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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第25話「もう一人の登場人物」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。

彼女が本当に神崎を裏切ったのか、それとも誰かに利用されているのかは、まだ明確ではない。

神崎はスマートフォンの画面を見つめたまま、ほんの数秒だけ動かなかった。


真壁からのメッセージは短い。


「社長、もう一つ見つかりました」


その下に書かれている名前。


相良宗一。


神崎はゆっくりと息を吐き、スマートフォンをポケットに戻した。表情はすぐに元に戻る。だが胸の奥では、七年前の記憶が静かに動き始めていた。


会見室ではまだ質問が続いている。


「神崎さん、あなたは構造を壊すと言いましたが、具体的に誰と戦っているのですか?」


別の記者が続けた。


「メディアですか? それとも広告業界ですか?」


神崎はマイクに向かって答えた。


「誰か一人じゃない」


会場が少し静まる。


「構造そのものです」


城戸は腕を組んだまま、その言葉を聞いていた。


神崎は続ける。


「この構造は、一人の人間が作ったものじゃない。メディア、広告、芸能界、スポンサー。いろんな人間の都合が重なってできた」


そして少しだけ笑う。


「だから壊すのも簡単じゃない」


城戸はその言葉に頷いた。


「それは正しい」


会場の視線が再び城戸に集まる。


城戸は静かに言った。


「構造というものは、誰か一人が支配しているわけではありません。多くの人間が利益を共有している」


神崎は黙って聞いている。


城戸は続けた。


「つまり」


少し肩をすくめる。


「それを壊すということは、多くの人間を敵に回すということです」


神崎は短く答えた。


「知ってる」


城戸は少し笑った。


そのとき、別の記者が手を挙げた。


「城戸さん」


城戸が視線を向ける。


「神崎さんのスキャンダルについて、あなたは関与していないと断言できますか?」


会場が静まり返る。


神崎はその質問を聞きながら、わずかに視線を動かした。城戸の表情を見る。


城戸は数秒間沈黙した。


そして穏やかに答える。


「関与していません」


記者が続けて聞く。


「では、誰が?」


城戸は少し考えるように視線を落とした。


そして言った。


「芸能界は、複雑な世界です」


その言葉は、答えのようでいて答えではなかった。


神崎はそれを聞きながら、ゆっくりと口を開いた。


「一人いる」


会場の空気が変わる。


城戸が神崎を見る。


神崎は静かに言った。


「七年前」


少し間を置く。


「俺が消えると、一番得をした人間」


記者たちの視線が神崎に集まる。


神崎はマイクの前で言った。


「相良宗一」


その名前が会見室に落ちた瞬間、何人かの記者が顔を上げた。


芸能界の大物プロデューサー。


テレビ局とも広告業界とも深く繋がっている人物。


城戸はその名前を聞いても表情を変えなかった。


ただ、ほんのわずかだけ目を細めた。


「興味深いですね」


城戸が言う。


神崎は続けた。


「相良は、俺が主演する予定だった映画のプロデューサーだった」


数人の記者がメモを取る。


「俺が消えたあと、その映画は別の俳優で作られた」


神崎は淡々と話す。


「そしてその俳優は、その年の新人賞を全部取った」


会見室の空気が少し重くなる。


城戸は腕を組みながら聞いていた。


「つまり」


城戸が言った。


「あなたは相良宗一を疑っている」


神崎は答える。


「疑ってるだけじゃない」


城戸がわずかに首を傾ける。


神崎は静かに言った。


「取材してる」


その言葉に、会場がざわめいた。


記者の一人が思わず聞く。


「相良宗一を?」


神崎は頷く。


「もちろん」


その声は落ち着いていた。


まるで当然のことを言っているかのようだった。


城戸はその様子を見ながら、小さく笑った。


「なるほど」


そしてゆっくり言った。


「登場人物が増えてきましたね」


神崎は城戸を見た。


城戸は続けた。


「物語というものは、登場人物が増えるほど複雑になる」


少し間を置く。


「そして」


城戸の目が静かに光る。


「面白くなる」


神崎はその言葉を聞きながら思った。


この男は本当に恐ろしい。


普通の人間なら、自分の名前が出た時点で防御に回る。だが城戸は違う。状況そのものを楽しんでいる。


神崎はゆっくりとマイクから離れた。


そして静かに言った。


「次は」


会場の記者たちを見る。


「相良の番だ」


その言葉が落ちた瞬間、会見室の空気がまた大きく動いた。


七年前の物語が、今――


もう一度動き始めていた。

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