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迷宮の怪物「ミノタウルス」より~ワッツ【ギリシャ神話】

挿絵(By みてみん)

ジョージ・フレデリック・ワッツ『ミノタウロス』1885年

The Minotaur  George Frederic Watts

(著作権フリーの画像を掲載しています)


──────────────────────



悪いのは誰だ?


俺の父親だ

欲深きミノス王


貴様がポセイドンに

約束通り雄牛を返してさえいれば

母も呪いを受けずに済んだのに


俺の母

淫らなパーシパエ

お前にも罪がある


呪いのもたらす欲情に

なぜ(あらが)わなかったのだ

神の思惑のまま 雄牛と交わり

俺という怪物を産んだ女


俺を愛さず

俺を殺さず

王宮のどこかで

きっと被害者面を晒している


海を()べる神よ

偉大なるポセイドンよ

俺の姿が見えるか?


あなたの怒りが行き着いた先が

この俺だ

人は恐れ

そして 裏で(わら)

醜い馬鹿な 牛頭の怪物よと


ポセイドンよ

ああ 俺をここから出してくれ


俺だけは なにも悪くない

それなのに迷宮に閉じ込められて

9年に一度しか送られてこない生贄を頼りに

小鳥で飢えを凌いでるんだ



──────────────────────


ギリシャ神話「ミノタウルス」



地中海、クレタ島。

兄弟間で王位を争っていたミノス王は、ポセイドン神に頼みます。

「私に美しい白い雄牛を授けて下さい。神の力を示すしるしとして」


俺の王権は神様のお墨付きなんだぞ。

そう誇示する狙い。

果たして、ミノス王は王様となることができました。


しかし、その後、彼はポセイドン神との約束を違えてしまいます。

終わったら、その雄牛は捧げ物としなさい。

そう言われていたのに、惜しくなってしまったのです。


あまりに美しい、素晴らしい牛だ。手放したくない。

そこで、しれっと他の牛を捧げ物にしたのです。


激怒したのはポセイドン神。

ミノス王の妻、パーシパエに呪いをかけました。

「お前は、雄牛に欲情し、思いを遂げたくな~る!」


あんまりな呪いだよなあ。

しかも、スパッとミノス王本人に報復すればいいのに。

周りを攻めるのも、本人が苦しんで有効かもしれないけど。

やり方がねちっこい、神様なのに。


一方、呪いを受けた妻パーシパエも、尋常じゃなかった。


ああ、雄牛が好き。欲望が抑えられないわ。

だけど、人間の身では、雄牛さんをその気にさせるなんてできない。

(そりゃそうだ)


ここで、パーシパエは妙なファイトをみせます。

名工ダイダロスに命じて作らせたのは、なんと雌牛の模型。

その中に入って、ようやく雄牛と交わりましたとさ。

つまり、雌牛の着ぐるみ的な物を身に付けて、雄牛に迫り、事を成したというわけ。

そこまでするんか。


その結果、産まれたのが「ミノタウルス」。

頭は牛、体は人間の化け物。

牛と人間との混血だからね。


やがて、成長したミノタウルスは狂暴化して、手に負えなくなった。

そこで、再び名工ダイダロスの登場。

迷宮を作らせて、その中にミノタウルスを閉じ込めます。


そして、「食料」として9年に一度、生贄を送り込む。

7人の少女と、7人の少年。なんの罪もない者たちを。


生贄として選ばれた少年少女は、完全に被害者です。

でも、ミノタウルス本人もまた、自分には咎も無いのに、半人の身に生まれた被害者とも言えます。


約束を違えた父王が諸悪の根源ではありますが。

妙な報復をした神様も神様ですよねえ。


自らの欲望に忠実だった母親。

そして、自分の産んだ子供だからこそ、殺す選択は無かった。


父王がミノタウルスを迷宮に押し込めたのも、他の国民に被害が及ばないようにする、苦渋の決断だったのかも。


結局、ミノタウルスは英雄テーセウスによって殺されます。

それが、お話の結末。

ミノタウルス本人にしてみれば、救いようのないバッドエンディング。



挿絵(By みてみん)

(テセウスとミノタウロス、6世紀の黒像陶器)



それ以外の道は無かったのだろうか?


キーとなるのは、ミノタウルス本人だと思う。


食人衝動が本能的に備わっていた。

ならば、他の肉で誤魔化して代用できないだろうか。


粗暴な行動を取ってしまう。

なるべく控えよう。そう、隔離&押し込めコースを回避する程度でいい。

なんといっても、自分は貴い王子様。

許されるボーダーは、一般庶民よりは遥かに低い。


そうやって、周りを窺い、折り合いをつけていったら。

わりと何とかなったんじゃないかな……。


だけど。

俺は悪くない。被害者なんだ。

だから何をやったって、悪いのはあいつらなんだ!


そんなふうに思考停止してしまったら、破滅以外の未来は訪れない。


確かに被害者なのだけれど。

その考えだけに囚われてしまったら、救いの出口には辿り着けない。

怨嗟の迷宮(ラビュリントス)で、迷い続けるだけ。


自分のために、自分は何をできるか。

それを考えることができる「知性」があったならば。

絶望という闇に呑まれずにすむ。

道は閉じず、細くとも繋がっていくのではないだろうか。


──────────────────────


読んで頂き、ありがとうございました。


北欧神話で、短編を書いています。

AIで作ったイラスト付きです ↓


挿絵(By みてみん)


物語で楽しむ北欧神話:オーディンとミーミル(隻眼の主神と生首の賢者)~滅びに挑む「最上の負けかた」

https://ncode.syosetu.com/n3439lo/


ぜひ読みに来てね!

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