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伝承「オルフェウスの首を抱くトラキアの乙女」より ~ギュスターヴ・モロー【ギリシャ神話】

挿絵(By みてみん)

Gustave Moreau 1865年

Jeune fille thrace portant la tête d'Orphée

(著作権フリーの画像を掲載しています)


─────────────────────────



歌う生首が 川を流れてきたの

私には分かったわ

これはオルフェウス

殺され 体をバラバラにされた

悲劇の主人公


ああ 竪琴(たてごと)

オルフェウスの(たましい)を乗せて来たのね


川の せせらぎよ

彼の歌声を呼び起こし

伴奏してあげていたのね


もう()けない

もう歌えないと

彷徨(さまよ)うだけの日々が

いつか私にも来るのだろうか


それとも

体が引き裂かれるほどの哀しみに襲われ

バラバラに壊れてから

再び寄せ集めた時に

初めて 魂は歌い出すのだろうか




─────────────────────────


ギリシャ神話 「オルフェウス」



オルフェウスは、アポロン(音楽・芸術の神)の息子。

母親は、詩の女神カリオペ。


芸術界では文句なしのサラブレッドです。

彼は、ことのほか竪琴(たてごと)に秀でていました。


オルフェウスが竪琴を奏でれば、動物や樹木、岩や川さえも魅了し、動かす。

またまた~(笑)って、眉唾レベルの評判を取っていた彼でしたが、そのチートな技量が後に立証されます。



やがて、オルフェウスはニンフ(精霊)と恋に落ちました。

彼女の名は、エウリュディケ。

しかし、結婚してからすぐに、毒蛇に噛まれて死んでしまいます。


まったく予想もしていなかった事故。

オルフェウスは嘆きました。

なによりも納得できない。

そこで、彼は死者の国である「冥界」に行く決意をします。


とはいえ、冥界です。平たく言えば地獄。

生きてる人間をホイホイ入れてくれるわけがありません。


しかし、オルフェウスは全てを竪琴で解決していきます。


冥界の入口にあるステュクス川。

「生者を船に乗せるわけにはいかぬ」

渡し守のカロンは、当然オルフェウスを拒みました。

しかし。


「僕の竪琴を聞いてくれ」

あまりにも素晴らしい演奏に、カロンはノックダウン。

船に乗せてしまいます。しかも、船賃は銀貨一枚の決まりなのに、無賃乗船。

芸術の力だけで、死の国の掟すら曲げた男、オルフェウス。



冥界の入り口には、門番の犬が見張っていました。

三つの頭を持つ犬、ケルベロスです。


挿絵(By みてみん)

(ChatGPTで作ったケルベロス。チャット君ってば、こういうのは得意)



恐ろし気な怪物を前に、またもや竪琴を繰り出すオルフェウス。

弾いて、歌って。

優しい音色と歌声に、すやすやとケルベロスは寝入ってしまいました。

芸術の力で、死の門番をも癒やす男、オルフェウス。



そして、ついに冥界の王ハデスの元へと辿り着きました。

「エウリュディケを返して下さい」

「無理に決まっているだろう」


にべもなく断られたオルフェウスは、すぐさま竪琴交渉に切り替えました。

「僕の歌を聞けえ~っ」

マクロスかな……。


オルフェウスの歌は、冥界の暗闇に響き渡りました。

あたりに満ちていた苦しみや絶望が、優しく包み込まれていく。

亡者たちの涙は止まり、吹き荒れていた風は静まり。

感動のフィナーレ!


冥界の王の心すら芸術の力で動す男、オルフェウス無双。

妃のペルセポネーも同情し、ハデス王を説得しました。

結果――


エウリュディケを地上に連れて帰るのを許す。

ただし、この冥界から地上に出るまで 決して振り返ってはならぬ――



で、御多分に漏れず。

出口の光が見えた瞬間、オルフェウスは振り返ってしまうわけです。


その途端。

エウリュディケは薄い霧のように消え、二度と取り戻せなくなってしまいました。


うん。見るなって言ったって、無理だよね。

イザナギだって、振り返ってイザナミを見ちゃったもん。(by古事記)



それからというもの。

オルフェウスは悲しみに沈み、女性を遠ざけて過ごしました。

新たな恋愛をする気になれなかったのでしょう。


ところが、それを恨みに思った女たちが、恐ろしい犯行をしでかします。

ディオニュソス神のお祭りで、マイナデスと呼ばれる女信者が、半狂乱になり、寄ってたかってオルフェウスを八つ裂きにしてしまうのです。


挿絵(By みてみん)

エミール・ビン Émile Jean-Baptiste Philippe Bin

オルフェウスの死 La muerte de Orfeo 1874年

(著作権フリーの画像を掲載しています)




そして、遺体はへブロス川に投げ込まれました。


水に浮かんだオルフェウスの首と竪琴は、それでも歌い続けたと伝えられています。


挿絵(By みてみん)

フェルナン・クノップフ Fernand Khnopff

オルフェウス Orphée 1893年

(著作権フリーの画像を掲載しています)



この終盤が納得できないんだよなあ……。

相手にされなかっただけで、こんな集団猟奇殺人をするかね。

そこまでの怒りが湧くほど、プライドが高かった? 女たち全員が?

そこまでゲットしたいほど、オルフェウスが好物件だった?


色々調べて考えてみた結果。

これは、そのままの物語(ストーリー)ではなくて。

何かを訴えたいために追加されたエピソードなのかと解釈した次第です。


つまり。

「ディオニュソス神のお祭り」というのがポイント。

ディオニュソスは、ワインの神さま。

お酒……ひいては陶酔、歓喜、狂気など、人間の原始的なエネルギーを司る。


対して、オルフェウスはアポロン神の息子です。

アポロンは、言わずと知れた芸術の神さま。秩序最高・理性重視。

絵画や音楽など、主に「形にされた美」の管轄。


だけどさ。

あまりにも頭で考えてるだけじゃ、芸術作品って生まれないんじゃない?


ぶわ~っとくる人間の原始的な感情。欲望。陶酔。狂乱。

そんな野蛮なエネルギーが、芸術を生み出す為には必要なんだよ。


だから、一回全部ぶっ壊して。

バラバラになっても、それは死じゃない。

破壊から新たに生まれるものこそが芸術で。

そして、永遠に引き継がれていくものなんだよ――。



という結論で、この詩を書いた次第です。


ギリシャ神話、面白いですね。

そして深い。

調べ出すと止まらない~。長くなっちゃった。

お読み頂き、ありがとうございました。

『名画の詩集』はルドン編とクリムト編もあります。そちらもぜひご覧下さいませ。

お久しぶりの三作目になります。引き続き投稿していきますので、どうぞよろしくお願い致します。

ブックマークや評価をして頂けたら、とっても嬉しいです。

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