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第4話「新規勢」

「以上により4金 イヴァラ・トーチの階級を6銀に降格。及びに単独行動に関する処罰を9月前まで言い渡す」


 「だとよ」


 中央に鎮座するペンギンロボットとそれが置いてある円卓を囲む10人の表情はバラバラであった


 「まっ…!待ちなさいよ!!本当にあんた達これでいいの!!??だって……!実際先のアルベルの湿地の件だってイヴァラが居たから謝恩だって貰えた!違うの!??」


 「あのなぁ同じこと何回も言うなよ。妹のことになると本当に良く吠えるよなお前…俺そういところマジで嫌いなんだよな。なんつーか品がねぇよ」


 銀色に輝くネックレスを付ける赤髪の男は肘をつき欠伸をしながら女から睨まれる。


 女の名前は「アンナ・レオネット」

6銀のうちの一人であり、デュアコア内であることをきっかけにイヴァラの姉となる。(実際に血の繋がりがある訳では無い)イヴァラと行動を共にすることが多く、常に青いワンピースとつば広帽子を着用し高く着飾っている。


 そんなアンナと睨み合う男

 「エッタ・フロイデン」

 6銀の内の一人である彼は性格に難があり、数多くの実績もあるがそれと共に数多く争いごとの種をうむことから、以前は4金であったが今は6銀に身を置いている。

 なお本人は反省もしていないし昇格の欲もない。


 「でもアンナさんペンロボの決定は絶対だし…」


 オドオドとした口調で場を沈めようとする大きな杖を背中に装備する明らかに魔法使いである緑髪の少女は、またしてもエッタ同様、アンナの鋭い眼光の餌食になる。


 「ほんと信じられない…4金の座降格はまだしも処罰って…イヴァラはまだ何も言ってないじゃない!!」


 「そりゃやましいことがあるからなんじゃねぇのかよ?俺が知ったこっちゃねぇけど」


 エッタはそう言うと横目で俯いて微動だにしない甲冑を外したイヴァラを見る。


 「あぁもう…!」

アンナは頭を掻きむしりイヴァラの肩を揺らす


 「イヴァラ!しっかり説明しなさい!じゃないとあなた本当に辞めさせられるわよ!?イヴァラ!」


 「…別にもうやめてもいい…」

 涙ぐんだかすれた声で弱音を吐くイヴァラに円卓を囲むメンバーは困惑する。


 「まぁ前々から単独行動に関していえばイヴァラさん目立っていたのは事実。最近だって大陸間行き来もちょっと多すぎて報告書との差異にも4金だからと目を瞑っていたふしも大いにあった。」

そう語るのはいかにも頭脳といったようなメガネをかけている白衣姿のプレイヤー

6銀シュルル・メイエ

 

「そのツケが回ってきたって感じではないかな?」

 

アンナは黙り込む。下を見たまま微動だにしないイヴァラを横目に。


 「あの人はこんな大事な時にも来ないんだなぁ…」

 そう腕を頭の後ろに回してリラックスした状態で上を見るのは4金のうちの一人、ベル・ラテランド。


 「あいつはそういうやつだ。テキストでしか関わってこねぇし、こういう面倒事は全部NPCのペンロボに任せっきりだ。全く意味わかんねぇよ」


 エッタはそう言うと席を立つ。


 「んじゃ。俺やる事あるからあとお好きにどーぞ」


 「んな!待ちなさいよエッタ!!」

 テーブルに両手をつき、アンナは声を荒らげる。


 「あ?待つって何をだよ。もう決まったことだろうが」


 「は、薄情者!!仲間じゃない!なんでお前はいつもそうやって…!」


 「あのなぁ…俺がお前らをいつ仲間だって――」


 アンナは熱くなり、左手から傘のようなものを取り、エッタは構える。

 危険を察知した他のメンバーも場を収めようと同様に各々の武器を出そうとしたその瞬間、その場の全員のディスプレイが起動する。

 それぞれのディスプレイには簡潔に、そして淡々と文字が並べられていた。


【リリーさんおめでとうございます】


 【リリーさんが『極・天地開墾の杖』『極・アストロークのマント』を獲得しました。なんてついているんだ!!】


部屋を静寂が支配する。


 イヴァラが顔をあげ目を丸くする。

 

 そして残りの4金2人のうちの1人であり、今の今までだんまりを決め込み、腕を組み深々と甲冑をかぶる、アンデット種【デュラハン】であるナノ・テト

 ディアマントの創立者にして現トップ、ネウラの初期からの右腕である彼は口を開く。

 


 「君たち落ち着け、仕事だ。」

 

 



───────────────────────

 



デュアルコア・オンラインには5つのガチャが存在する。


 1つ目は『ノーマルガチャ』

 内容は装備やアイテム作成に必要な素材が排出対象であり、デイリーログインボーナスやイベント報酬などにより獲得出来る「光明星の欠片」を5つ集めることで1回まわせることが出来る。


 2つ目は『レアガチャ』

 内容はノーマルガチャで排出される素材に加え、完成された装備やアイテムが排出対象であり、運営からの配布や、イベント報酬などにより獲得出来る「レアガチャチケット」を使用することで1回まわすことが出来る。

 唯一課金で引くことが出来ないガチャであり、このレアガチャからしか排出されない高ランクアイテムや装備がある為、それらの希少性が高い。


 3つ目は『ウルトラガチャ』

 内容はレアガチャとほとんど変わりないが、排出確率が低いペットも排出対象となる。

 現実的にペットを引くガチャがこのウルトラガチャしかない為、レア度を問わずペットの希少性が高い。

 光明石の上位互換である「陽明石の欠片」を5つ集めると1回まわすことが可能。


 4つ目は『シーズンプレミアムガチャ』

 春夏秋冬それぞれの季節に計4回、1週間限定開催ガチャであり、レアリティ「超」のワンランク上の「真」や「天」などの装備を作成するために必要なチケットや限定スキンが低確率で排出される。課金でしか入手方法がない「神烙の魂」を1個で1回ガチャをまわすことが可能。

 ペットは排出されず、スキンやチケット以外のラインナップはウルトラガチャと変わらないため、お金に余裕がある人が引くガチャという共通認識がある。


 5つ目は『ゴッドガチャ』

 いつ引けるのか、いつ開催されるか分からないガチャ

 ラインナップは非公開であるが、ただのレアガチャと変わらないという情報があるが真偽は定かではない。

 ガチャを引くために必要なアイテムも不明であり、入手方法も不明である。

 2032年と2035年に2回開催されたという情報もあるが引けたものは数人しかいなかったという、謎に包まれたガチャ


 ――――――――――――――――――――――――



 

 ―スパイン王国 カルバン森林の入口―


 

 「お〜い!こっちこっち〜!」

 

 「ハァッ…!ハァッ…!由美ちゃぁぁあん!!」

 

 そう叫びながら、手を振る少女に一直線へ向かう、いかにも初期装備の少女がそこには居た。


 現実の名前を『篠崎 莉々菜』、そしてゲーム内での名前を『リリー』と設定したその少女は、喜びの表情を浮かべながら無邪気に草原を駆ける。


 手を振っていた少女にたどり着いたリリーは、おまたせと言いながら持っていた杖をインベントリにしまう。


 「現実の名前でよ・ぶ・なぁ〜!」

 おでこにデコピンをされたリリーは額に手を当てる。


 「うわっ...!ごめんごめん…ついつい」

 そうデコピンをした少女が開くディスプレイの上には『エマ』と表示されていた。


 「えっと…!じゃあエマちゃん!今日はよろしく…ね!」

 

「うんうんよろしくよろしく〜!リリーちゃん!」

 

 腕を組み、頷くエマと呼ばれるその少女は、本名『梶乃 由美』

 現実でのリリーの親友であり、幼い頃から交流があるリリーの数少ない友人であった。


 エマと同じ中学校に在籍するリリーは、一昨日エマにデュアコアに誘われ、今日初めてプレイをした「超」がつくほどの初心者であった。


 「ところでリリーちゃんは何かログインボーナスとかは受け取ってないの?」


 「ログイン?ボーナス…?何かなそれ…?」

 人差し指を口に当て、キョトンとした顔でリリーはエマを見る。

都内屈指のお嬢様学校に所属し、サブカルとは無縁だったリリーは、ゲーマーであるエマの発言に、頭の上に疑問符を浮かべる。


「うーんなんて言ったらいいかな…?とりあえずゲームに入ると、使えるアイテムだったり装備が貰えるシステムって認識でいいかも!」


 「な、なるほど!」

 閃いた!と言わんばかりの表情でリリーはしばしエマを見つめる。


 「……で〜えっとそれは…どこで貰えるの?」


 「リリーちゃん...それであなたよく待ち合わせ場所まで来れたわね……」

 

 少々ひきつった表情でエマは手とり足とりゲームシステムについて教え始める。

 リリーの頭の上には無数の疑問符が浮かんでいるが、エマは黙々と基本操作やディスプレイ操作、チャットやアイテム欄の確認など、必要にして十分なデュアコアの基礎をリリーに教えた。


 「そして最後が…ってリリーちゃん聞いてる!?」


 「う、うん聞いてる…!…聞いてる!」

 リリーはヒラヒラと舞う蝶々との戯れをやめ、すぐさま背筋を伸ばす。


 「まぁいいや…とりあえず言った通りにメールボックスを開いてみて」


「わ、わかった!」

 リリーはそう言うと、慣れない手つきでディスプレイを操作し始める。


 

 【豪華新規ログインボーナス】


 2人はメールボックスの1番上に表示された文言に目を通す。


 「え…なんだろうこれ…何かのイベントかしら…?」

 「かなあ…?」


 戸惑うエマに、何も分からないリリーは相槌を打つ。


 「私が一ヶ月前に始めた時にはなかったのになぁ…ちぇえ…」

エマの表情が少し曇る

 

「まぁとりあえず開いてみようか…私開けていいわよね?」

「うん全然いいよ!」

 エマはリリーの許可を取り、慣れた手つきでログインボーナスのメールを開封する。


 

 【ゴッドガチャチケット×20】

 【ペットチケット】


 

 「な、なにこれゴッド…チケット…?」


 「つ…強そうだね…!」

 何となくの感想しか出てこないリリーと、聞いた事も見た事もないアイテムに困惑するエマは、少しの間口をぽかんと開ける。


 「と、とりあえず使ってみる?」

 ガチャチケットという単語を辛うじて理解できたエマは、リリーに提案する。


 「ガチャガチャができるんだよね?うんいいと思う!」


アイテム欄に移動したガチャチケットをタップするとガチャ画面に移行し、そこには「10連」のボタンがひとつと、金色の装飾が施された神々しいガチャマシーンが表示されていた。

 

「単発では回せないのかしら?…」

 良いのが欲しいとワクワクするリリーを横目に、10連しか出来ないそのガチャに異様さを覚えるエマは、その見た事も聞いたこともないガチャ画面の「10連」ボタンをゆっくりと押す。


 すると、ガチャ画面を表示していたディスプレイごと消え、白い真珠のような球体が、10個均等に並んで宙に浮かび上がる。

 そして左から順にその球体が割れ、最小化されたアイテムや装備が球体の中から姿を現す。

 これが基本的なデュアコアのガチャ演出であり、どのガチャにも共通したものとなっている。


 しかし、宙に表示された球体は白色ではなく、黒色をしていた。


 「えっ!?何?」

 思わず声を出してしまったエマは、そのまま口を開けながら次々と割れるその黒色の球体を目で追う。


 最後の1つが割れ、エマは安堵にも似た表情を見せる。

黒色の球体から出てきたアイテムや装備は、一応まだ初心者のエマにも理解出来る範囲の物ばかりであった。

 

 「なんだ…普通のアイテムじゃない…なんか怖かったぁ…」

 「良いのある!?」

目をキラキラさせるリリーに、自分で引いた微妙なガチャ結果をどう伝えるか悩んだ。


 「あ……うん...あるある!」

 そう切り出すエマは左から7つ目の装備を指さす。


「特にこれとかは序盤で結構使えたりするんだよ!」


 「へ〜!」

 宙に浮かぶアイテムや装備を、キラキラした目で眺めながら、リリーはアイテムをタップする。


 「あ、とじちゃった…」

 間違えてアイテム同士の余白を触ってしまったリリーは、再び出現したガチャ画面に表示されている「10連」ボタンに目をつける。


 「エマちゃん!次私回してみてもいい?」

リリーは好奇心から、横にたっているエマに問いかける。


 「全然大丈夫だよー!さっきは流れで私が引いちゃったけど、元はといえばリリーちゃんのチケットなんだから」


 「そっか...分かった!」

 そう返事をしたリリーは、再び「10連」ボタンを見る。


 そーっと腕を動かし、ゆっくりとボタンを押す指に力を入れ、離す。


 「おお!回せた!」


 ディスプレイが消え、先程と同じような光景が二人の目の前に広がる。


 しかし、前回とは全く異なる色をした球体が二人の前に1つ浮かび上がる。


 左から2番目、そして右から4番目のその「金色」に輝く2つ球体は、あまりにも大量の光を放ち、二人の視界を奪う。

 

 「うわ…!眩しい…!」

 あまりの光量にリリーは両手で目を覆う。


 「なっ…なにこれ…!」

 片手で光を遮り、エマは謎の球体を目を薄めながら伺う。

 

 ひとつひとつ球体が割れてゆき、最後の球体からアイテムが出現する。

 それを指の隙間から確認したエマは、謎の球体があった2箇所に視点を移す。


 「な、なにこれ……」


10個のアイテムや装備が並ぶ中、まず左から2番目。

 そこにあったのは禍々しいエフェクトに包まれた1本の『杖』だった。


黒色の炎が杖の周囲を囲む中、エマは二言目を失う。


 「もう大丈夫…?」

 リリーはゆっくりと両手をどけて、真っ先に視界に入った"それ"を凝視する。


 「エマちゃんこれは…何…?」

 

 「わ、分からない…」

エマはその杖を見たまま、横から顔を覗かせてくるリリーに答える。


 そして右から4番目。

 そこには赤と黒の模様が目を引くマントがあった。


 「いったいなんなの……これ……」


 そしてガチャ画面表示が終了したその時、リリーのディスプレイにメッセージが届く。


【おめでとうございます。あなたの功績をワールドチャットに送信しますか?】


 「ん?何だろう…?ワールド…チャット?これは送信した方がいいのかな?」


 

 「いや待ってリリーちゃん」

 エマはそう言うとリリーの腕を掴む


 「あっ…」

 

エマの抑制も虚しく、送信ボタンに手を触れてしまったリリーは慌てて謝る。


 「ご、ごめん!」


 「ま、まぁ多分大丈夫だと思うけど…ちょっと慎重になりなさいよ?」

エマがジト目でリリーにがんを飛ばす。

 

 「まぁいいわちょっとお兄さんに聞いてくる」


 「お兄さん…?」

 リリーがキョトン顔で問う。


 「うん私の兄。このゲームにとても詳しいからちょっと1回ログアウトして一通り聞いてくる」


 「そ、そうなんだ!」


 「ちょっとまっててね!さっきのアイテム触ったりするのは禁止ね…危ない系かもしれないんだから」

 

エマはそう言いながら自身のディスプレイを、操作する。


 「わ、分かったよ!絶対しない!」


 ディスプレイでなにかの操作を終えたエマは振り向き、リリーの両手を上にあげて握る。


 「すぐもどるから…!」

 

 「うん…早くね!」


 そう言うとエマは足元から姿を消していく。

 

1人フィールドに取り残されたリリーはメッセージボックスを閉じ、アイテムボックスを開く。


 「あったこれだ…」

 リリーは『ペットチケット』をタップし、詳細を開く。


 【1枚につきデュアコア内の全ペットから1匹ランダムで排出。(レジェンドレア、期間限定も含む)】


 「ペット…!」

 リリーの顔はとろけていた。


 それもそのはず、リリーの家庭はペット禁止であり、幼い頃からペットを欲しがっていたリリーにとっては、最初からこのチケットは、どのアイテムよりも目を引くものであった。


 リリーは、チケットの詳細に表示されている【使用する】ボタンを躊躇いなく押す。

 

 「これで貰えるのかな…?」


 別に怒られる訳でもないが、エマがいないか横目でチラチラと周りを確認する。


 すると、リリーの頭の上から何かが落ちてくる。


 「痛っ!」

リリーは頭に手を当てる。


 「卵…?」

 空から落ちてきたオレンジ色の卵はリリーの前方で回転を止め、その表面にヒビが入る。


 「おお…!」


 初めてのペットに興奮を隠しきれないリリーは目を光らせる。

 

そしてそれは卵から姿を現す。



 「ハ、ハムスター…?」


 体長は60cmくらいだろうか、リリーが想像していた犬や猫とは違い、ハムスターのような顔をした二足歩行の生き物が出現する。

 その綺麗な二頭身は、ペットというよりもマスコットとという表現の方が正しい。


 「こ、こんにちは…!ハムスター…さん…?」

リリーはぎこちなく挨拶する。



 

 「おぅよろしく」

 

 

(え…?)


 

 「それと、俺。リスな?」



 (えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええ!!???)

 

 

 

 

 


 

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