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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第35話「城戸の舞台」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。

翌日。


東京・有楽町のホテルの大宴会場には、開場前から記者たちが詰めかけていた。テレビ局、新聞社、週刊誌、海外メディア、動画配信メディア。カメラと三脚が整然と並び、照明が白く会場を満たしている。


「今回は最初から城戸の会見だ」

「前回みたいな乱入は勘弁してくれ」


誰かが小さく笑った。


前回――。

城戸正宗が開いた会見に、神崎修司が突然現れた日。会場の空気は一瞬で変わり、予定されていた説明はすべて吹き飛んだ。そこから始まった議論は、その後の神崎の会見、スポンサーの動き、SNSの炎上へとつながっていった。


そして今日。


城戸がもう一度、舞台に立つ。


扉が開いた。


グレーのスーツの男がゆっくりと歩いてくる。

城戸正宗。


急ぐ様子はない。演台までの数メートルを、まるで舞台の中央へ向かう役者のように落ち着いた足取りで進む。


フラッシュが連続して光った。


城戸は演台の前に立つと、軽く頭を下げた。


「本日はお集まりいただきありがとうございます」


会場のざわめきが静まる。


城戸は少し間を置いて言った。


「前回の会見では、予想外の出来事がありました」


記者席の何人かが小さく笑う。


城戸は続ける。


「神崎修司さんが突然登場した」


その言葉に、空気が少しだけ引き締まる。


城戸はスクリーンを振り返り、リモコンを押した。


画面に映るのは、そのときの映像だった。

神崎が会場に入ってくる瞬間。

ざわめく記者たち。


次の映像に切り替わる。


今度は神崎自身の記者会見だ。


「メディアを取材する会社」


「スポンサー構造」


神崎の言葉が短く編集されて流れる。


城戸はスクリーンを見つめながら言った。


「その後、神崎さんはご自身の会見を開きました」


そしてゆっくり振り返る。


「大変興味深い提案です」


記者たちは黙ってペンを走らせている。


城戸はスクリーンを再び操作した。


新しい図が表示される。


スポンサー

テレビ局

広告代理店

視聴者


それらが円のようにつながっている図だった。


城戸は言う。


「皆さんは“メディア”という言葉をよく使います」


そして記者たちを見渡す。


「しかしメディアは単体では存在しません」


スクリーンを指す。


「スポンサーが番組を支える」


「番組は視聴率を求める」


「視聴率は視聴者の興味で決まる」


少し間を置く。


「つまり」


城戸の声は静かだった。


「物語を求めているのは、視聴者です」


会場の空気が微かに動いた。


城戸は続ける。


「週刊誌もテレビも、観客がいなければ成立しません」


スクリーンのグラフを指す。


SNSの投稿数が急激に伸びている。


「そして今」


神崎修司の名前が、トレンドの上位に並んでいる。


城戸は小さく笑った。


「神崎さんは観客を集めた」


数秒の沈黙。


「素晴らしい」


だが次の言葉は冷たかった。


「ただし」


城戸はゆっくり言った。


「観客は残酷です」


記者たちは息を止めたように聞いている。


「観客は物語を求める」


「そして」


言葉をゆっくり落とす。


「物語が終われば」


少し間。


「次の主人公を探す」


その言葉は、神崎に向けられているようでもあり、会場全体に向けられているようでもあった。


城戸は演台に両手を置いた。


「神崎修司さん」


会場の視線が集まる。


城戸は言う。


「あなたは面白い物語を作りました」


そして静かに続けた。


「しかし」


声が低くなる。


「物語には終わりがあります」


城戸は少し笑った。


「そして私は」


記者たちを見渡す。


「結末を書くのが好きなんです」


 


その頃。


六本木のパパラッチ・パパラッチのオフィスでは、神崎修司がモニターを見ていた。


城戸の会見のライブ映像だ。


部屋にはスタッフが集まっているが、誰も口を開かない。


城戸の言葉が流れる。


真壁葵が小さく言った。


「完全に主導権を取りに来てます」


神崎はソファに座ったまま画面を見ていた。


城戸正宗。


あの男は舞台の中央を好む。


逃げない。


神崎は小さく笑った。


「いい」


真壁が振り向く。


「何がです」


神崎は言った。


「観客」


モニターの城戸を見る。


「さらに増える」


そして静かに続けた。


「物語は、まだ始まったばかりだ」

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