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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第33話「第三の席」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。

相良宗一のスマートフォンは、テーブルの上で静かに震えていた。


画面には一つの名前が表示されている。


城戸正宗。


相良は数秒、その名前を見つめた。


神崎修司は何も言わない。だが、その視線は相良の手元のスマートフォンに向いている。


店の奥の席は静かだった。昼の時間帯だというのに、このテーブルの周囲だけ空気がわずかに止まっているようだった。


相良は笑った。


「タイミングがいいな」


神崎は言う。


「監視されてるんじゃないですか」


相良は肩をすくめた。


「この業界じゃ普通だ」


そして通話ボタンを押す。


「もしもし」


電話の向こうから、落ち着いた声が聞こえた。


城戸正宗。


「相良さん」


相良は椅子にもたれた。


「どうした」


城戸は穏やかに言った。


「西麻布ですよね」


神崎の目がわずかに細くなる。


相良は笑った。


「怖いな」


城戸は続けた。


「神崎さんと一緒ですか」


相良は答えない。


その沈黙が、答えだった。


城戸は言う。


「いいですね」


少し笑う声が聞こえる。


「三人目の席が空いています」


相良は眉を上げた。


「三人目?」


城戸は言った。


「物語には三人必要です」


神崎は黙って聞いている。


城戸の声は相変わらず落ち着いていた。


「主人公」


「敵」


「観客」


相良は言う。


「俺はどれだ」


城戸は少し間を置いた。


「調整役」


相良は小さく笑った。


「便利な役だな」


城戸は続ける。


「相良さん」


その声は穏やかだった。


「神崎さんにどこまで話しました?」


相良は神崎を見た。


神崎は動かない。


相良は言う。


「脚本はお前だって」


電話の向こうで、城戸が小さく笑った。


「そうですか」


そして続ける。


「それは正しい」


神崎はテーブルの上で指を組んだ。


城戸は言った。


「ただ」


少し声が低くなる。


「脚本には続きがあります」


相良は聞く。


「どんな」


城戸は答えた。


「主人公は」


ゆっくり言う。


「途中で倒れる」


神崎は少し笑った。


相良は言う。


「神崎、聞いたか」


神崎は答える。


「聞いてます」


そして相良のスマートフォンに向かって言った。


「城戸さん」


電話の向こうで、城戸はすぐ答えた。


「はい」


神崎は言った。


「一つ聞きたい」


城戸は穏やかに言う。


「どうぞ」


神崎はゆっくり言った。


「七年前」


店の空気が少し重くなる。


「俺を消した理由」


城戸は少し黙った。


数秒。


その沈黙は、答えを考えているというより、言葉を選んでいるようだった。


やがて城戸は言った。


「必要だったからです」


神崎は眉を動かさない。


城戸は続ける。


「業界の流れ」


「スポンサーの意向」


「テレビ局の事情」


そして静かに言う。


「誰かが降りる必要があった」


神崎は言った。


「それが俺」


城戸は答えた。


「ええ」


そして少し間を置く。


「ただ」


神崎は聞く。


「ただ?」


城戸は言った。


「あなたは想定外でした」


神崎は少し笑う。


「何が」


城戸は答えた。


「戻ってきたことです」


店の外では、昼の東京が動いている。


車が走り、人が歩き、街はいつも通りだ。


だがこのテーブルでは、七年前の物語が今まさに書き換えられようとしていた。


城戸は続ける。


「神崎さん」


神崎は何も言わない。


城戸は言った。


「あなたは今、観客を集めています」


神崎は答える。


「あなたが教えてくれた」


城戸は笑った。


「そうでしたね」


そして静かに続ける。


「でも」


声が少し低くなる。


「観客は残酷です」


神崎は黙る。


城戸は言った。


「物語がつまらなくなれば」


少し間を置く。


「すぐに別の主人公を探す」


電話が静かになる。


神崎は言った。


「いいですよ」


城戸が聞く。


「何が」


神崎は言う。


「観客」


そして少し笑った。


「もっと増やす」


電話の向こうで、城戸はしばらく黙っていた。


やがて、ゆっくり言った。


「楽しみにしています」


通話が切れる。


店の奥の席に、静かな空気が戻る。


相良はスマートフォンをテーブルに置いた。


そして神崎を見た。


「面白いな」


神崎は笑わない。


相良は言う。


「お前」


少し身を乗り出す。


「城戸を怒らせた」


神崎は言った。


「怒ってない」


相良は笑った。


「怒ってる」


そして静かに言う。


「だから動く」


神崎は窓の外を見た。


六本木の昼の光が、街を照らしている。


神崎はゆっくり言った。


「望むところです」


七年前、自分は物語の中で消された。


だが今は違う。


今、この物語には――


三人の登場人物がいる。


神崎修司。

城戸正宗。

相良宗一。


そして、物語はまだ始まったばかりだった。

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