は、異様な静けさに包まれていた。


誰もがモニターを見ている。


だが誰も喋らない。


神崎修司は、窓の前に立っていた。


背中だけが、そこにある。


 


真壁が小さく言う。


「全部、出ました」


神崎は振り返らない。


「見えてる」


 


モニターには、公開されたデータの一部が拡大されている。


スポンサー名。

契約内容。

内部のやり取り。

メディアとの関係性。


 


そして――


七年前の記録。


 


スタッフの一人が震えた声で言う。


「これ…本当に大丈夫ですか」


誰も答えない。


 


真壁が静かに言った。


「大丈夫じゃないです」


 


数秒の沈黙。


 


神崎は言った。


「それでいい」


 


その声は、静かだった。


 


「安全な場所で信用なんか作れない」


 


赤坂。


相良宗一は立ち上がっていた。


いつもはソファに座ったまま動かない男が、珍しく歩いている。


スマートフォンの画面を何度も確認する。


 


「…全部か」


 


その一言に、わずかな驚きが滲む。


 


相良は呟いた。


「ここまでやるか」


 


だが次の瞬間、小さく笑った。


 


「面白い」


 


有楽町から移動中の車内。


城戸正宗は、タブレットを見ていた。


画面には、公開されたデータの一覧。


スクロールする。


止まる。


またスクロールする。


 


スタッフが言う。


「完全にオープンです」


 


城戸は頷く。


 


「はい」


 


そして小さく言った。


 


「やられましたね」


 


その言葉に、焦りはなかった。


 


むしろ――


 


どこか楽しんでいるようだった。


 


「ですが」


 


城戸は画面を閉じる。


 


「これは終わりではありません」


 


 


SNS。


 


次の波が、すでに来ていた。


 


「これ違法じゃない?」

「機密情報では?」

「関係ない企業巻き込まれてるぞ」

「これアウトだろ」


 


称賛の声は、一瞬で疑問へと変わる。


 


「正しいことしてるのに危ない」

「やりすぎ」

「これは怖い」


 


観客の温度が、急激に下がる。


 


 


六本木。


 


真壁が画面を見ながら言う。


「来ましたね」


 


神崎は振り返る。


 


「何が」


 


真壁は答えた。


 


「“怖い”です」


 


神崎は小さく笑った。


 


「だろうな」


 


真壁は続ける。


 


「今まで“面白い”だったのが」


「“怖い”に変わりました」


 


神崎は頷く。


 


「その瞬間が必要なんだよ」


 


 


赤坂。


 


相良はスマートフォンを見ながら、静かに呟いた。


 


「ここからだな」


 


 


有楽町。


 


城戸は車の窓の外を見ていた。


 


東京の夜。


 


その中で、無数の人間が同じ情報を見ている。


 


城戸は言った。


 


「観客は」


 


少し間を置く。


 


「巻き込まれると、怖くなる」


 


 


六本木。


 


神崎はホワイトボードの前に立った。


 


「信用」


と書かれた言葉を、ゆっくりと消す。


 


そして、新しく書いた。


 


「覚悟」


 


神崎は言った。


 


「ここからは信用じゃない」


 


真壁が聞く。


 


「じゃあ何ですか」


 


神崎は振り返る。


 


その目は、今までよりも静かだった。


 


「巻き込む」


 


 


その夜。


 


物語は――


ついに境界を越えた。

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