第14章:見えざる者たちを追って
「だから言っただろ、ジェイルに変なことを教えるなって……」
――呆れたように、あの魔術師がため息をついた。
「ん? 別に私のせいじゃないよ? ジェイルが大胆すぎただけ。私はちょっと背中を押しただけで、走り出したのは彼自身だもん。」
――頬をふくらませてみせる。
「でもさ、もしあの子の気持ちを傷つけたら、きっとあなたのこと見限っちゃうよ? そうなったら、私を止める人もいなくなるし……」
「チッ……」
男は舌打ちした。
「最初からそのつもりだったんだろ、お前。」
かなり苛立っている。
「ふふ、ちょっとした遊びのつもりだったのに、結果的に私に都合がいい展開になっちゃったみたい。安心して、約束は守るつもりだよ、魔術師さん。」
「はぁ……どうして俺はガキに振り回されてるんだ……」
頭を押さえて深いため息。
まあ、こうなるのは自業自得かも。悪趣味だけど、どう転ぶか見届けたい気分。
「へぇ、やっと信頼されたのかな?」
隣ではジェイルがすやすやと眠っていた。まるで警戒心ゼロ。
「まあ、色々あったし、疲れて当然だね。」
私は魔術師の部屋を出る。
「そうかもな……」
男は少し歩き、外に出ると欄干にもたれかかり煙草に火をつけた。
「なあ、あの時ジェイルを止めた理由、分かるか?」
――一週間前の出来事。彼がジェイルを止めたのは、私に別の策があると気づいたからだろう。
「ふふ、バレてたんだね。私の“本質”が封印されてるとはいえ、完全に無力ってわけじゃない。制限はあるけど、少しくらいは“魔”の力を使えるのさ。」
「でもさ、もし本気を出してたら、止めなかった?」
「さあな。俺はお前を完全には信用していない。……お前は珍しい“標本”だからな。」
――標本? それ、褒め言葉じゃないよね。まあ、実際、私は異形の存在だけど。
「ジェイルは子供だ。油断してお前に刃を向ければ、魂を抜かれていたかもしれん。……まさか“魂の移し替え”を狙ってたのか?」
「ふふ、やっぱり鋭いね。その通り。あの場で刺されていたら、彼の魂を喰って傷を移すつもりだった。」
「……なるほどな。」
深く息を吐く男。その顔にはどこか安堵が浮かんでいる。
「つまり、自分を囮にしてたってわけか。」
「うん、そういうこと。」
私はポケットからグラノーラバーを取り出し、もぐもぐと食べ始めた。
「おい、それ俺のじゃないか?」
「……」
――やばっ。
「ご、ごめん! でもおいしいんだもん!」
そう叫びながら走り出す。
「こら! 待てコラ、返せぇ!」
***
それから数週間後、船はようやく目的地へ到着した。
聞くところによると、この船は一度ベラクルスに寄港してから、最終的にベルギーのアントワープへ向かうらしい。
……最初から知ってたら、あんな約束なんてしなかったのに。
ともかく、今はメキシコ・ベラクルス。
ここは――まったく違う世界だ。
色鮮やかな港町、湿った空気、人々の絶え間ないおしゃべり。
雷のような声の屋台商人たち。
そして太陽は、まるで私を焼き尽くそうとしている。
音、音、音。どこもかしこも騒がしい。
マンハッタンも賑やかだったけど、ここは次元が違う。
壁にはグラフィティ、宗教画のような壁画、そしてタコスの広告。
……何一つ読めないけど。
歪んだヤシの木、ブレーキ音を立てるバス。
――要するに、うるさい。
「この場所、好きじゃない……暑すぎる……」
小さな日傘で顔を隠しながら呟く。
「みんな同じ顔に見えるし、区別がつかない。」
「彼らからすれば、アジア人の方が“同じ顔”に見えるだろうな。」
魔術師が皮肉っぽく言った。
「ねぇ、暑くて死にそう。何か涼しい服買ってよ。」
「軟弱者め。この程度の暑さで音を上げるな。」
後ろからジェイルの声。
振り向くと、
「なによ! あんたの顔、真っ赤じゃん!」
今にも倒れそう。
正午を過ぎた太陽の下、熱気は限界を超えていた。
「ふぅ……とりあえず飲み物を探そう。」
――魔術師は渋々言い、三人で歩き出した。
街の店はどこも混雑していて、ようやく空いたテーブルを見つけて腰を下ろす。
「で、結局ここに来た理由は?」
「この辺には“ヨウカイ”に似た存在がいる。こっちでは“チャネケ”と呼ばれている。小さな精霊のようなもので、長い間封印されていたが、時々その封印が解ける。元は自然を守る存在だが、人間の侵入で暴走するようになった。」
「……そう。」
拳を握りしめる。
「そんなの……! 封印される方が間違ってる! 彼らはただ使命を果たしてるだけ!」
思わず大声を上げ、店内の視線を一身に浴びる。
私はそっと腰を下ろし、無理やり平静を装った。
「まあ、善悪の問題じゃない。だが暴走すれば人間を襲う。」
……そうかもしれない。
でも、家を守るためなら私だって同じことをする。
「この街では、人の失踪なんて日常茶飯事だ。犯罪と結びつけて考えるから、誰も気にしないんだ。」
ジェイルが言った。
「……理解できない。たとえ超常のせいじゃなくても、人が消えるのを“普通”だと思うなんて。」
私は日傘を閉じ、ため息をついた。
「この街の人たち、ちょっと常識がズレてるよ。」
「否定はしないけど…」ケンジはため息をついた。「でもどうしようもない。俺たちにできるのは、霊たちによる失踪を防ぐことだけだ。」
しばらくして、店主らしき男性が飲み物を持ってきた。少し飲んでみると、器は土でできているようだが、味は驚くほど美味しい。タマリンドの飲み物だ。
「師匠、ちょっと気になることがあるんですが…」
「だから俺の名前はケンジだってば。」
「ふーん…」一口飲んで、「じゃあ“元気でたくましいケンジさん”ってことで!」
私の言葉にケンジが眉を上げた。
「あ、つい名前を教えちゃったな…」
「リラックスしなよ、おじさん。名前知ったくらいで何もできないって。」飲み終えて言った。
「それより、仕事に合う服が欲しいんだけど。」
暑くて、今の服はちょっと毛っぽくて蒸れる。サウナの方がマシかもしれない。
「わかった、服を買いに行こう。」
「やったー!」思わず叫んでしまった。
少し後、私たちは服屋に入った。
「それはダメだ。それはパジャマだぞ。」ケンジが言った。
「でも、これは甚平だよ?」
「ここではそんなもの存在しない。ただのパジャマだ。」
「もぉ〜、西洋のファッションって時代遅れなんだから。」そう言って別の服を試しに行った。
店の中は涼しい。エアコンが効きすぎて寒いくらいだ。
結局、軽いシャツと膝丈のスカートを買った。下は暑いし、上は…まぁ、あまり見せすぎるのもどうかと思って。
それから麦わら帽子も購入。
ジェイルも軽いTシャツに長ズボンを買い、ケンジも同じく。
ついでに下着も買ったけど、サイズが日本と全然違っていて苦労した。
それに、言葉が通じないのも大変だ。
「いろいろありがとうございました。」
「……」店員の女性が何か言ったが、理解できなかった。
「こちらこそ、親切にしてくださってありがとうございます。」とジェイルが言うと、店員は微笑んでうなずいた。
「え?スペイン語、話せるの?」
「いや、全く話せない。」私は固まった。
どうやって会話してたの?
「電気信号を通して相手の思考を読み取ってるんだ。俺はそれに応じた電気信号を環境に放出して返してる。だから会話できるんだよ。」
「へぇ〜、それめっちゃ便利じゃん…」
「私はそんな能力ないんだけど。あるのは破壊とか戦闘系ばっかり…」首をかしげてため息をついた。
「それをさらっと言うなよ…」とケンジ。
「……」本当は“その力で洗濯も乾燥も一瞬でできる”って言いたかったけど、今は封印されてて使えない。
「なんか、急に元気なくなったな。」
「能力を封じられるのが嫌なんだよ…」
***
服や補給品を買ったあと、宿へ向かった。
この街の人たちは親しげに笑うけど、どこか怖い。笑顔の裏で必ず何かを売りつけようとする意図が見える。そういうの、ちょっとゾッとする。
「よし、必要なものは揃ったな。」ケンジが言った。
「ジェイル、ちょっと来い。」
「え、私も会議に参加できないの?」
ケンジとジェイルが目を合わせ、そしてケンジがため息をつきながら私を見た。
「どうして知ってる?」
「推測よ。一時的にでも一緒に行動してるんだから、次の行動くらい知る権利あるでしょ?」腕を組んで言った。
「知らないほうが…その、危険が少ないんだ。」
「無知は罪って言葉、知らないの?」
「…なるほど、鋭いな。」とジェイルが死んだ魚のような目で言った。まぁ、それがいつもの彼だ。
「でも、どうして会議のことがわかったんだ?」ケンジが少し圧をかける。
でも私は負けない。
「秘密。あんたが隠すなら、私も言わない。」唇を尖らせた。
大人ってずるい。知りたいことは全部聞くのに、自分たちは何も話さない。
「…はぁ。」ケンジが観念したように言った。
「ちょっと調査に行って、チャネク(Chaneque)たちがいそうな場所を探すつもりだったんだ。」
「ふーん…」私はじっと見つめて言った。
「つまり、まだ全然見当もついてないってことね。」
「……」ケンジは黙った。まぁ、図星だろう。
「気にしないで師匠。悪魔の知性は人間よりずっと上ですから。」
ジェイルに一票。ケンジは鋭いけど、それだけじゃ足りない。
「…認めるよ。だからこそ、知られたくなかったんだ。」
「ふーん…で、自分っていう最高のリソースを無駄にしてるって思わない?」
私は自分を指さして言った。
「まさに、その“悪魔の知性”があるからこそ、お前を連れて行けないんだ。時に、愚か者の方が賢い者より早く答えに辿り着く。」
「その通りだな。」とジェイルが頷いた。
「ぷっ…はははっ。」思わず笑ってしまった。けど、別に同意したわけじゃない。
「ちょっと待って…師匠、それって私のことをバカって言った?」
結局、二人はチャネクの調査に出かけ、私はホテルでテレビを見ながら留守番。
でもすぐに退屈した。言葉が全くわからないから、何を言ってるのかさっぱりだ。
***
「このままじゃ何も進まないな…」
ケンジとジェイルは独自に調査をしているが、もう一日経っても成果なし。
「妖怪や悪魔を探す時みたいに、魂を辿って探せないの?」と私は言った。
人間以外の魂を探る、それができれば早いと思ったけど、この街では人の魂しか感じない。
「それはほぼ不可能だ。この大陸の存在たちは本質的に“精霊”だからな。悪魔のように魂を持っているわけじゃない。」とジェイル。
「つまり、細菌とウイルスの違いみたいなもんだ。」とケンジが続けた。
「細菌は生きているが、ウイルスは生物とは言えない。でも、それでも行動パターンはある…そんな感じだ。」
「うわ、ややこしい。」確かに、私が一緒に行っても進展はなかっただろう。
精霊のような存在、形がないのに現象を起こす…。
「でも存在が知られてるってことは、誰かが発見したんじゃないの?」
「今はもうシャーマンもいないし、古代マヤ文明の伝統を継ぐ者もいない。だから手がかりもない。」
「……」まぁ、初日だし。
でも自然地帯で失踪が起きてるのは確か。
「だったらさ、わざと姿を現させればいいじゃん。森に行って木を少し切り倒せば、出てくるかも。」
あまり気が進まないけど、もし話せるなら事情が聞けるかもしれない。
「……」ジェイルとケンジが目を合わせた。
「なんでそんな単純なことに気づかなかったんだ?」
「“山がモハメッドに行かないなら、モハメッドが山に行け”ってこういう意味だったのか…」
ジェイルの言葉にツッコミたかったけど、黙っておいた。
「なるほどな…なら、分かれて探すか。生命の光が消えるような異変を見つけるんだ。」
ケンジが地図を広げる。
「まだ紙の地図なんて使う人いたんだ?」と私は呟いた。
「ジェイルは南へ行け。何か怪しいものを見たら、すぐ戻って報告だ。」
私の言葉は完全に無視された。
「ハナは俺と北西に行く。」地図上では湖の近くを指している。
ざっと120キロ、車で2時間ほどだろう。
「ねぇ、今のジェイルの方が私より強いんだけど?」
正直、ケンジと二人きりは気が進まない。
「お前をジェイルと二人にするつもりはない。」
「頭の中に変なこと吹き込むだろうが。」
「ちょっとアドバイスしただけだよ!直接的に行けって言っただけ!あいつが大胆すぎたのが悪い!
でもいいじゃん、離れたら恋しくなって、再会したときハグしてチューして――いったぁ!ちょっ、やめてよ!」
ケンジに頬をぐいっとつねられた。
「黙れガキ!」
ケンジは真っ赤、ジェイルは…さらに赤くなってる。しかも微妙にニヤけてるし。
もう、何考えてるのよこの二人。
その後、宿で少し休んだ。いいホテルだ。
それにしても、ケンジってお金持ちなのかな?見た目は旅人なのに。
まぁ、どうでもいい。とりあえず一人部屋があるだけマシ。
別に眠る必要はないけど、退屈だと勝手に眠くなるんだよね…。
気づいたら、朝になってた。
***
翌朝、ジェイルが早起きして私を起こした。準備をして、それぞれ出発。
ジェイルは自転車で行くことになった。
「ねぇ、あれって不公平じゃない?」
私たちは車移動みたいだけど。
「ジェイルは体力あるからな。心配いらん。」
「ふーん…恋は人を盲目にするって言うもんね。」小声で呟いた。
「何か言ったか?」
「なーんにも。行こう、時間は待ってくれない。」
そう言って車の後部座席に乗り込む。
街を出て少し走ったところで、違和感を覚えた。
「ちょっと止めて。」ケンジに言って車を降り、木の方へ走る。
周囲を見回すと、ここは貨物トラックの休憩所のようだ。
「どうした?」とケンジが後から来た。
彼もすぐに気づいた。ここには微弱な結界の痕跡がある。
言葉で表すなら…まるで津波の後の街のよう。
かつてここが“聖域”だった名残がかすかに残っている。
いや、“精霊たちが暮らしていた場所”と言った方が正しいかもしれない。
それは――忍野の結界に、どこか似ていた。
「残念だけど…」―私は言った。―「ここでは何も見つからないと思う…」
「同感だな…」―ケンジがつぶやいた。そう言って、私たちは再び旅を続けた。
二時間ほど進んだ。正直、あの存在たちを見つけるのは無理じゃないかと思えてきた。
道中には広い畑と家畜ばかりで、森なんて見当たらない。木が多い小さな区域があるだけだ。
それでも進み続け、目的地に到着した。
そこは観光地のようだった。ケンジは私の額にお札を貼ったが、私は何も言わなかった。
マリーの記憶で知っている、それは周囲から姿を隠すための護符だ。
車を道路脇に停めて降りる。
湖には観光客がいて、カヌーや遊覧などのアクティビティで賑わっていた。
湖の周囲を歩き、木々が密集した小さな場所にたどり着いた。
だが、ここには何もない。風も気配もなく、夏のセミの鳴き声だけが響いている。
木を一本二本切っても、きっと何も起きないだろう。
「なあ爺さん、ここって観光地じゃねえの? つまり…失踪事件が報告されてないからまだ営業中ってこと?」
これからは、この老人の“勘”をあてにするのはやめよう。
もちろん、私はこの湖が観光地だなんて知らなかった。
「……」
老人は何も言わなかった。どうやら図星のようだ。
そのとき、ケンジの電話が鳴った。
「どうした、ジェイル? 何か見つけたのか?」
「……」
何を言っているのかは分からないが、ジェイルが何かを見つけたらしい。
ただ、彼の表情には不安が浮かんでいる。過去の嫌な記憶でも思い出したのかもしれない。
「分かった、隠れていろ。下手な真似はするなよ…」
――いや、“バカなこと”か。
「ジェイルが目的のものを見つけた。急いで戻るぞ。」
それは良い知らせのようでいて、正直、私がどう反応するか分からない。
「わかった、たぶん…」
私はそう答え、来た道を全力で引き返した。
老人は意外と体力がある。私は息を切らしながら走っていた。
老人は車の方を見て黙り込んだ。
「で…どうやって戻るの? まさか車を隠すことは考えなかったわけ?」
私が視線を向けると、そこには――
車がブロックの上に置かれ、タイヤもミラーもライトも全部なくなっていた。
「……無機物には効かないんだよ。」
老人は明らかにイラついていた。
「メキシコへようこそ、って感じね…」
驚くべきは人の悪意か、それとも失踪事件が組織犯罪のせいで日常化していることか…。
とにかく、私たちはトラックの運転手に拾われ、ベラクルスへ戻ることができた。
三時間ほどかかった。
道中、運転手はずっとケンジをからかっていたが、私には何を言っているのか全く分からなかった。
ケンジは何とか会話を合わせていたが…。
この国に長く滞在するなら、言葉を覚えた方がいいのかもしれない。
……できれば、そうしたくはないけど。
「はあ…戻ってきたか。で、これからどうする?」
またバス停だ。
「お前、移動を早くする能力とかないのか?」
ケンジがバッグを漁りながら言った。
「あるにはあるよ。飛べたし、空間を移動することもできた。まあ、ほぼ飛ぶのと同じかな。」
――よく考えたら、自分の能力をちゃんと分析したことがなかった。
私の力は“空間操作”に基づいている。
セバスチャンは私を“風の悪魔”だと勘違いしたけど、実際は違う。
空間を操ることで、自分自身や物体を持ち上げられる。
念動力じゃない。強いて言うなら、水の入ったコップを回して渦を作るようなものだ。
「なるほどな…」
ケンジは何か聞きたそうだったが、冷静さを保とうとしていた。
「これを飲め。悪魔のエッセンスだ。一時的に力を取り戻せる。」
そう言って、色が絶えず変化して見える液体の入った小瓶を取り出した。
だが、それは光の錯覚だ。液体自体は動かず、色も変わらない。
「……」
私は瓶を見つめた。マリーの記憶にもこんなものはない。
「安全なの?」
「たぶんな。悪魔には安全だが、お前はハーフだから副作用は分からん。」
――たぶん?
「全然信用できないけど…まあいいわ。」
言わなくても分かる、彼の狙いは一つ。
ジェイルの暴走を止めろ、ということだ。
液体を一気に飲み干すと、強烈な苦味が口に広がった。まるでインクを飲んだようだ。
瓶を放り、手を見つめる。――間違いない、悪魔のエッセンスだ。
感情がすべて消え去っていく。
チュウチンに助けられて目覚めたときと同じ感覚だ。
「どうだ?」
「保証はしないよ。理性的に、あなたの恋人を救うって考えるだけ。」
皮肉は消えなかった。
「さっさと行け!」
「ふふっ…」
私は笑いながら、ベラクルスの南へと飛び立った。




