第1話 転生?じゃあのんびり生きさせてください!
「ふあぁ、眠い……」
高校生活が始まって早3か月。毎日くたくたで、寝ても寝ても疲れがとれない気がする。
重い足取りで学校への往路を歩いてゆく。と――
「ドン!」
──突然、何かがぶつかってきて、猛烈な痛みに襲われた。一拍遅れて、車に轢かれたのだと気づく。
「大丈夫ですか!?」
わたしを心配する声が、あちこちから聞こえる。けどもう、それに答える力は残っていなかった。
どうやら、このまま死んでしまうらしい。
最期、救急車のサイレンの音が、かすかに聞こえた。
「ぽんっ」
死んだはずのわたしの脳内に、突如スクリーンが浮かび上がった。
「あれ、わたしは死んだんじゃ……」
いや、まだ死んでないのかもしれない。となると、これは走馬灯か……けど、走馬灯って人生の出来事を思い出すんじゃなかったっけ。
やっぱり走馬灯じゃない気がする。わたしの意識の中だけの世界みたい。辺りは真っ暗で、スクリーンだけが鮮明に浮かび上がる。何これ。意味わかんない。
『アナタハ、コウツウジコニヨッテナクナリマシタ』
突然文字が出てきた。やっぱり、わたしは交通事故で死んだらしい。カタカナだけだから読みづらいけど。
『シカシ、アナタハコウウンナコトニ、ベツノセカイニテンセイスルコトガカノウデス』
ふむふむ、別の世界に転生することが可能……って、転生!? なんか、アニメとかでよくあるような展開になってきた。現実ではまず起こりえないと思ってたのに。転生ものはよく観てたからちょっと嬉しい……って、危ない危ない。この状況に納得しかけてた。
『ドンナセカイヲゴショモウデスカ?』
え〜、じゃあ、魔法使いになりたい!けど……どうすれば伝えられるんだろ?
『デハ、マホウガシヨウカノウナセカイヲケンサクシマス……』
おっ、考えたことがそのまま伝わるんだ。便利なシステム!
『マホウガシヨウカノウナセカイハオオスギマス。サラニシボリコミジョウケンヲツイカシテクダサイ』
やっぱ魔法が使える世界は多すぎたか。まあそうだよね。
『ヨロシケレバ、コチラデイクツカケイコウノアンヲテイジスルコトモデキマス』
あ、じゃあお願いしま〜す!
『デハマズ、ユウシャトシテマモノヲトウバツシテイクコトガデキルヨウナセカイハドウデショウ』
う〜ん、パスで。ぜったい忙しいじゃん、それ。わたしはもっとのんびりとした生活を送りたいんです。生前があんなだったから……
『ナルホド。ソレデハ、コノヨウナセカイハドウデショウ。シゼンユタカデ、ヒトビトハヤサシク、オオキナアラソイハアリマセン。マモノモイマスガ、ツヨスギルマモノヤ、ニンゲンニセッキョクテキニコウゲキスルヨウナマモノハホトンドイマセン』
お〜! それそれ! そんな世界がいい!
『ワカリマシタ。デハ、ドンナヒトトシテテンセイスルカヲキメテクダサイ。ネンレイヤガイケンナドデス。フロウフシニナリタイトイウヒトモイマスネ。』
年齢か……う〜ん、ちょっとだけ小さくなろっかな……けど小さすぎてもあれだから、13歳くらいで! 外見は、そんなすごい変えたくはないけど、なんとなく異世界っぽくなりたいから……白髪がいい! 不老不死は一旦いいかな。あとの設定はおまかせで!
『ショウチシマシタ。デハ、イマカラテンセイイタシマス。テンセイゴニ、《イセカイセイカツノススメ》トイウホンガオイテアルノデ、カナラズメヲトオシテクダサイ』
『異世界生活のすすめ』……ルールブックみたいなものかな?
『ア、ツタエワスレテイマシタガ、《リメロップ》トイウセカイノ《アマリス》トイウムラニオクリマス。ソレデハ、ヨイイセカイライフヲ!』
おっけー、リメロップっていう世界のアマリス村ね。世界に名前があるんだ……生前の世界で言う国みたいな……ってちょっと待って! またこの状況に納得しかけてたけど、現実で転生ってどういうこと? あっ、スクリーン消えた。待って待って、フェードアウトして真っ白に──
こうしてわたしは、リメロップのアマリス村に──飛ばされた。




