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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第24話「カメラの外」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。

芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、

メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。

報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。

神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。

神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。

神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



黒川くろかわ 真也しんや

週刊誌記者。

七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。

仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。

神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。

テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。

日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



有里ゆり

神崎の元恋人。

七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。

現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、

神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。

彼女が本当に神崎を裏切ったのか、それとも誰かに利用されているのかは、まだ明確ではない。

神崎の「あなたたちもこの物語の登場人物だ」という言葉が落ちたあと、会見室には奇妙な静けさが生まれた。


それは怒りでも反発でもない。むしろ、理解が追いついていないときの沈黙だった。


記者という仕事は、本来、物語を書く側だ。取材し、構成し、社会に提示する。自分たちは舞台の外側にいるはずの存在だった。


だが神崎は今、その立場をひっくり返そうとしている。


記者たちが登場人物だというのなら、この会見は単なる取材ではない。舞台そのものになる。


そのとき、一人の日本人記者がゆっくり手を挙げた。


年齢は五十代くらいだろうか。新聞社のベテランの顔つきだった。


「神崎さん」


会場の視線が集まる。


「あなたの言っていることは理解できます。ただ一つ、どうしても聞きたい」


神崎が頷く。


「あなたは、なぜそこまでやるんですか」


その質問には、少し違う重みがあった。


批判でも挑発でもない。


純粋な疑問だった。


神崎はすぐには答えなかった。マイクの前で数秒だけ考えた。


そして言った。


「たぶん」


少し言葉を選ぶ。


「同じことが、また起きるからです」


記者が眉をひそめる。


神崎は続けた。


「俺のことじゃない。別の誰かに」


会見室が静かになる。


「芸能人かもしれない。政治家かもしれない。普通の会社員かもしれない」


神崎は会場を見渡した。


「誰かが、物語の悪役にされる」


その声は静かだった。


「証拠もない。断定もない。ただ“そうかもしれない”という空気だけで」


数人の記者が目を伏せる。


神崎は続けた。


「そしてその人の人生が終わる」


その言葉のあと、数秒の沈黙が流れた。


城戸は腕を組みながら聞いている。


神崎は言った。


「俺はたまたま、生き残った」


七年前のスキャンダル。


あのとき、多くの仕事が消えた。CMは打ち切られ、ドラマは降板、映画も消えた。もし実業の道を見つけられなかったら、今ここには立っていない。


神崎は続けた。


「でも、ほとんどの人は戻ってこれない」


会場の空気が重くなる。


神崎は言った。


「だから」


少し笑う。


「カメラを向けた」


城戸がそこで口を開いた。


「正義感ですか」


神崎は首を振った。


「違う」


城戸が少し興味を示す。


神崎は答えた。


「ただの復讐」


会場がわずかにざわめく。


神崎は淡々と続けた。


「でも復讐ってさ、やってるうちに理由が変わる」


城戸は黙って聞いている。


神崎は言った。


「最初は個人的な怒りだった」


そして少し間を置く。


「でも調べ始めたら分かった」


神崎の声は少し低くなった。


「この構造」


「誰か一人を潰すためにあるんじゃない」


城戸の目が細くなる。


神崎は続けた。


「この構造は」


ゆっくり言う。


「誰でも潰せる」


その言葉は、会見室の空気を確実に変えた。


城戸はその空気の変化を感じていた。


この男は、単なる告発者ではない。構造そのものを問題にしている。


城戸はマイクに手を置いた。


「神崎さん」


神崎が見る。


城戸は穏やかに言った。


「あなたは危険ですね」


神崎は少し笑った。


「そう?」


城戸は頷いた。


「ええ」


そして続けた。


「構造を壊す人間は、いつも危険です」


その言葉は、警告のようでもあり、評価のようでもあった。


神崎は答える。


「壊さないと直らないこともある」


城戸は少しだけ笑った。


「ですが」


そしてゆっくり言う。


「壊したあと、どうするんですか」


神崎はその質問にすぐには答えなかった。


それは神崎自身も、まだ完全な答えを持っていない問いだった。


会見室の空気がまた静かになる。


そしてそのとき、神崎のスマートフォンがもう一度震えた。


真壁からのメッセージだった。


「社長」


「もう一つ見つかりました」


神崎は画面を見た。


そこに書かれていた名前を見た瞬間、神崎の表情がほんのわずか変わった。


その名前は――


相良宗一。


神崎の胸の奥で、何かがゆっくり動いた。


七年前の物語の、もう一人の登場人物。


そして、もしかすると。


この物語の本当の始まりを知っている男だった。

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