【一発ネタ】危険な男
変な趣味を持つ男が、変なモノ・瞬間を目撃する話。
とある中途半端な田舎によくある、年々田畑が減り続ける中で住宅もアパートも商店も飲食店も、スーパーもチェーン店もホームセンターもカーディーラーも町工場も混在する町。
そんな町のとある住宅に、変な趣味をいくつも持つ男がいた。
その男の職種は不規則な就業時間であり、平日が休日になる日もちょくちょくだ。
そんな男の変な趣味の1つなのだが、冬の平日に住んでいる家の縁側に座り、外をのんびり眺める事だ。
この趣味が発揮されるのは冬の日中で、しかも風が強い日に限られる。
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男は縁側に座っていた。
そして暴風とも言える強風が吹き荒ぶ屋外で、のんびりと文字通りの風景を楽しんでいた。
その顔には期待の色が強くでていて、風によって発生する出来事を心待ちにしているのが、ありありと読み取れる。
学校帰りの小学生の声が聞こえ始め、時刻がおやつ時なのだろうと推測できる。
こんな風でも小学生達は元気で、はしゃぎ声さえ響いてくる。
どうやら帰宅して家へ遊びに来るでなく、下校中に寄っている様だ。
「あははは! 風つよーい!」
「あははははは!」
その声の片方は近所に住む小学生で、もう片方は分からないが、小学生と友達で下校中に寄っている子なのだろう。
「ここまで風が強いんだったら、前に見た本みたく傘で飛べるかも!」
「すげー! やってみよーぜー!!」
なんて話していたと思ったら、男の見ている範囲の道路に子供が2人、片方が身長に見合わない大きな黒い傘を抱えながら現れた。
そして子供達がワクワクした顔つきで傘を広げ……いや広げようとした途端に風に流されかけてアワアワする。
「風が強すぎて開けない!」
「風が弱くなった所をねらって広げりゃいーじゃん」
「そうする!」
なんて会話があって、風が弱まるのを待つ子供達。
……………………。
「きた!」
「今だ、開け!」
「うん!」
どうやら風が弱まったようで、これ幸いと傘を広げ……た瞬間にまた風が強くなり始める。
「…………うわ! わわわわわ!!?」
「おい! 手を放せ!」
ある程度強くなったと思ったら、その風の強さは度を越したらしい。
恐ろしく強い風を受けた傘が、子供という重しがあるにも関わらず“ふわっ”と浮いたのだ。
本当に浮いてしまったのだ。
その事に傘を持つ子を見守っていた方は慌てて声を上げるが、傘を持っている方の子は本当に浮くと思っていなかったらしく、本気でパニックに陥っている。
「わわわわわわわわ!?」
「手を開けろ! 傘を手放せ! 風に連れ去られるぞ!!」
「わわわわ!!?」
浮き始めて何秒か数えていないが、それでもかなり浮き続けていて、地面から足まで20㌢は浮いているだろう。
縁側に座っていた男もこのままでは子供がヤバいと判断し、腰を上げた直後。
「お? おお?」
「風が少し弱くなって、下りてきた! ほら、傘を閉じろ!」
「おお? ……あ、うん!」
どうやら何事もなく終わったようだ。
男は腰を落とし、安堵の息を吐いた。
タイトル詐欺。 変な趣味を持つ男が危険なのではなく、趣味満喫中に危険なモノに遭遇する話でした。
実は自分も経験者です。
台風の日だったか。 小さい頃、風がかなり日に外に出て傘を広げたんです。
そしたら突風が吹いてきて、ふわっと浮きました。
その時、自分の腹もなんかヒュッと浮いて、言葉にできない恐怖を味わいました。
浮いたのは1秒も無かったと思いますが、その時に近くにいた家族も浮いたのを見ていて、こんな風が強い日に傘を差すなと心配交じりのお叱りを受けましたわ。
皆さんは興味本位で傘で空を飛ぼうとなさいませんように。