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短編 59 愛のフォトンバズーカ

作者: スモークされたサーモン


 短編って面白いね。世界を作れるんだよ?


 こんな世界も作れちゃうのー!


 そんなノリで作りました。

 

 この辺りから吹っ切れ始めた気がしますね。




「ミカたん聞いてぇぇぇ!」


「うっさいわ! 聞こえてるわ!」


 ここはとあるファミリーレストラン。そのボックスシート。


 そこにはピンク頭の女の子と黒髪の女の子が居て、頭を付き合わせて賑やかな会話を楽しんでいた。


「ミカたぁぁぁぁぁん! またダーリンが浮気したのぉぉぉぉ!」


 ファミレス中の空気が凍りついた。


 親子連れの客もいる日曜の昼下がり。遠くで店員がおろおろとしている。


 だがピンク頭の少女はそんな空気に気付かない。よほど浮気されたのがショックだったのか泣きながらの大絶叫である。


「黙らんかい! 場所を弁えんか!」


「だってミカたぁぁぁぁぁん! これで325回目の浮気なんだよぉぉぉ!?」


 多いわ。むしろ別れろや。そんな空気がファミレス内に流れた。勿論ピンク頭の少女は気付かない。


 黒髪の少女もため息である。


「ええ加減別れたらどないなん? うちもナンパされとんで?」


「やー! リッチー君は私のダーリンなの! 来世も一緒にパフェを食べるのー!」


 なんでパフェ?


 そんな空気がファミレスに漂う。


「せやかてなぁ。あの浮気性は死んでも治らんとちゃうか?」


「なら何度でも殺す!」


 ピン子(ピンクの髪の少女)は懐から巨大なバズーカを取り出した。ピン子の得物『フォトンバズーカtypeショッキングピンク』である。


 休日のファミレスはどよめいた。


 大丈夫。この世界はそういう世界観である。


「こんなとこで、んなもん出すなや」


「さっき撃ってきたからお手入れしないと。ふっきふき~」


 ごついバズーカを軽々と持ち上げ手入れするピン子。世界観的には大丈夫なのだが、流石にファミレスの座席で見れる光景ではない。


「撃ってきたって……お仕置きしてきたんか?」


「うん! これをぶちこんできたの!」


 ピン子は明るく答えた。ショッキングピンクなバズーカをぺしぺしと叩きながら。


 え、殺したあとにファミレスに来たの?


 店内はざわついた。店員もおろおろである。


「……生きとるよな?」


「うん! なんか痙攣してた。ダーリンは頑丈だからあと一時間もすればケロリンだよ」


「……あれも人間とは言えんかもなぁ」


 黒髪の少女はため息をつく。実はリッチー君と絶賛浮気中である彼女としては、いつバズーカの照準が自分に向くのか気が気ではない。


 ピン子は親友であるがライバルでもあった。恋のライバルではなくバズーカ使いとしてのライバルである。


 大丈夫。そういう世界観だから。


「ミカたんも好きな人が出来れば私の気持ちが分かるもん。好きな人にはずーーーーーっと自分を見てて欲しいんだもん」


「……せやな」


 恋する乙女のピン子を前に、浮気女のミカたんは罪悪感で潰されそうになっていた。


 リッチー君に接触したのは実はミカたんからであった。ミカたんはリッチー君をピン子から奪うために誘惑を仕掛けたのだ。


 親友ではある。


 だが、まずはライバルなのだ。


 バズーカの。


 そういう世界観なのだ。


 まぁそれはそれとしてミカたんである。彼女は真面目なバズーカ使いであった。それこそ恋にうつつを抜かすことなく幼き頃からバズーカを修練してきたのだ。


 それがピン子と出会い、人生初の敗けを知ったのだ。


 アホのピン子。だがそのバズーカ捌きは若手で一番である。


 ミカたんは悔しくて浮気に走ったのだ。つまるところそれだけなのだが……彼女には色恋の経験がまるで無かったので嵌まってしまったのだ。


 ピン子の彼氏、ということになっているリッチー君に。


 実はリッチー君は誰とも付き合っていなかったりする。ナンパはしまくるのだが、その成功率は驚異の0パーセント。


 あまりにもナンパ過ぎる男なので誰も相手にしない。それがリッチー君である。粘着タイプではないので嫌われてはいないのだが好かれてもいない。そんな男である。


 そんな微妙なナンパ師リッチー君。


 ピン子が一方的に付き合ってる宣言をしているだけでリッチー君はそもそもピン子と面識がない。


 可愛い女の子をナンパしてるところにピン子が現れてバズーカ撃ち込んで去っていく。それの繰り返しである。


 リッチー君としては迷惑でしかない。ピン子マジ迷惑、である。リッチー君とピン子は、ろくに会話もしてないのだ。


 なのでリッチー君としてはミカたんから付き合ってくれと言われて、わりと舞い上がっていたりするのだ。それでもナンパは止めない所に彼の信念があるのかもしれない。


 人生初の彼女。リッチー君の認識ではそれはミカたんになるのだ。ナンパな彼としても大切に扱うのは当然であろう。お姫様を越えた『女神』扱いをされて、ミカたんはリッチー君に溺れていった。


 女神なので当然エッチな事はしない。手を繋ぐのがやっとである。リッチー君はナンパ男であるが童貞なのだ。


 ミカたんにとってもリッチー君が初めての人である。これが普通の女の子ならリッチー君のチキン振りに幻滅もしただろう。だがミカたんは乙女であったのだ。


 アホのピン子とは真逆の純粋なる乙女。


 相性が良すぎたのだ。


「ミカたん! 今度デートなの!」


「……へ?」


「なに着て行けばいいのかなー?」


「……デートするんか?」


「うん! リッチー君の職場にデートなの!」


 それは……押し掛けでは?


 店内はまたしてもざわついた。何となく店内の客は理解しつつあった。


『このピンク頭……ヤバイ奴だ』と。


 ミカたんとしては浮気の意識がどうしても残っている。リッチー君から真相を聞いた今でも罪悪感が彼女を苛むのだ。


 ミカたんは真面目なバズーカ使いゆえに。


 だからどうしても言えない。言いたいけど言えないのだ。


『お前、そもそも告白すらしとらんやろ』と。


 でもそろそろ言った方が良いかなーとも思ってる。


「ピン子……お前……ちゃんと告白したんか?」


 言った。ミカたんは遂に言ってしまった。


「やだなー。リッチー君と私は前世からのベストカッポーだよ? 告白なんかしなくても二人はいつも繋がってるんだよ?」


 店内に明るい声が響き渡った。とても明るくてみんな驚いた。しかしガチャリとバズーカを構えるピン子にファミレスの空気は凍りつく。銃口はミカたんの頭に向けられていた。


『ガチや。こいつはガチの狂人だ』


 客は先を争うようにして店から出ていく。まだ食べかけの客も大急ぎである。


「……そうか」


 ミカたんも懐からバズーカを取り出した。黒光りする漆黒のバズーカ。『フォトンバズーカtypeダークナイト』だ。


「……ミカたん」


「……ピン子」


 二人は互いにバズーカを構え銃口を向けあった。照準は互いのドタマ。ガチャリと音がする。店員も既に逃げた。


 ほぼゼロ距離。ファミレスのボックス席。テーブルを挟んでのバズーカ決闘である。


 大丈夫。そういう世界観だ。


「この泥棒猫ぉぉぉぉぉ!」


「だまりゃぁこのサイコパスゥゥゥゥゥ」


 ちゅどーん!


 この日、一軒のファミレスが瓦礫の山となった。





 その後の話。


「……いや、君、初対面だよね? よく撃たれてるけど」


「違うもん! 前世からのスピリチュアルパートナーだもん!」


「リッチー……これもとりあえず嫁にしいや」


「えぇぇぇぇぇ!?」


 そんな話になったらしい。この世界、バズーカ使いは希少である。そんな世界観なのだ。納得してくれたまえ。




 今回の感想。


 反則ワード。『そういう世界観である』


 ずるいけどすごく便利。


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