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第10章: さらなる狩人たち

こんにちは、ハナです。

ご存知の通り、私は元人間の悪魔ですが――今回話すのは私自身のことではありません。

今起きている多くの出来事を理解してもらうために、ちょっとした文脈を説明します。

これは、提灯お化けが前世で得た知識の一部です。


---


「……」

まずは結論から言うと、私は介入しないと決めました。

リョウとサヨリは私の目の前で捕らえられ、刃がその首元に触れている。

相手は“裏の魔術師”、つまり悪魔のエッセンスを奪うためなら手段を選ばない非合法の狩人たち。

通常の魔術師が“浄化”を目的とするのに対し、彼らは悪魔の断片、肉体の一部をどうにかして手に入れようとする。

ほとんどの妖怪には物理的な肉体がないため、それは不可能に近い。

だが、私のような存在が現れれば話は別だ。


「大人しく差し出せ。そうすればコイツらは殺さない…」

三人の裏狩人――

短髪で顔や腕に無数の傷を持つ女。体格もがっしりしていて人間視点ならかなり威圧的。

もう一人は、腕に痣がいくつもあり、何かを常習的に注射している様子の男。だが外見はただのサラリーマン風。

最後の一人は16歳くらいの少年。欧州系の顔立ち、緑の瞳は紫に光り、銀髪に中世風の服装をしている。


「ハハハ、別にコイツらが死んでも構わないんだぜ?

私が抑えている理由はあるが、助ける動機はない…」

私はそう答え、横目で彼らを見た。

「もしお前が救いたいなら勝手にやればいい。私は人間同士の争いを観察するだけだ」


一方、窓から乱入してきた二人組の魔術師。

助けたい様子はあるが、私の言葉を信じず、慎重すぎて動けないようだ。

女は30代半ばから40歳手前、美しさを保った黒髪黒目の女性。二丁拳銃を構え、片方は私へ、もう片方は傷だらけの女狩人へ向けている。

同行しているのは25〜30歳ほどの浅黒い肌をした男。黒髪でリボルバーを構え、銀髪の少年へ狙いを定めている。

どう見ても潜入捜査官のようで、魔術師には見えない。


---


ことの発端はこうだ。

私はいつものように家の掃除をしていた。

サヨリは台所で料理をし、リョウは大学関係の書類仕事をしていた。

夜になると、突如私たちの足元に魔法陣が現れた。

私は反射的に回避できたが、サヨリとリョウはそうはいかず、捕らわれてしまったのだ。

リョウは一瞬「異世界召喚か?」と口走り、怯えながらも妙な期待を見せた。

だが次の瞬間、彼は狩人に抱え込まれ、現実を思い知らされることになった。

私はそのギャップに笑ってしまったが、本気で笑っている場合ではなかった。


そこに魔術師二人が窓を破って乱入。

彼らは数日前から家を監視していたようだが、何もしてこなかったので放置していたのだ。

だが結局、こうして事態は激化してしまった。


---


「そこのお前らもだ、少しでも動けばこの美女の喉を掻き切るぞ…」

男がそう言って、サヨリの顔を舐める。彼女は吐き気を堪えている。


「離せ、この野郎!」

リョウが気迫を込め、生命力のバリアを発動。

拘束を弾き飛ばし、蹴りを放つ。

だが銀髪の少年がそれを軽々と受け止め、逆に腹へ一撃。

リョウは息を失い膝をついた。


「またやれば死ぬぞ。忠告しておく、リョウ…」

私はつぶやいたが、彼には届いていない。

彼の生命力は限られている。技を使うたびに命を削ることになる。

それでも立ち上がる姿勢――その意志力が彼を動かしているのだろう。

だが現実には勝てない。


「興味深いな…」

「同感だ…」

銀髪の少年と視線を交わす。

リョウは周囲から生命力を集め始めた。

確かに欠乏を補えるが、かつての“悪魔的本能”は失っている。

人間としての反応速度しかなく、アドレナリンで多少補強されても力不足。


一方、銀髪の少年が扱う力は――

それは生命力でも悪魔の魔源でもない。

提灯お化けの記憶をたどるなら、おそらく「魔法」…異世界由来の力だ。


---


「ハハハ! 狂犬 みたいだな!泡吹くだけだ!アッハッハ!」

もう一人の狩人が嘲笑する。


「リョウ、もういい…逃げなさい……うっ」

「黙れ、アマ!」

男がサヨリを殴る。


「叔母さん!」

リョウが生命力の刀を具現化し斬りかかる。

だが銀髪の少年は回避し、再び腹へ打撃。

リョウは床へ倒れ込む。


「差が圧倒的すぎるな…」

私は呟いた。

――その瞬間、銃声。

魔術師の一人が発砲し、サヨリを包む結界を展開させたのだ。

狩人が拳で叩き込むも、びくともしない。


「ちっ、安っぽい魔術師の小細工め…」

「はぁ…なんで私の仲間はこんな無能ばかり…」

女狩人が吐き捨てる。


「テメェ今なんつった、クソアマ?」

言い争いの隙に、リョウが私の側へ退いた。


「お前、なんで何もしないんだ?」

彼は息を整えつつ問いかける。


「一緒に住み、家事を手伝っているからといって、命を助ける義務があるわけじゃない。

私は力を人間のために使わないし、殺しにも使わない…もう二度と」


「なっ…何を言ってるんだ…」

リョウが戸惑う。


「ただし――契約を結ぶなら別だが」


「ふざけるな!お前の狙いは俺の魂だろ!」

怒りの声が響いた。


「ハハハ、否定はしないけど、戦うつもりはないよ…」―そう言った。

「お前は…」―彼は怒っているが、権威という点では、俺に命令する手段はない…。

ああ…議論している間に、悪魔狩りと呪術師たちが戦い始めていた。

オフィス勤め風の男はすでに地面に倒れて気絶しているが、二人の女は戦っている。

狩人の女は生命力の鞭を振るい、その先端はまるで彼女の意志に従っているようだ。

一方の女呪術師は短いナイフを両手に戦っているが、この距離では何もできないだろう。


銀髪の少年は呪術師の男と戦っている。だが、実際に魔術師のように見えるのはその少年の方で、

手のひらから火球を放っている。


「なんてベタな展開だ…」―リョウがつぶやいたが、俺には意味が分からなかった。

けれどその隙にリョウはサヨリを救い出し、結界が消えた後に彼女を抱えて戻ってきた。


「今が逃げる絶好の機会だな。しばらく会えないだろうけど、約束は守るよ…」―そう告げた。

「死ぬみたいな言い方はやめて…」―サヨリが少し怒ったように言う。

「おっと!じゃあ、ただの『またね』ってことだね、へへ…」

「そうでなくちゃ」―サヨリは微笑み返し、リョウと共に走り去った。


「お前の力は一体どうなってる?現象を具現化する呪術師なんて知らないぞ。お前も悪魔なのか?」

「違う。ただ、ちょっと変わった経験をしただけだ。だが、お前もその制限の割にはよく戦うな…」


「ちょっと…」―俺が口を挟むと、二人が同時にこちらを見た。

「名前を教えてくれない?銀髪の少年とか、呪術師とか呼ぶのはもう飽きた」


「……」

「……」―二人は顔を見合わせ、沈黙した。

「ハタケ…」―呪術師が答える。

「セバスティアン…」―銀髪の少年が名乗る。


「ありがとう。続けて戦ってくれて構わないよ、邪魔はしないから、へへ…」

二人は肩をすくめ、再び互いを見た。俺は横に移動し、壊されずに残っていた唯一の椅子に腰を下ろす。

「ポップコーンが欲しいな…」―つぶやいた。だが観客としての時間はすぐに終わった。

鞭の女はすでに…いや、女呪術師を殺していた。首から流れる生々しい血の匂いがそれを示している。


「クソッ…」―ハタケは緊張を強めるが、セバスティアンには何もできない。

彼は結界のようなものを展開し、ハタケの弾丸を完全に止めた。


「なるほど、人間も悪魔もあまり変わらないな。俺も目的のためなら他の悪魔を殺すことにためらわない…」―

そう言いながら、俺は鞭の女がこちらへ近づいてくるのを見た。


「その点については同意よ、可愛い実験体ちゃん。もう障害はない、あとはあんたを倒すだけ…」

この女は自信に満ちていて、確実に何体もの悪魔を葬ってきた。

「おい、洞窟男!ふざけてないでこっちに来な!」―セバスティアンに命じる。


「ふぅ…わかったよ」―彼はそう返した。

「ゆっくりでいいさ、待つ時間はいくらでもある…」―そう言った。

これは魂を食う口実として絶好の機会だ。だから俺はまだここにいる。

しばらくは本能を抑えられるだろう。


「本気か?」―女が問いかける。

「お前と戦う気はない。戦うのはその少年だけだ…」―セバスティアンを指差す。

その瞬間、稲妻が空から落ち、轟音と共にハタケが倒れた。死にはしないが、しばらくは動けないだろう。

焦げた匂いが漂っている。


「おいおい、それは俺のプライドを傷つけるぞ?」―セバスティアンが茶化したが、悪い気はしていないようだ。

「俺も同感だ…」―と続ける。


「決まりだな。だが理由もなくは戦わない。サヨリとリョウにもう殺さないと約束した。

でも、これは正当防衛だ。勝てば、ついでにあの男の魂を“うっかり”食べちゃうかもしれないけど…」


「ハハハ、俺もうっかり何もしないかもしれないが…まあ、その可能性は低いな」

「どうして?セバス、自分がそんなに強いと思ってるの?」―問いかけると、彼は少し考えた。


「わからない。この世界の力の基準を知らないから、比べようがない」

異世界の者か…それならこの容姿にも納得がいく。


「関係ないわ」―女が割り込む。―「でも負けたら、あんたは私たちと来るのよ」

「いいだろう。後から泣き言を言うなよ…」


「本当に彼女を信用するのか?」―セバスティアンが女に問う。俺も同じことを思った。

「なぜ駄目だ?私はこの悪魔が気に入ったんだ」


「まあいいさ。一つだけ提案しよう」―セバスティアンが言う。

「最初から全力を出すんだ。そうすればすぐにどちらが強いかわかる」

「いい考えだ。先にやれよ。ただ、お前の力の源がまだ掴めないんだが…」

「言っただろ?すぐにわかるさ」


そうだ、力か技か、その差はすぐに見える。

「上に行こう…」―セバスティアンの足元に魔法陣が浮かび、彼は宙に浮かび上がり、そのまま空へと飛んでいった。


「ほう…」―俺も追いかけた。

地上から大きく離れ、雲の上、日本の夜空の上に止まった。

「真実を言えば、日本って小さいな…」―地図のように広がる国土を見下ろしながらそうつぶやいた。


そして、思わず口元が笑みを描いた。

もし勝てば、少しは食えるからだ。


「さあ、始めようか…」―セバスが詠唱を始めた。

「闇の理よ、我が手に集え。虚空を裂き、古き契約を示せ。

タル=カラム、イズハル、ザリク、アーク・エリジアス!」


次々と魔法陣が現れ、10秒も経たぬうちに巨大な魔法陣の塔となり、その中心に銀髪の少年が立っていた。

やがてそれは消え去ったが、セバスの周囲には雪のように白いオーラが残り、そこから強烈な熱が放たれていた。


「やばい…」―これは本当にまずい…。だが今度は私の番だ。

悪魔としての力を最大限に引き出すためには、人間としての本性を捨て、悪魔の本質をさらけ出すしかない。

体中に魔力を駆け巡らせると、肌は紫色に変わり、硬い鱗が浮かび上がる。背中からは黒い翼が生え、

手は鋭い爪へと変化し、さらに尾が力を導く器官として伸びた。


「よし、準備完了。言っておくけど、悪魔の姿では本能を抑えられない…」

声は歪みすぎて、自分でも何を言ったのかかろうじて分かるほどだ。


セバスは何も言わず、一瞬で距離を詰めて拳を繰り出した。

両腕で受け止めたが、そのまま海へと吹き飛ばされる。

この一撃だけで私より遥かに強いと分かった。鱗の防御を易々と突破するなんて…。


本能的に海底から飛び出し、直撃を避けたが、背後で爆発が起こり、爆風や熱ではなく、

その魔力が私を吸い込み始めた。テレポートを使わなければ逃れられなかった。

私の力だけでは到底防げない。


「ハハハ、まさに異世界人だな、セバス…」―笑いながら言った。生きて帰れる気はしない。


「なあ、悪いが、君の声はうめき声と叫びにしか聞こえない。気を悪くするなよ…」

「……」―なるほど、だから今まで何も言わなかったのか。


「滅せよ、虚牢きょろう!」―再びセバスが詠唱すると、檻のようなものが現れ、私は完全に閉じ込められ、自由落下を始めた。

クソッ…人間の姿に戻ってしまった。これは…能力を封じられた?


「クソッ、クソッ…畜生!あああああっ!!」―死ぬ…!だが、なぜ私は恐怖を感じている?

あの野郎、私の悪魔の本質を封印したのか…

「…お母さん…」


そのまま、海面に激突する前に意識を失った。



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