第18話「脚本家の会見」
『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧
■神崎 修司
本作の主人公。
元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。
現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。
芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、
メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。
■真壁 葵
パパラッチ・パパラッチの調査責任者。
元新聞記者。
報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。
理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。
神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。
■佐伯 圭一
神崎の元マネージャー。
神崎が新人だった頃から担当していた人物。
しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。
神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。
■黒川 真也
週刊誌記者。
七年前、神崎のスキャンダル記事を書いた人物。
仕事として記事を書いただけだと語る、典型的なゴシップ記者。
神崎にとっては「直接の加害者」ではあるが、同時にメディア構造の中で動く一人の歯車でもある。
■相良 宗一
芸能界の大物プロデューサー。
テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。
神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。
■城戸 正宗
広告業界の伝説的存在。
日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。
テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。
■有里
神崎の元恋人。
七年前のスキャンダル当時、神崎の最も近くにいた人物。
現在、週刊誌で「元恋人の独占告白」として登場し、
神崎にとって最も痛い形の攻撃材料として利用される。
彼女が本当に神崎を裏切ったのか、それとも誰かに利用されているのかは、まだ明確ではない。
城戸正宗の記者会見が発表されたのは、その夜の十時だった。
しかも翌日の昼。
場所は日本外国特派員協会。
国内のテレビ局ではなく、海外メディアの前で話すという形だった。
ニュースサイトの速報が一斉に出る。
「城戸正宗 緊急会見」
「メディア戦略顧問が沈黙破る」
「神崎修司問題に言及か」
神崎修司はバー「カサブランカ」を出てすぐ、真壁に電話をかけた。
「詳細」
真壁の声は少し早口だった。
「まだ出てない」
「でも」
神崎は歩きながら聞く。
六本木の夜はまだ騒がしい。
「でも?」
真壁は言った。
「テレビ局」
「全部来る」
神崎は小さく笑った。
「なるほど」
城戸正宗は、今までほとんど表に出ない人物だった。
広告業界の伝説。
政治のメディア戦略。
テレビ局の影の調整役。
裏側の人間。
その男が。
自分から。
会見を開く。
神崎は歩きながら言った。
「相当焦ってる」
真壁は言った。
「違う」
神崎が止まる。
「違う?」
真壁は静かに言った。
「舞台」
神崎は少し黙った。
城戸正宗。
あの男は。
焦るタイプじゃない。
神崎は言った。
「つまり」
真壁は答えた。
「物語を取り戻す」
神崎は小さく息を吐いた。
脚本家。
自分の物語を。
誰かに壊されるのを。
許すはずがない。
パパラッチ・パパラッチのオフィスは、夜なのに昼より忙しかった。
社員たちがモニターの前に集まっている。
ニュースサイト。
SNS。
テレビ局。
すべての動きを追っている。
真壁が言った。
「場所」
モニターを指す。
「外国特派員協会」
神崎は頷いた。
「賢い」
真壁が聞く。
「なぜ」
神崎は言った。
「日本の記者」
少し笑う。
「質問弱い」
真壁は苦笑した。
それは、半分事実だった。
日本の記者会見は、質問が予定調和になりやすい。
だが外国特派員協会は違う。
神崎は言った。
「でも」
真壁が見る。
神崎は続けた。
「一つ問題がある」
真壁が聞く。
「何」
神崎は言った。
「俺」
真壁の目が細くなる。
神崎は言った。
「呼ばれてない」
真壁は少し黙った。
そして言った。
「行きます?」
神崎は笑った。
「もちろん」
翌日。
日本外国特派員協会。
会見室は満席だった。
海外メディア。
国内テレビ局。
新聞社。
週刊誌。
そして。
カメラ。
フラッシュ。
記者たちのざわめき。
その中央に。
城戸正宗が座っていた。
七十歳。
白髪。
スーツ。
その姿は、政治家のようでもあり、経営者のようでもある。
そして何より。
落ち着いていた。
まるで。
この状況を。
ずっと前から知っていたように。
城戸はマイクを調整した。
会場が静かになる。
城戸は言った。
「今日は」
少し笑う。
「最近話題の」
「神崎修司さんについて」
会場がざわめく。
城戸は続けた。
「誤解があるようなので」
「説明します」
記者たちが一斉にメモを取る。
城戸は言った。
「まず」
「私は」
「神崎修司さんを」
少し間を置く。
「評価しています」
会場が一瞬止まった。
記者たちが顔を上げる。
城戸は続けた。
「彼は」
「優秀な起業家です」
「問題提起も面白い」
記者たちが戸惑う。
城戸は言った。
「ただ」
声が少し低くなる。
「彼は」
「誤解している」
会場が静まる。
城戸は言った。
「物語は」
少し笑う。
「壊すものではない」
そして。
ゆっくり言った。
「作るものだ」
その瞬間。
会場の後ろのドアが開いた。
神崎修司が。
そこに立っていた。




