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パパラッチ・パパラッチ  作者: 礼嗣


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第15話「告白」

『パパラッチ・パパラッチ』登場人物一覧

神崎かんざき 修司しゅうじ

本作の主人公。

元人気俳優で、七年前のスキャンダルによって芸能界を引退。

現在は実業家として成功し、「パパラッチ・パパラッチ」という会社を立ち上げた。


芸能人を追い回す記者を逆に取材するという前代未聞のビジネスを開始し、メディア・芸能界・スポンサー・政治の裏側にある「物語を作る構造」に戦いを挑む。



真壁まかべ あおい

パパラッチ・パパラッチの調査責任者。

元新聞記者。


報道の裏側を知る人物で、神崎の最も信頼する右腕。

理性的で冷静だが、神崎の手法の危うさを常に理解しており、物語の中で「倫理の視点」を持つ存在。


神崎の行動に疑問を持ちながらも、彼の覚悟を理解し、共に戦う。



佐伯さえき 圭一けいいち

神崎の元マネージャー。


神崎が新人だった頃から担当していた人物。

しかし七年前、相良宗一から金を受け取り、神崎のスキャンダル情報を週刊誌に流したことが発覚。


神崎の人生を壊すきっかけを作った「裏切り者」。



相良さがら 宗一そういち

芸能界の大物プロデューサー。


テレビ・映画・音楽業界に強い影響力を持つ人物。

神崎のスキャンダルの裏側で暗躍していた可能性が高い。



城戸きど 正宗まさむね

広告業界の伝説的存在。


日本最大の広告代理店の元会長で、現在は政府のメディア戦略顧問。

テレビ・広告・政治を横断する巨大な影響力を持つ。



ニュースが出たのは、午前七時三十二分だった。


テレビのワイドショーが始まる少し前の時間。通勤電車の中でスマートフォンを眺めている人間が一番多い時間帯。週刊誌のオンライン版が記事を出すには、もっとも効率のいいタイミングだった。


見出しは、刺激的だった。


「神崎修司の元恋人 独占告白」


記事のサムネイルには、一人の女性の写真が使われている。少し伏し目がちの表情。長い髪。目元にはわずかに涙の跡が見える。


名前は出ていない。


だが、神崎はその写真を見た瞬間に分かった。


有里。


 


パパラッチ・パパラッチのオフィスは、その朝、異様な静けさに包まれていた。


ニュースが出てから二十分。


社員たちは誰も声を出さずにモニターを見ている。ニュースサイトのアクセス数が、秒単位で増えていくのが画面に表示されている。


「三十万」


一人が小さく呟いた。


記事の閲覧数だった。


真壁葵が画面を見ながら言った。


「まだ伸びる」


神崎修司は、会議室の椅子に座ったまま動かなかった。


スマートフォンの画面に、記事が表示されている。


有里の写真。


七年ぶりに見る顔だった。


記事をスクロールする。


そこには、彼女の言葉が書かれていた。


 


「当時の神崎さんは、精神的に不安定でした」


 


神崎の指が止まる。


 


「薬物の噂が出たとき、私は信じたくなかった」


 


その次の文章。


 


「でも、今振り返ると、あの頃の彼は普通ではなかったと思います」


 


会議室の空気が少しだけ重くなる。


真壁が言った。


「記事」


少し間を置く。


「うまい」


神崎は答えない。


真壁は続けた。


「断定してない」


「でも」


モニターを指す。


「読んだ人はそう思う」


神崎は画面を見たままだった。


真壁は言った。


「典型的な」


少し苦笑する。


「印象操作」


神崎はようやくスマートフォンを机に置いた。


「うん」


声は落ち着いていた。


 


その瞬間、社員の一人が言った。


「トレンド入り」


モニターに表示される。


#神崎修司

#元恋人告白

#薬物疑惑


真壁は小さく息を吐いた。


「相良じゃない」


神崎が顔を上げる。


真壁は言った。


「もっと上」


神崎は理解していた。


これは、相良宗一のやり方ではない。


相良はもっと露骨だ。


もっと直接的に潰す。


だが、これは違う。


この手口は。


もっと静かで。


もっと上品で。


もっと残酷だ。


 


神崎は言った。


「城戸」


真壁は頷いた。


 


城戸正宗。


広告。


政治。


テレビ。


すべてを横断する男。


 


真壁は言った。


「世論を作る」


神崎は静かに言った。


「物語」


 


会議室が静まり返る。


 


社員の一人が言った。


「社長」


神崎が見る。


社員は言った。


「どうします」


神崎は答えなかった。


 


有里。


 


七年前の記憶が、頭の中に浮かぶ。


 


あの夜。


マンションの屋上。


二人で座っていた。


 


「修司」


有里が言った。


 


「もし全部なくなったら」


 


神崎が笑う。


 


「何が」


 


有里は空を見上げた。


 


「全部」


 


神崎はそのとき笑った。


 


若かった。


 


自分の人生が壊れるなんて、想像したこともなかった。


 


神崎はゆっくり目を閉じた。


 


そして、言った。


 


「真壁」


 


真壁が見る。


 


神崎は言った。


 


「有里」


 


少し間を置く。


 


「調べて」


 


真壁は黙った。


 


神崎は続けた。


 


「誰が」


 


その声は静かだった。


 


「脚本書いたか」


 


真壁はゆっくり頷いた。


 


「分かりました」


 


会議室の空気が少しだけ変わる。


 


社員の一人が言った。


 


「社長」


 


神崎が見る。


 


社員は言った。


 


「もし」


 


言葉を選ぶ。


 


「彼女が」


 


神崎は言った。


 


「大丈夫」


 


社員が止まる。


 


神崎は静かに言った。


 


「俺」


 


少し笑う。


 


「ヒーローじゃない」


 


真壁はその言葉を聞いて、少しだけ目を細めた。


 


神崎は窓の外を見た。


 


東京の朝は、もう完全に始まっている。


 


人が動く。


 


ニュースが流れる。


 


物語が広がる。


 


そして。


 


誰かが。


 


また脚本を書いている。


 


神崎修司は、静かに思った。


 


この戦いは。


 


まだ。


 


 


本当に。


 


 


始まったばかりだ。

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